ファンマーケティングとは?メリットや成功のポイント、注意点を解説
変化の激しい現代において、安定的な経営を維持することはあらゆる業種の企業にとって重要課題となっています。安定した売上の確保に向けて、企業から注目を集めている手法が「ファンマーケティング」です。
今回は、ファンマーケティングの概要と取り組むメリット、成功させるポイントについて解説します。効果的な施策の例や、実施時の注意点もあわせて紹介していますので、ぜひマーケティング施策を講じる際にお役立てください。
<目次>
製品・サービスへの熱狂的なファンを増やしていくファンマーケティング
ファンマーケティングとは、自社の製品・サービスを熱狂的に支持するファンを増やしていくための手法です。まずは、ファンマーケティングの基本的な考え方と、注目されている背景について見ていきましょう。
6段階に分類される顧客の状態
ファンマーケティングでは、企業との関わり方に応じて顧客の状態を6段階に分類します。各段階がどのような状態なのかは、下記のとおりです。
■ファンマーケティングにおける顧客の状態
段階 | 顧客の状態 |
ロイヤルカスタマー | 商品やブランドへの愛着がとりわけ強い |
優良顧客 | リピーターの中でも購入回数が多い |
リピーター | 商品を2回以上購入している |
新規顧客 | 商品を1回購入したことがある |
見込み顧客 | 企業や商品について認知している |
潜在顧客 | 企業や商品について認知していない |
新規顧客をリピーター、優良顧客、さらにはロイヤルカスタマーへと育成していくことがファンマーケティングの目的です。ロイヤルカスタマーを増やしていけば、競合他社の商品への乗り換えを防ぐことができ、安定した顧客基盤を築くことにつながります。
ファンマーケティングが注目されている背景
日本国内の人口が減少に転じ、今後いっそう顧客の奪い合いは激化していくと予想されています。そのため、事業の成功は、いかに既存顧客をファン化して継続利用率を高めるか、にかかっており、自然とファンマーケティングへの注目が高まってきました。
また、スマートフォンの所有率が高まっている現代社会では、誰もが手軽に情報を発信できるようになり、顧客の情報源は多様化の一途をたどっています。SNSへの投稿やECサイトの商品レビューをチェックして購入を検討する顧客は、着実に増えているのです。企業にとって、好意的な口コミや感想を積極的に発信するロイヤルカスタマーの育成は、継続的に顧客を確保していく上で重要な課題となっています。
ファンマーケティングのメリット
ファンマーケティングに取り組むことで、企業は具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。特に重要度の高いメリットを、5つご紹介します。
成熟市場でも安定した売上基盤の構築を目指せる
企業やブランドのファンが増えれば、成熟市場でも安定した売上基盤を構築できます。成熟市場においては商品の品質や機能が各社で横並びになりやすく、差別化できる要素が価格面に偏りがちです。結果として価格競争に陥り、利益の縮小に直結するケースも珍しくありません。そこで、企業やブランドに愛着を感じるファンを育成しておけば、成熟市場でも安易な価格競争に巻き込まれることを防げます。
SNSや口コミで新規顧客の獲得を目指せる
SNSや口コミ経由で新規顧客の獲得を目指せることも、ファンマーケティングに取り組むメリットのひとつです。実際に商品やサービスを利用した顧客の声は、企業が発信する情報よりも信頼されやすい傾向があります。企業や商品に対する好意的な口コミが増えることは、顧客が商品の購入を決断する際の強力な動機となるでしょう。そのような好循環が生まれれば、新規顧客を無理なく継続的に獲得できるようになり、安定的な売上の確保を目指せるのです。
顧客から良質なフィードバックを得られる
顧客から良質なフィードバックを得られることも、ファンマーケティングを実践するメリットといえます。ロイヤルカスタマーの中には、ファンになった商品やブランドに特別な思い入れを感じる人が一定数います。消費者の一人として受動的に購入するのではなく、商品やブランドがより良くなってほしいと考えるようになっていくことは、決して珍しくはありません。そのようなロイヤルカスタマーは、結果として顧客アンケートなどにも意義のある意見を主体的に寄せてくれるようになり、企業は顧客による良質なフィードバックを得やすくなるのです。
コストの削減につながる
ファンマーケティングが功を奏してロイヤルカスタマーが増えることは、広告費の削減にも寄与します。企業や商品のファンは、自身の好ましい体験を周囲の人に共有したいと考えるようになるからです。好意的な口コミや評判は、潜在顧客や見込み客が「一度購入してみよう」と決断する際の後押しになるでしょう。
