ROAS 750%超えを達成!
ダブルエーのEC売上UPに寄与したCRM志向のデジタル広告
ダブルエーが運営するORiental TRafficのECサイトは、メールからの売上が全体の約15%を占める。同社にとってメールはダイレクトなコミュニケーションチャネルとして非常に有効ではあるが、更なる売上拡大のためにはメールと並ぶ新たなチャネルの開拓が必要でした。
2017年7月、夏セールの売上アップを目的にCRMデータを活用した広告配信を実施。見事EC売上前年比160%を達成しました。どのような施策を実施し、何が成果を上げるポイントとなったのか、EC責任者の中村さんにお話を伺いました。
写真左より
古賀 裕人
シナジーマーケティング株式会社 東日本事業部 リーダー
北村 麻喜
シナジーマーケティング株式会社 東日本事業部
楢原 あかり
シナジーマーケティング株式会社 アドソリューションG
中村 会里 氏
株式会社ダブルエー 営業部 シニアマネージャー
※部署名・役職は取材当時(2017年6月)のものです
幅広いサイズ展開が魅力の「ORiental TRaffic」のレディースシューズ
「ORiental TRaffic」をはじめとするレディースシューズの製造・販売をしているダブルエー。ブランド最大の特徴はそのサイズ展開で、22センチ~26センチと幅広く取り揃えており、この秋からは更に21.5センチ~26.5センチまで拡大される予定です。サイズ展開が増える中でECのみでの販売商品も増えてくるため、店舗とECのオムニチャネル化を推し進める取り組みも進めています。
「メインターゲットは20代女性ですが、自社ECサイトの購買層は30代女性が多く、新商品は26センチなどサイズの大きいものから売れていく点が特徴です。幅広いサイズ展開はお客様に非常に好評をいただいています。この秋からはキッズラインも増えるので、親子おそろいでコーディネートいただくなど、また新しい楽しみ方をしていただけると思います。」(中村さん)
メールは有効なチャネルだが、売上拡大には次の一手が必要
2014年から店舗やECサイトの会員管理とメールマーケティングに取り組まれ、これまで店舗とECで分かれていたコミュニケーション施策も店舗のお客様にECサイトの福袋情報をお送りするなど、相互送客の取り組みをスタートしました。
2015年にEC基盤の変更、2016年にWeb接客ツールの導入など、ECサイトのユーザビリティを高めていくためにさまざまな取り組みを進められましたが、お客様へのコミュニケーションチャネルはメール1本で、ここに危機感があったと中村さんはお話されます。
「メールはもう反応されないのでは、とよく言われていますが、当社のメルマガは開封率が平均30%を超え、売上貢献度も高いお客様の大事なコミュニケーションチャネルです。しかし、売上を今以上に大きくしていくためには次の打ち手を探していく必要がありました。」(中村さん)
CRMデータを活用した広告施策を提案
Google Analyticsのデータからも、確かにダブルエーのEC売上は他社ECサイトと比較してチャネル軸ではメール比率が高く、デバイス軸ではスマートフォン比率が高い傾向にありました。
「メール経由での購買比率が高いというのはあくまで事象ですが、既存のお客様へコミュニケーションをとることに価値があるという仮説は成り立ちます。お客様の中にはメールを読む文化のない方も一定数存在しており、そこにチャネルを変えて広告経由でメッセージングできれば、これまで情報を届けられていなかった方へもコミュニケーションが可能になります。
そこで“CRMデータを活用したデジタル広告施策が売上に寄与できるのではないか”、またスマートフォンでの購入率が80%を超えている状況から、“デジタル広告を実施するならスマートフォンに強いSNS(Facebook)と相性がよいのではないか”と考え、今回の施策をご提案しました。」(北村)
<実施内容>
- 施策のゴール:CRM広告起点での購買数(CV)の増加
- 施策実施期間:2017年7月
- 広告出稿額:200,000円
- 実施施策:ORiental TRaffic Summer SALE をフックに購買訴求
- 配信媒体:Facebookを利用
「これまでもお客様のデータを活用した広告施策の提案を受けたことはありましたが、CRM的な観点からの提案ではなかったです。デジタル広告の運用はどういった対象に出稿されているのかわからずどうしてもブラックボックスになりがちですが、今回の提案は明確な目的でセグメントをきってコミュニケーションを行うことで施策評価もはっきりできるため、一度テストしてみようと思いました。
シナジーマーケティングとはこれまで顧客データベースやメールマーケティングの取り組みを一緒にしてきたからこそ、抵抗なくCRMデータを預けることができましたね。」(中村さん)
Facebookコレクション広告を中心に展開し、合計246件のコンバージョンを獲得
今回の取り組みでは、Facebook広告の中でもコレクション広告を中心に展開しました。
※コレクション広告は、商品訴求をビジュアル中心かつ没入感の高い形で行いやすくするFacebookの広告フォーマット。
