初めての『顧客管理』 Vol.1~顧客管理のWhat~
『顧客管理=CRM』を原点から見つめ直し、単なる「顧客データの保持」から「顧客管理」へ脱却するためのヒントやコツをご紹介していきます。
顧客管理はなにでやる?Excel?Access?顧客管理システム?
顧客管理をExcel(エクセル)で行っています、という企業はまだまだ多いと思います。ですが、それはほんとうに「顧客管理」でしょうか。単に、「顧客リストを持っている」、ということに終始していないでしょうか。
そもそも顧客管理という言葉は、CRM(Customer Relationship Management)をあらわす日本語として定義されています。その意味は単に「お客様の情報や履歴を格納すること」のみならず、「お客様の情報を管理し、分析し、お客様と長期的な関係を維持すること」です。
そこにはあらゆる顧客データをセグメント化するなどしてニーズや傾向を分析、それをもって顧客満足度を高め、継続的な利用や更なる購買を促し、最終的に長期的な収益の向上を目指すという『行動』が待っています。つまり、紙の情報をデータ化しただけでは、顧客管理をしている、とは言えないのです。
みなさんはExcel(エクセル)に入っているデータをもとに、なんらかの『行動』を起こしていますか?
他方、弊社にお問い合わせを頂くケースとして、「Excelでは管理が難しくなってきたので、他のツールを……」というお客様がいらっしゃいます。お客様は何をもって「Excel管理が難しくなった」と認識されたのでしょうか。逆にここまでExcelが普及しているということは、ExcelやAccessで事足りる場合もあるということです。
どういった場合に何を選べばいいのか、その特徴をかんたんに整理してみました。
構造上の違い
Excelはほとんどの企業利用パソコンにあらかじめインストールされている優秀なソフトです。新商品にアップデートしない限り、追加のコストがほとんど発生しない点はメリットです。Excelと並んで顧客管理に利用されているソフトとしては、Accessもあります。
両者の大きな違いは、Excelはフラット構造で、Accessはリレーショナル構造ということです。フラット構造は1枚のシートですべての情報を持ちます。元となる顧客データに対して各データが横一列に並ぶことになります。作成しやすく、情報量がほどほどであれば管理も簡単です。別々のシート間の紐付けは基本的に行われません。
これに対して、リレーショナル構造はデータの種別を分類して個別のテーブルに格納します。顧客マスタや店舗マスタ、履歴データなどを別々のテーブルに保持するイメージです。各テーブルのデータ量が少なくて済み、大量のデータを扱うことができます。
具体的な例をあげると、顧客個人に結びつくデータがExcelであれば各シート、Accessであれば各テーブル(セミナー参加履歴、メール開封履歴、メールクリック履歴、対応履歴……など)に分かれて格納されているとします。
たとえば「●月×日にセミナーに参加された男性」「これまでにメールを開封した30代の方」などの条件でシート間をまたがって絞り込むことがExcelでは難しいのです。逆にAccesssはクエリを作成することで対応できます。
利用環境の違い
データベースは複数人の同時利用を想定しているでしょうか。
Excelは基本的にスタンドアロンを想定したソフトです。Excelでもイントラなどで共有管理することはもちろん可能ですが、複数人が同時に書き換えを行おうとすると排他制御が働いたり、読み取り専用になってしまったりと、完全な「同時利用」を実現することはなかなか困難です。
他方Accessは、ユーザが変更しているレコードだけがロックされるので、複数のユーザの同時利用が可能です。また複数人で利用する場合、専用の登録フォームを作成することができ、不要なデータの更新を防ぐことができます。
データの利用状態について
Excelは数値を扱うソフトです。ピボットテーブルが利用でき、グラフ機能など、数値を視覚的に表現するツールを備えています。データが大量な場合は、もともとの容量/使用感ともに限界があります。
Accessはテキストを扱うソフトです。大量のデータ(2GB)の保存に長けています。
さて、両者の違いを整理してみると、ExcelもAccessも、特徴によって使い分ければ「お客様の情報や履歴を格納すること」はできそうです。では、「顧客データの保持」から「顧客管理」へ脱却をはかろうとする場合、顧客管理ソフトを利用する意味とはどこにあるのでしょうか。
顧客管理システムを利用する意味
「Excel管理が難しくなった」と弊社にお問い合わせをいただくお客様は、「お客様の情報を管理し、分析し、お客様と長期的な関係を維持すること」を実現しようとして「顧客の情報を管理する」だけのツールでは物足りなくなった方が大半です。
例えば、
- データ量が多く処理に時間がかかる
- 複数人で利用したい
- 分析をからめた『顧客管理』を行いたい
これらの目的で利用する場合は、Excel/Accessでは限界があり、世間に出まわっている顧客管理システムを利用する方がより効率的な可能性が高いのです。
また、もうひとつのポイントとして、Excel/Accessは操作ログが残らないので、誰がいつデータを書き換えたのかが分かりません。ユーザ管理/データ管理という非常に重要な機密情報ですので、セキュリティ面を重視されるお客様も少なくありません。
顧客管理を実現する「行動」の具体的な例としては、データを利用して定期的なDMやメールマガジンの発行などが一般的です。また、お客様の利便性を考えると、登録情報の変更や解除をお客様自身でいつでもできる窓口などが必要になってきます。
本来の意味での『顧客管理』を行いたいと考えたときには、「複数のフォームが使え」て「メールが配信でき」、「顧客の情報を一元管理できる」仕組みがあれば、その第一歩になるのではないでしょうか。
次回は、顧客管理システムを利用する場合「どこで」行うかについて考えてみたいと思います。
初めての『顧客管理』シリーズ
- Vol.2 ~顧客管理のWhere~
- Vol.3 ~顧客管理の第一歩、インポート前のデータ整形~
- Vol.4 ~顧客管理の第一歩、データベース設計~
- Vol.5 ~顧客管理の第一歩、データを流し込む(インポート)~
- Vol.6 ~ 顧客管理をはじめよう! ~
- アンコール ~ お客様にやさしい=成果が出るフォームを作る ~ Ver.1
- ダブルアンコール ~ お客様にやさしいフォームを作る ~ Ver.2
まずは、データからお客様を知るための基礎知識から
顧客管理のノウハウ・ドゥハウ【導入編】
本書では、ExcelやAccessでの顧客管理の限界、ツールの選定、データの名寄せ・データクレンジング、顧客データベースの設計など、「顧客データを活用するための準備」に関する実践的な手法とそのポイントをまとめています。
いますぐ、成果の出る顧客管理へとステップアップしましょう!
※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。