また、ファンマーケティングが成功すると、カスタマーサポートなどのコスト削減にもつながる可能性があります。商品を初めて購入した顧客や使い慣れていない顧客に対して、商品を熟知したユーザーがインターネット上などで積極的にアドバイスをしてくれるからです。
さらには、顧客によるコミュニティが形成され、顧客の質問に別の顧客が答える環境が構築される場合もあります。そうなると、カスタマーサポートには最小限の人員を配置すれば事足りるようになり、コスト削減が期待できます。
ファンマーケティングを成功させるポイント
ここでは、ファンマーケティングを成功させる上で重要なポイントを、4つご紹介します。ファンマーケティングに取り組む際には、下記の点に注意して進めてください。
ファンの定義を決める
ファンマーケティングに取り組むにあたって、自社のファンとはどういう人なのかを明確にしましょう。一般的には自社の価値観や世界観に共感し、商品を支持してくれる人がファンと考えられています。
ただし、「共感」や「支持」の度合いが購買データと連動していないケースもあるため注意が必要です。SNSでの投稿内容や商品レビューのコメントといった定性データも含めて、ファンの定義を決めておく必要があります。
ファンの共感を強める
商品やブランドに対するエンゲージメントを高めるには、「共感」がカギを握ります。企業側の論理で商品やブランドを一方的にアピールするのではなく、顧客の目にどう映っているのか、どのような反応が返ってくるのかを重視した情報発信を意識しましょう。ファンの声によって、これまで見落としていた自社商品やブランドの価値に気づかされることもあるはずです。
ファンの愛着を強める
商品やブランドに価値を見いだしてくれたファンには、より愛着を強めてもらうための施策を講じましょう。具体的には、商品・ブランドの背景にあるストーリーを知ってもらうことが大切です。商品開発ストーリーやブランドストーリーは、他社にはない独自の価値を実感してもらう上で重要な役割を果たします。また、ファン限定で提供する特典や優待制度などを設けることも、ファンの愛着を強めるには有効な施策となります。
ファンの信頼を勝ち取る
ファンの信頼を裏切らないことも、重要な視点です。商品の不具合や取引上のトラブルが発生した際には迅速かつ誠実に対応し、企業やブランドの価値を毀損しないように留意してください。また、制作・製造の工程や開発者のプロフィールといった商品に付随する情報も積極的に公開し、ファンに安心して商品・サービスを利用し続けてもらえる関係性を構築していきましょう。
ファンマーケティングに取り組む際の注意点
ファンマーケティングに取り組む際には注意点もあります。ファンの存在を強固な売上基盤へとつなげるためにも、下記の3点には十分に考慮しておくことが大切です。
ファン層は時間をかけて形成していく
ファン層は時間をかけて形成していくものであり、短期的な成果が見込める性質のものではありません。ファンを増やしていくことも、ファンの信頼を勝ち取っていくことも、じっくりと時間をかけて取り組むべき施策と捉えてください。
成果を急ぐあまり、リピート購入を促すキャンペーンなどを企画しても効果は限定的です。ファンの共感・愛着・信頼を強めるための施策を地道に続けながら、ファンの声に耳を傾けていきましょう。ファンマーケティングは時間がかかる施策であることを、社内で十分に共有しておくことが大切です。
閉鎖的なファン層が出来上がらないよう注意する
ファン層を強固なものにするには、ファン同士のコミュニケーションを促す仕組みを構築することも大切です。コミュニティの場を用意したり、ファンが集うリアルイベントを企画したりといった施策も、ファン層の形成に役立ちます。
ただし、閉鎖的なファン層が形成されることには注意しましょう。閉鎖的なファン層の存在は、新たなファンが寄りつかなくなる原因にもなるからです。参加時期に応じてコミュニティスペースを分けたり、コミュニティ内のルールを公開したりといった工夫をすることで風通しを良くし、情報の偏りが生じないようにする必要があります。
炎上のリスクがある
ファンの心理が良い方向に作用すれば企業にとって心強い理解者となりますが、悪い方向に作用した場合は炎上につながるリスクもあります。企業やブランドに信頼を裏切られたと感じたり、対応が不誠実だと感じたりすると炎上リスクが高まる点には注意しましょう。
例えば、商品コンセプトに関わる機能や仕様の変更時などには、十分に気をつける必要があります。日頃からファンの声に耳を傾け、ファンの意見を取り入れる姿勢を示すことが大切です。顧客との対話が十分になされていないことが原因となって炎上につながるケースも少なくないため、ファンとの交流は地道に続けていくことが求められます。
ファンマーケティングに効果的な施策
最後に、ファンマーケティングに効果的とされる代表的な施策を紹介します。自社で取り入れられそうなものは積極的に実践して、ファンとのつながりを強化していきましょう。
