全クラブ共通基盤からの大規模配信を支えるシステム安定性で
クラブ集客支援やファンエンゲージメント向上を実現!
写真右より
野溝 忠利 氏
公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 事業マーケティング本部 プラットフォーム開発部 部長
一柳 智史 氏
公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ) 事業マーケティング本部 プラットフォーム開発部 プラットフォーム開発担当オフィサー
金子 萌香
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 第6アカウントソリューションG
長島 潤也
シナジーマーケティング株式会社 クラウド事業部 第6アカウントソリューションG マネージャー
※部署名・役職は取材当時(2025年2月)のものです
金子 初めにお二人のお役割や、ミッションをお伺いできますか?
野溝氏 私たちの部門は「60クラブがそれぞれの地域で輝く」「トップ層がナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」という2つの成長戦略のもと、世界を視野に入れたさらなる発展を目指しています。
一柳氏 システム基盤においては、全60クラブの顧客データを集約した「Jリーグデジタル共通基盤」を構築し、ファン・サポーターのカスタマージャーニーに沿ったマーケティング施策を実行できる環境をクラブへ提供しています。
また、JリーグID会員サービス、ワンタッチパスサービス(ファンクラブ・シーズンシート会員の来場記録)、LINEミニアプリ(デジタル会員証、デジタルチケット、インスタントウィン、招待キャンペーン、推し選手動画配信)、オンラインキャンペーンサービスなど、顧客向けデジタルサービスの開発・運用を行っています。
野溝氏 さらに、これらのサービスで蓄積した会員情報や利用履歴をもとに、Jリーグおよびクラブに向けたマーケティングプラットフォームとして、レポート生成、セグメントメール配信、マーケティングオートメーションなどの施策を実行するツールの開発・運用も行っています。また、クラブが独自に導入している各種デジタルサービスとの連携を強化する「Jリーグオープンプラットフォーム」を構築し、クラブの集客支援やファンエンゲージメントの向上を担っています。
2017シーズンからスタートした共通基盤の構築
長島 これまで、どのように仕組みを作ってこられたのですか?
野溝氏 Jリーグの共通基盤の提供は2017シーズンの秋頃からスタートしていますが、その頃にJリーグIDという会員組織が始まり、オンラインストアなどの購買履歴を蓄積するようになりました。
それまではクラブごとに独自のツールやExcelなどで、さまざまな情報を個別に蓄積していましたが、デジタル上で一元管理して利活用するための整備が始まりました。
ただ、ツールを提供するだけだと上手く活用できないケースもあったため、2018シーズンからは人材育成講座をJリーグ側で開催するようになりました。
その結果、現在では、クラブからよりきめ細かい集客や接客をやりたいという要望が寄せられるようになり、Synergy!だけでなくMAやDMPも組み合わせながら運用をしています。
一柳氏 全クラブの合計で、月単位でメール配信回数2,000回、メール配信通数のべ6,500万を超えています。(※2024年9月実績)また、toC戦略として年に複数回(春休み期間、ゴールデンウイーク、夏休み期間など)大規模プロモーション施策(テレビCM+大規模招待+デジタル広告)を実施しており、大規模招待の応募フォームとしてSynergy!の仕組みを使った「JリーグIDキャンペーン応募フォーム」を利用し、のべ応募者数約250万件を獲得することができています。
