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メールだけではカバーしきれない
Yahoo! DMPと広告を活用した顧客コミュニケーション
「広告益世」という言葉をご存じでしょうか?「広告とは商売の柱であるとともに、広く世に役立つものでなければならない」という、広告のあるべき形を示したこの言葉を残したのは、広告により「仁丹」の名を世に広く知らしめた森下仁丹の創業者であり、「広告王」とも呼ばれた森下博です。森下仁丹は、その創業者のDNAを受け継ぎ、Webや広告を活用した先進的なマーケティングに取り組んでいます。今回は「DMPと広告を活用した顧客コミュニケーション」について、森下仁丹株式会社 ヘルスケア事業本部 マーケティング部の森さまにお話を伺いました。
写真左より
森 清 氏
森下仁丹株式会社 ヘルスケア事業本部 マーケティング部 デジタルマーケティンググループ
山下 佳納
シナジーマーケティング株式会社 西日本事業部 西日本第二営業グループ
平手 和徳
シナジーマーケティング株式会社 西日本事業部 マーケティングソリューション部 アドソリューショングループ
根付く「広告益世」の理念にもとづき、お客さまに情報を
山下 まず、森下仁丹さまについて教えてもらえますか。
森氏 当社は、今年で創業123年を迎える老舗メーカーです。主な事業は「ヘルスケア事業」と「カプセル事業」です。老舗メーカーならではの技術力とエビデンスをもとに、開発した健康食品やサプリメントをお客さまに提供できるという、商品のクオリティの高さが当社の強みです。また、通信販売だけではなく小売店にも商品を展開しており、幅広い販売チャネルを得ていることも強みのひとつです。
山下 森下仁丹さまと言えば、創業者である森下博の「広告益世」という言葉が有名ですが、広い意味での広告業務に関わる森さまがその理念を感じることはありますか。
森氏 ともすれば健康食品の広告は表記が誇大になりがちです。ですが、当社はその一線はしっかり守っています。また最近の風潮では、広告が押し付けられているように思われていますが、生活に役立つ情報を提供することで「広告は社会のためになるもの」にできると考えています。
Webを中心とした通販のメリット
山下 現在の森下仁丹さまの販売チャネルについて教えてください。
森氏 先ほどお伝えしたように、通信販売と店頭販売を行っています。通信販売は、Web、電話、ハガキ、FAXなどを網羅しています。ラジオやテレビを見てからのWeb申し込みや、Webから電話で申し込みなど、お申し込みの経路はさまざまです。Webは新規のお客さまが多いですね。
店頭販売は、基本的にドラッグストアなどの取引先さまの店頭にて商品展開しています。最近では、百貨店さまでアンテナショップを出店しました。そこでは対面での商品相談や健康セミナーなども行っています。
山下 弊社は、通信販売のWeb集客を主に支援していますが状況はどうでしょうか。
森氏 最近は、通信販売全体が非常に伸びていますね。Webに注力しだしてからは、そこからの売上が特に伸びていますし、これからも注力していかなければならない分野と考えています。
店頭での拡散力は非常に大きいのですが、実施した広告や販売促進の効果測定や取り組みの継続にはさまざまな検討が必要です。その点、Webを中心とした通信販売はスピード感を持って取り組むことができ、細かな点まで振り返りができます。そう言った点が他のチャネルと大きく違う点ですね。
PDCAから見えてきたWeb集客の課題
山下 取り組みがちゃんと活動そのものやチャネル評価にまでつながっているケースは珍しいですね。
森氏 もしかすると、Webに取り組むずっと以前から通信販売をしていたことが大きいのかもしれません。もともとはTVやラジオ、新聞で広告して、紙や電話でお客さまと接点を持っていました。その中でCRMにずっと取り組んできていたので、一定の結果や傾向を把握して改善PDCAを回すことができていたのだと思います。
だからこそ、お客さまの行動におけるトレンドの変化に気づきました。具体的には、新規のお客さまの申し込みがWeb中心になってきている、昔はつながっていた平日の電話がつながらなくなってきた、などの傾向が出始めていました。
山下 そこから見えてきたWeb集客の課題は何だったのでしょうか?