「コレクション広告を選択した理由は、Facebook上でカタログのように商品を閲覧でき、気に入った商品を見つけて購入に至る割合が通常バナーよりも高いと予想したからです。バナーから直接サイトに遷移し探してもらうよりも、コレクション広告を利用するほうが、結果的にページ遷移数を減らす=離脱を下げることができます。
今回広告配信する対象は既存のお客様なので、認知ではなく購買を促進することが目的です。そのため、コレクション広告が最適と考えました。」(楢原)
結果として出稿期間1ヶ月のうちに合計246件(EC会員から213件、店舗会員から33件)、ご購入いただくことができました。ROASは750%を超え、高い費用対効果が出ています。
この結果を受け中村さんは、「CRM広告に取り組むのは初めてでしたが、結果が想定以上に良かったです。特にリスティング広告の指名系キーワードとほぼ同等のCVRが出せたのは驚きました。セール時期だったということもあり、お客様の購買意欲が高かったこともこの成功の要因だったのかもしれません。夏セールの売上は昨年比で160%と成長したのですが、この施策もその成長に寄与したと考えています。」と評価されています。
結果から見えたさまざまな仮説
またこの施策においては、購入という観点以外にも評価できることがあると考えています。配信リストをCRMデータに基づいてセグメンテーションしたことにより、多くの仮説を得ることができました。
- EC会員は、最終購入からの期間が短いほど低い単価で獲得できている。(半年以内が最も成果が良い)
→例えばクーポンの出し分けなど、セグメントごとに訴求方法を変えていくことで、更に直近購買のあるお客様からの再購入を誘引できるのではないか。 - EC会員のなかでも、セグメントによってCPAが高騰するタイミングが異なる。(本会員は最終購買から1年、非会員は半年~1年)
→休眠化を防ぐべきタイミングも、お客様ごとに異なっている。半年以上経っている人に絞って休眠の掘り起こし施策を行うなど。 - 店舗会員への配信結果は全体的にEC会員よりもCPAが高いものの、許容CPA内。CVも33件出ている。
→店舗からECサイトへの送客施策としても活用できる。特に店舗会員は数が1番多く、ここに取り組むことでECサイトの売上アップに貢献できる可能性あり。
「CRMデータを活用した広告の良さは、その数値から仮説を作れることだと思っています。お客様の属性や購買情報をもとにセグメンテーションして広告を配信することで、どこがどうよかったのかを把握できる。今回はEC/店舗という購買チャネル軸、過去接触タイミングという軸で実施しましたが、どういう訴求が合うのか、どのタイミングまでであればデジタル広告でも効果がでるのかなど、さまざまな角度から評価できるのでPDCAがまわしやすくなります。」(古賀)
特に今回、ダブルエーにとってのリテンション施策にむけた指針が見えたことも大きな成果でした。今後、半年以内に再購入にむけたフォローアップ施策をとることで休眠化を防いだり、逆に半年以上経っている人に絞って休眠の掘り起こし施策を行うなども考えられます。
今後の展開やシナジーマーケティングに期待すること
今回の結果を受け、新作発売やSALE、福袋のタイミングなど、今後もプロモーションのタイミングに合わせてCRMデータを活用した広告施策は継続していく予定です。また、新規ユーザーへの認知獲得施策にも活用してみたいとお話いただいています。
「新規ユーザーへの認知獲得施策はどうしてもCPAが高くなってしまうためなかなか予算を取りづらい状況ではあります。しかし実際購買してくださったことのある既存のお客様にWeb上で似た行動をとっているユーザーを条件に広告配信ができ、それぞれの効果をテストすることができれば、PDCAも回しやすく良い成果が作れるのではないかと思います。」(中村さん)
とはいえ、CRMデータを活用した広告はあくまで1つの手法です。はじめて購入されたお客様や休眠しかけているお客様に対してどうアプローチしていくか。もっと踏み込んで顧客ニーズを把握していきたいとシナジーマーケティングでは考えています。
「今回は広告というチャネルに限定した話でしたが、メディアが分散化してきている環境の中、どのチャネルで何の情報を見るかは顧客ひとりひとりによって異なっています。複数あるチャネルを活用して、いかにして情報を届けるか。顧客を理解したコミュニケーション設計が必要でしょう。顧客分析を行い理解を深めていくことで、はじめて顧客と企業の“CRM”を目指していけるのではないかと考えています。」(古賀)
最後に、中村さんから本プロジェクトに関する感想をうかがいました。
「今回の成功要因のひとつはシナジーマーケティングのみなさんがやる気をもってポジティブに取り組んでもらえたことだと思っています。久しぶりに血肉の通ったプロジェクトになりました。ECで施策を回すときどうしても効果ありきで淡々となりがちですが、熱意や思いを感じられてとても嬉しかったです。」(中村さん)
ありがとうございました!
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。