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デジタル化で新たな販売スタイルを構築。
森永乳業の宅配サービスリニューアルの包括的支援と舞台裏
おいしさと健康そして機能性をもつ乳製品で、私たちの生活を豊かにしてくれる森永乳業様。長年愛されてきた牛乳等の宅配サービスを、2024年春に「健幸サポート便」としてリニューアルしました。リニューアルにあたっては、デジタル技術を活⽤してよりよいお客様サービスを提供するために、シナジーマーケティングが新たな販売スタイルの構築を包括的にご支援しました。シナジーマーケティングのメンバーが聞き手となり、大手メーカーの一事業部によるDXへの挑戦を、森永乳業の鈴木様と長崎様にお話しいただきました。
写真右より
志水 宰 氏
森永乳業株式会社 市乳営業統括部 マネージャー
鈴木 淳介 氏
森永乳業株式会社 市乳営業統括部 マネージャー
長崎 星乃 氏
森永乳業株式会社 市乳営業統括部 アシスタントマネージャー
岡野 文佳 氏
森永乳業株式会社 市乳営業統括部
多々良 史弥
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 第2デジタルマーケティンググループ
中山 雅士
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 第2デジタルマーケティンググループ
東雲 有輝
シナジーマーケティング株式会社 ビジネスクリエーション部 ビジネスデザイングループ
※部署名・役職は取材当時(2024年9月)のものです
1.多様化する消費者のライフスタイルに応える、新たな宅配サービスへ
シナジーマーケティング 中山(以下、中山) はじめに、デジタル化に取り組まれた宅配サービスの概要をご紹介ください。
森永乳業株式会社 鈴木氏(以下、鈴木氏) 森永乳業は、1929(昭和4)年にビン詰め牛乳の販売を開始して以来、お客様の健康のニーズにあわせた宅配専用商品を、全国の牛乳販売店様(以下、販売店様)約2,500店を通じてご家庭にお届けしています。2024年春には、よりお客様一人ひとりの健康習慣づくりに貢献していきたいという思いで宅配サービスを「健幸サポート便」へとリニューアルしました。それと同時に、数年前から社内で検討を重ねてきたビン容器商品の販売終了に踏み切り、取り扱い商品の見直しも図りました。
シナジーマーケティング 多々良(以下、多々良) サービスをリニューアルするという決断とともに、販売スタイルのデジタル化にも踏み切られました。その背景も聞かせていただけますか?
森永乳業株式会社 長崎氏(以下、長崎氏) 従来の販売スタイルが、お客様ニーズにそぐわなくなってきていることが一番の要因です。オートロックマンションの住居や共働き世帯が増え、デジタルツールの一般化で、ネットでの購入や決済が消費者にとって当たり前の時代になりました。プライバシーに対する意識も、かつてとは異なります。販売店様や私たちメーカー側も、アナログ対応があることで業務の効率化が難しく、それに加えて情報を一括でデータ管理できないことで生じる課題も、無視できなくなっていました。
鈴木氏 商品の宅配を長年利用いただいているご家庭は高齢者の方も多く、地域の販売店様はお客様とのリアルなコミュニケーションを重視していることから、デジタル化を進めにくい事情もありました。多様化するお客様ニーズに対応するため、サービスリニューアル時には販売スタイルにまつわる課題もあわせて解決すべきと考えました。とはいえ、数十年なじんだビジネスモデルの転換でもあり、販売店様にとっても影響が大きいため、社内でも慎重に議論を重ねました。
鈴木氏 2021年段階ですでに3年後のサービスリニューアルを決めていましたので、これを機に販売スタイルのデジタル化にも着手していこうと決めました。当時はまだ漠然としたイメージでしたが、新規のお客様を獲得して販売店様につなげるための仕組みをメーカーが作り、お客様・販売店様双方の利便性に寄与するデジタル施策を進めたいと考えていました。
2.新たな宅配サービスへ、システム構築支援やマーケティング実行も含めたサービスリニューアルのロードマップをご提案
シナジーマーケティング 東雲(以下、東雲) Webキャンペーンツールとして、2018年から当社のCRMシステム「Synergy!」をご利用いただいていた関係で、サイトリニューアルと、Synergy!で得られたデータ活用についてのご相談をいただいたのが、2021年の終わりごろでしたね。