森氏 新規のお客さまに定期購入してもらう「引き上げ率の低下」です。実は、電話や紙の引き上げ率はとても高いんです。ただ、同じやり方でのWebの新規からの引き上げ率は低い状況でした。新規におけるWebからの割合が大きくなってきているため、通信販売全体の引き上げ率の低下につながっていました。その問題を解消するためにWeb新規向けのCRM確立が急務でした。
まずWebサイトをしっかりと整え、その次にステップメール配信に取り組みました。その結果、引き上げ率は、電話や紙と同水準まで改善することができました、と思った途端、LINEをはじめとしたコンタクトチャネルの多様化により、メールの購読率が低下しました。そのため、今度はメール以外でも効果的にお客さまとコミュニケーションする仕組みを作り上げなければならないと考えました。
DMPを活用し広告をコミュニケーションチャネルへ
山下 そこで弊社からYahoo! DMPを活用した取り組みをご提案したんですね。
森氏 そうですね。既にYahoo! DMPを導入していたので、引き上げ率を改善する提案をお願いしました。
山下 お客さまとのコミュニケーションに広告を活用する、というのはあまりない発想だと思います。
森氏 そうですね。従来の方法でコミュニケーションできるのであれば問題ないですが、お客さまの行動はどんどん多様化しています。DMは必要ない、電話にも出ない、Webサイトにも再訪してもらえないとなると、お客さまに情報をしっかり伝えることができません。まずはそこをどうにかしたいと考えました。
一方、チャネルの費用対効果から考えた場合、電話のアウトバウンド1コールの費用やDMの製作費と配送費と比較して、今回の施策のクリック課金の広告費は十分に見合ったものでした。さらに言えば、ムダ打ちもありませんしね。
山下 なるほど。過去の取り組みやチャネルへの評価が出来ているからこそ、今回の施策の目的設定と比較検討がしっかり出来たんでしょうね。結果はどうでしたか。
森氏 クリックやコンバージョンのレポートから、コミュニケーション手法として活用できると思いました。同時に、Sync率が想定していたよりも低かったため配信ボリュームが少なくなるという課題も明らかになりました。その改善は、シナジーマーケティングと打ち合わせしながら、連携の仕方を変更するなどして進めています。
その中で、費用対効果の観点から見ても効果的なセグメントの発見がありました。DM発送の1通あたりのコストに対し、Web広告のクリック単価がそれ以下であれば、最初のお客さまとのタッチポイントとしてはクリアしていることになります。さらにコンバージョン率を比較すれば、当たりセグメントとそうでないセグメントの差が明確に出ていますね。
平手 半年ほど運用させてもらっていますが、セグメントを細かく短期間で変更しています。最初に想定したセグメントは効果が薄かったのですが、Sync率の改善やクロスセルのセグメントを作成するなどすることで一定の成果が出始めています。
森氏 今回の取り組みの一番のポイントは、ターゲットの設定だと考えています。目的に応じたターゲットの選定、今回は新規のお客さまの引き上げ率の向上ですが、それが重要です。そうでなければDMPを活用する意味合いは薄いので。
そのためには、どれだけのデータの種類と量を投入するかも重要ですね。購買データだけなのか、それともメールの開封情報やWebサイトのアクセス情報も投入するのか。増えれば増えるほどいいとは思いますが、あまり多くても効果が出ているポイントや改善すべきポイントがわかりづらくなるケースもあります。今回は改善すべきポイントを見つけては潰していくというPDCAサイクルを徹底し、勝ちパターンを見つけていくという進め方でした。
平手 どのセグメントが正解かということは、業界や企業によっても全然違うと思います。だからこそPDCAサイクルが重要なんでしょうね。
シナジーはDMP活用に一緒に取り組むパートナー
山下 今回の取り組みについて、または弊社についての評価を教えてください。
森氏 今回の取り組みには非常に満足しています。と言いますのも、いろいろな企業さまから、こういった取り組みをしたいけどどうしていいか分からない、という声をよく耳にします。確かにDMPをしっかり使った取り組みには大きなコストがかかります。そんな中、まだ配信ボリュームも大きくない当社の取り組みを一緒に推進してくれている、しかも重要なポイントであるPDCAを回しつつ、しっかりと改善提案をしてくれる。シナジーマーケティング様の姿勢に感謝しています。
山下 ありがとうございます。では最後に今後の展望について教えてください。
森氏 リアルもインターネットも包括したCRMに取り組んでみたいですね。店頭で購買情報やWebのアクセス情報などの行動情報をすべてふまえた上で、あるお客さまが次にしようとしているアクションを予測して、それに見合ったタイミングで必要な情報を届けることができるようなアプローチを実現したいですね。
山下 ありがとうございました。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。