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入学検討者のニーズがもっとも高まる瞬間はいつなのか?
昨年対比140.8%、過去最高の出願者数を達成
マーケティングツールや手法は、Webを中心に次々と新しいものが生まれ発展しています。それらを使えば、これまでできなかった細かいターゲット設定や、ユーザーの行動予測までもが可能になります。しかし、いくらツールや手法が優秀であったとしても、使う側の戦略がなければ成果につながりません。
京都芸術大学の通信教育部は、2016年秋の出願者数が昨年対比140.8%と、過去最高の結果となりました。その裏側には、CRMの考え方に基づくマーケティング戦略と実行プランがありました。その取り組みについて、同学の担当者が明かします。
写真右より
作山 朋之 氏
京都芸術大学 通信教育部事務室 入学・教育開発グループ グループヘッド
前岡 大輝
シナジーマーケティング株式会社 西日本事業部 西日本第一営業グループ
※部署名・役職は取材当時(2016年12月)のものです
資格やスキル修得に留まらない、大学の通信教育で学ぶ価値
「社会人の学び直し」の気運が高まりつつあることを背景に、大学や企業は次々と通信教育事業に参入しました。しかしながら、大学通信教育における学生数は、2005年度をピークに減少傾向にあります。これからは、忙しい社会人がわざわざ大学の通信教育を受講するだけの価値を具体的に提示していかなければならないと、京都芸術大学通信教育部でマーケティング活動を統括する作山氏は語ります。
「他大学の通信教育部をライバルだとはまったく思っていません。なぜなら、大学でなくても、今や安価で家に居ながら受講出来る講座がたくさんあります。私立大学通信教育協会の『入学者調査』によると、入学の動機のうちもっとも多いものは『職業上の資格を得るため』ですが、多くの資格はそもそも大学に入学せずとも、あるいは他の通信講座などでも取得できるものです。だからこそ大学は、資格やスキルの修得に留まらない “大学で学ぶ価値” を具体的に示していかねばなりません。」(作山氏)
従来の集客重視からCRM重視に考え方を転換
厳しい競争を勝ち抜くために、京都芸術大学は教授陣とともに魅力的なカリキュラムを開発しつつ、入学者を増やすためのマーケティングに着手しました。これまでは、新聞広告・DM・Web広告を使って、出願に必要な会員組織(※1)への登録、または入学説明会への参加を促すのが主な施策でした。しかし、説明会は満員御礼となっても出願者数が増えていない、ここに課題があったと明かします。
※1 学習の進め方や事務手続きなどの情報が案内されており、出願の際に登録が必須となるもの
「実は、出願者の6割が説明会に参加していませんでした。遠方にお住まいの方に説明会へ足を運んでもらうことは困難ですし、これ以上イベント動員を増やすことも会場のキャパシティや人的リソースに限界があります。近年、通学不要で学べる『芸術教養学科(通称、手のひら芸大)』という学科を開設したこともあり、説明会という直接接触にこだわらず、Web上のコミュニケーション設計を見直した方が効果的に出願者数を増やすことができるのではないか、と考えました。」(作山氏)
また、各種媒体の中でもWeb検索などをきっかけに京都芸術大学を知った出願者が多いこと、出願者の9割もの方が会員組織への登録後3か月以内に出願していることもわかりました。これらのデータを見て作山様が目を付けたのが、資料請求や会員登録をした方が、どのような思考やプロセスを経て出願に至るかを、顧客視点で考えてコミュニケーションを行うCRMの考え方です。
「社会人が大学に入学するのは、今の日本の現状では極めて珍しいことです。よって、入学するとなると、もう少しじっくり検討するものと思っていましたが、思いの外に検討期間が短いことがわかりました。そこで、本学に多かれ少なかれ興味を持ってくれている資料請求者が何らかのアクションを起こしたとき、つまり興味度合いが高まったタイミングで、集中的にWebコミュニケーションを行う必要性を感じたのです。そこで重視したのがCRMの考え方。顧客視点に立ってものごとを考えることに注力し、一つひとつの制作物においても『いつ、どこで、誰に、どのように提示されるのか』『そのメッセージに出会った方はそのときどのような状況で、どのような気持ちになるだろうか』を徹底的に考え、顧客の心理を想像するようにしました。」(作山氏)
出願が完了していない入学検討者にはFacebook広告でアプローチ
顧客視点を持った上で、京都芸術大学は2つの新しい施策に取り組みました。1つ目が、Facebook広告を活用した取り組みです。これまでも、エリアや年代などの属性情報でセグメントを切った広告配信はしていましたが、新しく “会員組織へ登録しているが、まだ出願していない人” に絞り、出願訴求のメッセージ性が強い広告を出しました。
■Facebook広告を活用したコミュニケーション
方法は至って簡単、会員のメールアドレスとFacebookの登録メールアドレスを連携し、条件に当てはまる人にのみ広告を配信するだけです。