長島 来場者を増やすという点において、新規JリーグIDの獲得(新規会員の獲得)が大変重要になってきますが、そこにも私たちのシステムは貢献できていますでしょうか。
一柳氏 大きく寄与いただいています。応募フォームのカスタマイズ機能を使って、「JリーグIDでログインしないと、大規模招待に応募できない(応募フォームに入力できない)」といった仕様にすることができたお陰で、順調に獲得できています。
長島 ありがとうございます。月単位のメールの配信回数がとても多いと思っていたんですが、これはクラブがそれぞれで施策を実施している、ということでしょうか。
野溝氏 そうですね、クラブは地域密着型でそれぞれに独自の特徴があるため、こちらが主導で行っているデジタルマーケティング施策以外にも、クラブごとに施策立案・実行・検証を行っています。
一柳氏 ただ、やはりクラブによって施策の実施頻度には差があります。基盤を提供するだけでは、すべてのクラブが機能を十分に活用するのは難しいため、活用サポートに力を入れなければならないと考えています。以前、シナジーマーケティングさんにメールのライティング方法や効果的なメール配信のレクチャー会を実施いただいており、またそのような機会を作っていただけないかご相談中です。
金子 近々で実施できるように調整させていただいています。ご要望やご状況に合わせて、メール文作成のような実作業から上流のデジタルマーケティング施策の立案まで、包括的なサポートを提供できることが当社の強みですので、ぜひ多方面でご支援させていただければと考えています。
大規模配信を支えるSynergy!のシステム安定性
野溝氏 共通基盤は、「自分たちで最初から決め打ちで作り込むのではなくて、そのタイミングで最適なものを組み合わせて使っていく」という考え方で構築してきました。現在、重要視しているポイントは、システムの安定性です。例えば、試合当日や前後にメールが配信できないとそれだけで一大事ですし、チケット発売のタイミングでメールが配信できないと機会損失につながりますよね。24時間365日、安定してシステムが動いているということがとても大切だと考えています。Synergy!の場合、大規模配信でもエラーが起きることなく、いつも安定してシステムが稼働しているので安心して施策を実行できますし、評価の高いポイントだと思います。
一柳氏 また、インターフェースのわかりやすさも重要です。誤配信などのセキュリティインシデントが起きにくい仕組みであることや外部システムとの連携のしやすさは良い点です。加えて、Synergy!にはAPIやファイル連携などさまざまな形式が用意されており、開発工数もかからずスムーズに連携できる点も評価しています。
金子 ありがとうございます。クラブの皆さんからも使いにくいなどのお声はありませんでしたか?
野溝氏 クラブの日常的なオペレーションに関して、複雑な問い合わせは来ていないので、画面や操作がすごくシンプルで使いやすい、という印象がありますね。あとは長年使っているため、クラブの担当者が操作に習熟してきているという点もあるかと思います。
金子 なるほど、日々の施策でこれほどご活用いただき、私たちもうれしく思います。
一柳氏 何かあったときにもレスポンス早く対応いただけるので、すごく助かっています。クラブ側で、試合前の施策に関して問題が発生した場合、「すぐにでも解決したい」という高い温度感で私たちに問い合わせが来ます。そのときにシナジーさんと連携して迅速に回答できることは非常にありがたいです。
金子 ありがとうございます!これからもしっかりサポートさせていただきます!
クラブとともに進める顧客理解
金子 大規模招待のキャンペーン以外にも、何百万人単位でメール配信をされることがあるかと思いますが、その際のメール配信作業やフォーム作成はクラブごとに実施されるのですか?