長崎氏 それまではキャンペーン周りのことでしかご相談したことがなかったので、まずサイトリニューアルができるかを伺いました。ほかにも、当社と取引実績がある事業者様数社にお声がけしていました。
東雲 サイトリニューアルがメインのお話ではありましたが、それだけではなく宅配サービス全体をリニューアルする「次世代宅配プロジェクト」が動いていることもお聞きしたんですよね。次世代宅配プロジェクトでは、「デジタルチャネルを改善し、オンライン経由の契約者数を現状から10倍以上にする」という目標が掲げられていました。これは、サイトリニューアルだけで達成するのは難しい目標であり、中長期的な宅配サービス全体のデジタルマーケティング戦略を考える必要がありました。戦略領域からのデジタルマーケティング実行が我々の強みですので、「ぜひ、一緒に考えていきましょう!」と、包括的なご提案をしました。
多々良 ご提案の際には「サービスリニューアルにあたり必要となるデジタル化はどのようなものか」といったプロジェクト目的を具体的に深めていくことや、潜在的な課題を把握するべくたくさん対話をしましたよね。そのようなインプットがあったうえで、施策実行の前段階となる調査や戦略立案はどのように行うべきか、サイトリニューアルとその裏で動く顧客管理システムの構築、プロモーションのテストマーケティングから本格実施への流れはどのように進めていくべきかなどをまとめ、実行可能なロードマップに落とし込んでいきました。
鈴木氏 当初は、宅配サービスのサイトをリニューアルし、Webキャンペーンを行う程度のイメージしかなく、継続的なデジタルマーケティングの体制構築も含めてプロジェクト化する意識はなかったんですよね……。我々は営業の事業部なので、デジタルマーケティングの知見が薄く、目標達成へのストーリーを若干甘く考えていたところがありました。プロジェクトの目的とともに、全体的なつながりと方向性を整理したプロセス・ロードマップを示していただいたことで、目標を達成するために必要なアクションが理解できたのは良かったです。
長崎氏 シナジーマーケティングさんとは、それまでスポットでの運用サポートのみのお付き合いでしたから、包括的な提案には驚きました。でも、何からどうすればよいか、自分たちだけで進めるのは難しいと思っていたので、ゴールに向けたロードマップを提示していただいたときに、「このステップで進めればいいのか!」と腹落ちしました。サイトリニューアルや管理システムの構築、運用、キャンペーンなどのマーケティング部分まで一気通貫できること、今までのキャンペーンデータも活用できるという提案が響き、シナジーマーケティングさんとプロジェクトを進めることに決めました。
3.いよいよプロジェクトがスタート、まずは戦略構築に集中
中山 2022年10月のキックオフミーティングから、プロジェクトがスタートしました。フェーズを3つに分け、特にフェーズ1(2022年度)は、本サービスの現状分析と市場調査・競合調査、構築するサイト/管理システムの要求整理などを行ってデジタルマーケティング戦略の方針を決めることに集中しました。新たな宅配サービスを立ち上げるにあたり必要な要件や、具体的な目標(KPI)について、より深く掘り下げていく時間を確保しました。
多々良 施策ありきで走りはじめると、目的を見失ってしまいます。そのため、森永乳業様の内情や課題感、マーケットや競合の状況、実施にかかるコストの規模など、事前の準備をしっかり行ったうえで、着地すべきところを議論しながら進めました。
長崎氏 まさにサイトリニューアルやWebキャンペーンなど、やりたい施策先行で考えていました。シナジーマーケティングさんが優先順位をつけ、具体的な動きをロードマップに落とし込んでくれたので、施策というそれぞれの点が線で結ばれて道筋が見えたときは、ホッとしました。
鈴木氏 一方で、想定以上のプロジェクト規模になり、予算確保に向けての厳しい闘いも始まりました……(笑)。ここも、シナジーマーケティングさんにはずいぶん助けてもらいました。社内に「私たちの販売スタイルをこれからどう変えていくのか」「従来の販売スタイルからなぜ転換が必要なのか」を説得力をもって社内に示す必要があったのですが、わかりやすい説明資料を作成していただき、喧々諤々の末、会社の理解を得ることができました。
多々良 投下できる予算に応じて目標値も変わってきますから、例えば我々の経験のうえで「この水準を目指すのであれば少なくともこれくらいのコスト感は必要」というお話しも正直にお伝えしましたね。計画が絵に描いた餅にならないためにも、しっかり理解していただきたかったので、資料作成にも力が入りましたね!
