属性情報だけではわからない顧客の本質を“心のものさし”で理解した白鶴酒造
前回ニューロマーケティングの実施により顧客の本質を理解する大切さを知った白鶴酒造。今回は白鶴酒造全体のブランド調査をするにあたり、さらに掘り下げた顧客の内面(価値観)を理解する活動を行いました。白鶴酒造はどのように顧客の価値観を理解することができたのか?その概要をご紹介します。
表面的な調査で終わりたくないという思いから始まったプロジェクト
ブランド調査の手法はいくつか存在していますが、仮説の検証や表面的な理解にとどまり、次の活動に活かすことができないと悩む企業は多いのではないでしょうか?例えば、30代の男性が家でアルコールを楽しみたいと感じた際に手に取る商品は、ビール・発泡酒・チューハイ・日本酒……とその個人によって選ぶ商品は異なります。なぜ同じ年代・同じ性別・同じ目的があるにも関わらず、行動の違いが発生するのでしょうか。それは生活環境やそこに紐づく価値観の違いから好みが変化していると考えられています。
以前実施したニューロマーケティングで、言葉では表しきれない顧客の心を理解できた経験から、「目に見える価値ではなく、顧客の本当のインサイトは何なのかを問うようになった」と白鶴酒造の商品開発本部 主任の金子氏は語ります。
顧客のインサイトを見つけるために今回実施したブランド調査では、従来から実施している定点調査に加えて、心のものさしである「Societas※」が使われました。
※Societasはシナジーマーケティングの「社会知データベース」の解析から生まれる顧客の特性パターンであり、シナジーマーケティング独自の価値観モデルを適用した確率推定モデルです。
本当のインサイトを知るための“心のものさし”「Societas」とは
行動・嗜好の本質を理解するための「顧客の価値観遺伝子」Societas(ソシエタス)
Societasとは、顧客の行動データから意思決定の要因を抽出した、「タグスコア※」による新しい顧客セグメンテーションです。Societasは、いわば「顧客の遺伝子」であり、顧客の行動・嗜好の本質を理解するための手掛かりとなります。
※タグスコア=意思決定の要因を「タグ」として抽出し、スコアリングされたもの。
- 顧客のライフスタイル、価値観、感情、行動で類型化したもの
- マーケティングデータからお客様の心を理解する「ものさし」
- 価値観や構想の要因となる「特性パターン」で、日本人を分類
- 顧客の行動・嗜好の本質を理解するための手がかりとなる
Societasを活用するメリット
1)既存のフォーマットがあり簡単に調査が進められる
8つの決まった質問に回答するだけでSocietasに基づいて顧客を分類することができます。
2)自社では知りえない情報を得ることができる
シナジーマーケティングが保有するSocietasに紐づく価値観情報を付与することで、自社の調査だけではわからない詳細なペルソナ情報(Societasペルソナ)を取得することができます。
▼Societasペルソナでわかる情報(一部の例)
響くキーワード
- 専門性・ブランド力・相談できる
- 家族のために
訴求ポイント
自分自身は特典に興味はないが、家族が喜ぶなら。まじめでやや頑固でDMやチラシなどオーソドックスな手法で地道に継続的な関係性が重要
3)価値観を数値化することで全体を把握できる
部署ごとの業務領域の違いから会社全体の顧客理解ができない企業は多くあります。Societasは価値観を数値化して表すことができ、その数値を利用して仮想的なシングルソースデータを設定することが可能です。これにより、会社全体で統一された認知から購入までのカスタマージャーニーマップを描くことができます。
見えてきた顧客像
ブランド調査の回答結果とシナジーマーケティングが保有する価値観情報、さらに以前調査したニューロマーケティングの結果をかけ合わせて分析することでより細かく多面的なSocietasペルソナとなりました。浮かび上がらせた顧客像は、主力製品“まる”のブランドターゲット2名でした。各人の特徴はそれぞれ以下のとおりです。
1 “まる”のメインターゲット
- 日本酒の飲用経験があり、“まる”を飲んだことがある率が高い既婚男性のクラスタ
2 “まる”のサブターゲット
- 日本酒の飲用経験がある
- 「“まる”のメインターゲット」の奥様と位置づけられるクラスタ
▼Societasペルソナのイメージ
2名のSocietasペルソナにはそれぞれの嬉しいこと・腹が立つこと・よく見る情報コンテンツ・重視する情報源・買い物について……などの情報が記載されています。Societasペルソナを読み、金子氏は次のように語ります。「”まる”は手に取りやすいパック商品なので、手軽にお酒を楽しめることを重視している顧客像を想像していました。ところが今回の調査で、想像以上にゆったりとした価値観を持っているという新たな発見がありました。他方、“まる”を選ぶ理由として、薀蓄(うんちく)を語るわけではないけれども、美味しくて、なんとなく自分に合っているから、といった価値観に根差す部分は想像と合っていたなと感じています」
Societasペルソナを活かした次のアクション
顧客像が明確になった今、白鶴酒造が考える次の一手はどのようなものなのでしょうか。
「まずは、いろいろな施策案が出てくる中、この案はこの人が適している・この人をイメージすればもっとこのような案にできるのではないかと、議論を進めています。さらに、顧客理解が進んだことにより、他にもSocietasペルソナを使って理解を深めたいターゲットが見えてきました」
今後Societasペルソナを元に施策を行うにあたり、白鶴酒造社内の他部署との連携が必要になります。過去2回のニューロマーケティングの実施経験から、顧客の本質を理解することの大切さを感じている白鶴酒造。それでも、「他部署と連携してSocietasペルソナに基づいた施策を展開するにあたって、その都度その都度、改めて説明する必要があります。各部署でそれぞれの役割と目標があることを考慮しながら、部署の違いに合わせて伝え方を工夫し、社内全体で上手く進めていきたい」と金子氏は今後の活動について想いを語りました。
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。