会員のニーズが高まっているタイミングで、Facebookという普段よく使っている手段を通じて、会員に出願時期が迫っていることを知らせ、出願を促すことに成功。その結果、25件の出願に繋がりました。広告運用の担当者様はこのように評価します。
「成果に繋がったポイントは、リードを広く稼ぐ種まきではなく刈り取りの時期に、見込みのある会員に絞って広告が出せたことですね。はじめましての人ではなく、既にある程度大学のことを知っている人、あと一歩の人に対して『最後のひと押し』の広告を配信できるので、その方の状況や心情なども想像しやすいですし、訴求メッセージも尖らせやすくなり、刺さったのだと思います。」(広告運用担当者)
また、本施策を支援したシナジーマーケティングのコンサルタント前岡は、成果に結びついたポイントは会員の数も影響しているのではと考察します。
「もともとFacebook経由で登録された会員の数が多かったので、Sync率(※2)も高く、相性が良いと思って提案しました。また、すでに会員登録されているということは、何かしらの心理的なハードルを越えているということなので、尖った訴求内容が刺さるのではないかと考えました。」(前岡)
※2 会員組織に登録されているメールアドレスとFacebookに登録されているメールアドレスが紐づく割合
行動を起こした瞬間に一番欲しいであろう情報を想像し、届ける
もうひとつの取り組みが、『リターゲティングメール』を使った施策です。リターゲティングメールとは、CRMシステム「Synergy!」のメール配信機能の1つで、ユーザーのWeb上の行動があった瞬間をきっかけに、あらかじめ設定したメールを自動的に配信できるものです。今回の取り組みでは、このリターゲティングメールを2つの場面で活用しました。
■リターゲティングメールを活用したコミュニケーション
1つは、会員登録後はじめて会員ページにログインした時に、会員ページの使い方を伝えるメールの配信です。せっかく登録してもらった会員に、ストレスなくマイページを活用してもらうためです。
もう1つは、出願フォームにアクセスしたものの出願しなかった場合、1時間後に出願の流れについて丁寧に案内するメールの配信です。
これらの取り組みにより、開封率は67.4%、クリック率は26.7%という好結果が出ました(通常の配信では開封率17.3%、クリック率2.1%)。さらに、なんとメール購読の解除は0件でした。
どの場面でリターゲティングメールを使い、どのようなメールを送るのか。配信シナリオを設計した担当者様は、そのポイントをこのように語ります。
「リターゲティングメールは、入学検討者が一番テンションの高い瞬間を狙い撃ちするのにとても効果的でした。メールの配信設定も簡単で、システムの操作に慣れていない私でもすぐに設定できました。ただ、そもそも大切なのは『その瞬間の気持ちを想像すること』。入学検討者の方たちは何かしらの関心があるから会員ページや出願フォームにアクセスします。にもかかわらず次のアクションにつながらないのには、何か問題があると思うんですね。その問題を解決するために、どんなことに困っているんだろう、どんな情報があれば便利だろうということについて、徹底的に相手の立場に立ってシナリオを考えました。」(配信シナリオ設計担当者)
リターゲティングメールとそのほかのメールも合わせると、出願フォーム登録総数の約4分の1にあたる59件がメール経由で生まれています。この成果を前岡は振り返ります。
「このことは、消費者の心情に合ったタイミング・コンテンツでメールを送ることができれば、メールマーケティングは未だ有効であることを証明しています。」(前岡)
昨年対比140.8%、過去最高の出願数達成も春学期はさらなる成果を目指す
こうしてCRMに基づくマーケティング施策を行った結果、京都芸術大学はみごと昨年対比140.8%、過去最高となる出願者数を達成しました。成果が出た理由について作山様はこのように語ります。
「成果を出せたのは、ツールそのものはもちろん、課員がCRMの考え方を理解し、徹底して顧客視点に立った上で施策を設計できたからだと思います。ベンダーやコンサルタントが提供してくれる新しいツールやベストプラクティスは、あくまで最大公約数のケーススタディだと思っていて、そのまま横展開してもうまくいきません。顧客と毎日向き合っている自分たちが戦略を考えることが重要ですね。また、もっとも大事なのは『顧客視点に立つ』という言葉ではなくて、実際に顧客の立場に自分自身も身をおくことだと思います。」(作山氏)
最後に、本施策を支援するシナジーマーケティングについて作山氏はこのように評価しました。
「分析コンサルタントの方が、ご自身の目指していることとして『お客様ご自身が分析することの楽しさ・やりがいを持っていただくこと』を挙げていました。そういったスタンスがメンバーの皆さん一人ひとりから感じられます。シナジーマーケティングは、クライアントの自走を目指した支援をしてくれるので本学と相性がいいんです。」(作山氏)
今回の成果に満足することなく、春学期に向けて新しい施策を動かしている京都芸術大学様。続報をお待ちください。
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