中山 フェーズ1の終盤には、コスト感とWeb広告の効果を測るために、ある程度の規模でサンプル申し込みのテストマーケティングを行いました。その結果も踏まえ、2023年3月には翌年度以降の戦略に社内合意をいただきました。
4.実行フェーズからは、サイト・システム構築PJとデジタルマーケティングPJに分かれ施策に着手
東雲 フェーズ2の2023年度は、さまざまなテストマーケティングの実施や検証、販売店様と連携する受注管理システムの構築を含むWebサイトのリニューアルに着手しました。
中山 7月と10月にはテストマーケティングとして、主力商品を中心にこれまで実施していなかったプロモーション色の強いWebキャンペーンを展開。これまでWeb広告をほぼやっておられなかったので、テストとして、エリア限定キャンペーン、有償パターン/無償パターンのキャンペーン、クリエイティブ面ではタレント活用したパターンなどさまざまな角度から効果検証を実施しました。広告経由の獲得単価や件数では良い結果が得られた一方で、販売店様の宅配リソースのキャパシティ課題なども見えてきました。
多々良 2023年度の後半では合宿を通して集中的な議論をし、2024年度のリニューアル後の施策もしましたよね。
その後に、フェーズ3である2024年度の4月にいよいよサイトリニューアルが完了し、新たなサービスサイトとして「健幸サポート便」を公開。あわせて、受注管理システムが稼働しました。その後も本年度は、デジタルマーケティングによる新規顧客獲得の稼働1年目として、Webキャンペーンなどの施策を打ちながら、目標に向けてPDCAを回しています。
5.デジタルをより活用した「新たな宅配サービス」の効果と反響
東雲 長期にわたるプロジェクトでしたが、現時点での社内の評価、全国の販売店様からの反響はいかがでしょうか?
長崎氏 サイトリニューアルをご相談したことをきっかけに、「健幸サポート便」にかかわるさまざまなデジタル施策を、ロードマップに沿って着実に実現できました。また、受注管理システムの稼働で、従来アナログでやり取りしていたお客様のデータを、安全かつ正確、スピーディに販売店様に引き渡す方法が確立できました。これらの点はとても評価されています。お客様データの一元管理の実現で、契約達成率の計測もようやく自動化できるようになりました。
鈴木氏 今まで私たちに見えていたのは販売店様までで、その先のお客様までは見えにくい状況でした。それがデータとして可視化できるようになったのは、とても大きな効果だと評価しています。
インフラは整いましたから、ここから浸透させていく、これからより数を追いかけていこうと思っています。喫緊の課題は、現場への浸透です。従来は支店の営業担当と販売店様との関係性だったものが、本社も販売店様とダイレクトにつながるようになりました。販売店様のキャパシティにかかわる課題も、この施策が浸透することで解決できると考えています。
6.「デジタル化の実現には私たちの事業モデルや業界特性を理解し、伴走してくれることが大きいです」
多々良 最後に、ここまでのプロジェクトを振り返ってみて感想はいかがですか?
長崎氏 この3年間で、事業部内でデジタルマーケティングに関する知見を得られたことは、なによりも大きな財産となりました。社内体制のデジタルシフトも起こりましたね。もともと事業部内にデジタルマーケティングを担当するチームがなかったので、プロジェクト開始前は私個人が事業部のホームページ担当という立場でメイン業務と兼任していたんです。その状況からプロジェクト開始を境に大きく体制が変わりました。部内でデジタルチームが発足、現在私はデジタルマーケティングの専任者になり、支店にもデジタル化の推進担当が置かれました。
鈴木氏 ここまでデジタル化を実行できたのは、1社で一気通貫できるシナジーマーケティングさんの伴走があってこそだと感じています。シナジーマーケティングさんが私たちの事業モデルや業界特性を理解したうえで、しっかり伴走してくださっていることが大きいです。シナジーマーケティングさんに伴走してもらえて大正解でした。
実際やってみればわかりますが、知見がない状態かつ事業部の力だけで現場を変えていこうとしても限界があります。「デジタル化を実現するだけでなく、しっかり成果を出すために専門家の力を借りる」という選択は間違っていなかったと確信しています。
東雲 大変うれしいお言葉です。私たちはデジタルマーケティング領域の包括的なサポートを得意としていますが、大きな成果を得るには、3か年、5か年などある程度の長い時間軸で理想に近づけていく忍耐力も必要になってきます。そういった意味でも、今回は、森永乳業様から、3年先、5年先を見据えたご相談をいただけたので、我々からご提示したプロセスやロードマップも着実なものとして活かすことができたと考えています。これからも全力でサポートさせていただきます。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。