野溝氏 そうですね、クラブごとにSynergy!のアカウントを作っているので、基本的には私たちリーグ側がセントラルで行う施策でもクラブごとにフォームのアカウントを用意しています。背景としては、現在のJリーグIDフォームで応募すると、応募したJリーグIDに対して、クラブのお気に入り登録ができるようになっています。お気に入り登録をしてもらうことで、クラブはそのJリーグIDに対してCRMを回せるように体制を作っているので、セントラルとクラブ相互でデータを把握することができます。
一柳氏 そのため、クラブとしてはいかに自分たちのクラブをお気に入りに登録してもらうか、というところが大切ですね。
長島 実は裏側もいろいろ聞かせていただいて、まさに別のスポーツリーグでも実現しようとしているのですが、仕組み化するのが本当に難しいんですよね。それを継続して実施しているのはすごいと思います。JリーグIDを取得するということは単純でも、それを複数あるクラブと共有してスムーズに活用できるような基盤を作り、運用していく難しさを改めて感じました。
一柳氏 リーグとクラブの関係性のお話をすると、一昨年クラブサポート本部が新しくできました。そこでは、クラブに1人リーグ側の担当者が窓口としてつきます。日々の施策のサポートだけでなく、もともとリーグとクラブのコミュニケーションに距離があったのですが、担当者が架け橋となって伴走することで全体的な施策も、クラブごとの施策も協働できるようになりました。
金子 すごくいいですね。クラブの方も窓口があると問い合わせしやすいと思いますし、他のクラブがどのような施策に取り組んでいるのかの情報交換も進みそうです。
一柳氏 そうですね、クラブサポート本部内でもクラブの成功事例などを横展開していますので、「こういうことがやりたい」や「このクラブがこういう施策を実施していたけれど、どうやったのか教えてほしい」というオーダーに対して、提供できる情報のスピード感や施策の実施速度も上がりました。
金子 クラブサポート本部側でも施策の実施状況などを把握されているんですね。
野溝氏 はい、クラブサポート本部では私たちの共通基盤で提供しているレポートの中に、施策の実行回数やキャンペーンフォームの利用回数、メールの配信回数などを含めて確認できるようになっていますので、数値面の結果とあわせて施策のPDCAを回すことができます。
金子 とても見える化が進んでいて驚きます。
一柳氏 ただ、メールの送り方やコミュニケーションの詳細まではリーグ全体として統一していくイメージはないんです。クラブ独自でそれぞれが発展を遂げていますし、やっぱりクラブごとの特色があって良い部分だと思っています。
成果の最大化へつながる、細やかな顧客コミュニケーション
金子 現在、これからの顧客コミュニケーションをどう描いていらっしゃいますか?
一柳氏 今後CRMをどのようにアップデートしていくかといった観点では、1to1コミュニケーションに注力したいと思っています。今期中にトライアルをしようと思っていますが、例えば、「とあるセグメントに該当する人に対して、どのようなコミュニケーションを取ればより刺さるだろう?」といった発信内容のブラッシュアップを行い、スタジアムに来てもらうきっかけ作りをさらに活性化させたいですね。
金子 Web上の行動だけでなく、チケットやグッズの購入回数であるとか、お客様の動きから共通のラベリングをすることで、細かなコミュニケーションが可能になりそうです。
一柳氏 具体的には、ラベルによってメールの文面を細かく調整したいと思っています。例えば、子育て世代の人とアグレッシブにアウェイ観戦も行くという人では、メールを受け取るにしても温度感が異なると考えています。かといって、1つのメールを作成するたびに、クラブの担当者が手動でラベルに適した文面のパターンを10種類作る、というのは時間的にもなかなか難しいはずです。さまざまな要素を盛り込んでいく部分や生成する部分を自動化しつつ、お客様のニーズに沿うことができるのかを練っていきたいですね。
野溝氏 ファン・サポーターやJリーグに興味関心のある人を増やしていくためのコミュニケーションのプラットフォームとして、メールは今後も大事なツールだと考えています。
そこで、シナジーマーケティングさんのメールシステムやフォームを活用して、お客様とのコミュニケーションを図っていきます。コミュニケーションの第一歩として、例えば、フォームで応募するときにストレスなく、簡単に応募できることや、興味関心がわくようなUIであることが重要だと思うので、今後もフォームの構成を磨いていく必要があります。
金子 システムと施策の両面からのコミュニケーション設計ですね。
一柳氏 「デジタルマーケティングの施策を考案しても、それを実行するための人員が不足している」という、すぐに解決することが難しい課題を抱えているクラブもあります。先程もお話ししましたが、人材育成講座などでシナジーマーケティングさんに参加いただいてクラブともコミュニケーションを取っていただくような、Synergy!の提供だけでなく、業務効率化や施策面でも継続的な支援をお願いできるととてもうれしいです。
金子 もちろんです、これからも包括的にご支援ができればと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。