ファンが集うコミュニティを構築し、コミュニケーションを促進する
ファン同士が交流できるコミュニティの構築は、ファンマーケティングを促進する上で効果的です。ファン同士につながりが生まれることで他社ブランドへの乗り換えを抑止できるだけでなく、ファンから発信される有益な意見や提案を吸収するための場としても活用できるからです。
ファンコミュニティの例として、コミュニティサイトやファンミーティングなどが挙げられます。できるだけ企業側の介入度を低くし、ファンが主体となって盛り上がっていくコミュニティ運営を目指しましょう。
なお、ファンを対象としたオフラインのイベントなどを企画し、ファン同士のコミュニケーションを促進するのも効果的な方法です。ファンがぜひ参加してみたいと感じるイベント内容にすることで、ファンが一堂に会する機会を設けることができます。
一例として、商品・サービスのテスターやイベント限定の非売品の贈呈などが想定できます。新たなファンを獲得することだけでなく、既存のファンの満足度を向上させることは、ファンマーケティングで重要な施策となるのです。
タッチポイントと誘導方法を整理する
顧客とのタッチポイントや主要メディアへの誘導方法を整理しておくことも大切です。顧客にとって頻繁に目にする企業名やブランドロゴは記憶に残りやすく、企業・ブランドの存在をはっきりと認知するきっかけになります。顧客とのタッチポイントを複数の媒体で用意しておくことが大切です。
また、タッチポイントから主要メディアへの導線を設計しておくことも欠かせません。オウンドメディアやLPへの訪問を促すことで、自社への理解を深めてもらいましょう。
ライブ配信の活用など、SNSで情報のキャッチボールを行う
SNSでの発信時には一方的にアナウンスするのではなく、情報のキャッチボールを意識するのがポイントです。自社商品について言及している投稿に「いいね」で反応したり、自社アカウントのフォロワーから届いたコメントに積極的に返信したりといったアクションを心掛けましょう。
SNSの企業アカウントは、一般ユーザーから見ると無機質に映る傾向があります。そこで担当者の人柄が伝わる投稿を意識し、ファンとのコミュニケーションの密度を高めると、他社との差別化につながるはずです。
また、ファンとの密なコミュニケーションを図るには、ライブ配信を活用するのもひとつの方法です。リアルタイムでのやりとりが可能になるため、ファンからの質問にその場で回答したり、視聴者の反応を確認しながら商品を提案・紹介したりといった対応がしやすくなります。視聴者側から見ると、企業が不特定多数の顧客に対して情報を発信しているのではなく、一人ひとりのファンと向き合っているという印象を受けやすくなるのです。
クラウドファンディングを活用する
新商品の開発や新プロジェクトの始動時には、クラウドファンディングの活用も検討しましょう。資金調達だけでなく、熱心な支持者による質の高いフィードバックを得られるからです。また、ファン自身が参画して商品やプロジェクトを育てていく意識が芽生え、将来的に強固なファン層を形成することにも効果を発揮します。本格的に市場に投入する前から商品・サービスに対する顧客の反応を確認できるという意味でも、クラウドファンディングの活用は大きな可能性を秘めているのです。
ファンマーケティングの礎となるCRM活動を見直す
ファンマーケティングを実践していく上で重要となるのが顧客データです。顧客データが一元管理されており、顧客への情報発信やコミュニケーションをスムーズに行える環境がなければ、ファンマーケティングの施策を具体的に進めていくのは困難といえます。ファンマーケティングにおける要素のひとつに「ファンの定義」がありますが、それも顧客データを活用することで見えてきます。
例えば、シナジーマーケティングは、購買来店行動など目に見える情報だけでは決めきれない「ファンの定義」を絞るにあたり、まずはファンの実態を理解するためのアンケート分析を実施することがあります。アンケート分析を含む顧客データから見えてくるのは、具体的なペルソナです。シナジーマーケティングはそこから「ワークショップ型戦略策定プログラム」の実施を行うこともあります。ワークショップ型戦略策定プログラムでは、各企業のファンにとってほしい「理想の行動や態度変容」を一枚絵(ダイアグラム)に表し、マーケティング施策を「顧客視点」から整理することで、戦略と施策に一貫性を持たせることを目指します。
企業によってファンマーケティングに必要な施策はさまざまですが、まずは顧客情報を正確に管理できるCRM活動への見直しは最重要であるといえるでしょう。
「ファンの定義」と「ワークショップ型戦略策定プログラム」の支援を行ったセレッソ大阪様の事例について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
アフターコロナのファンマーケティング再構築~セレッソ大阪が取り組む顧客視点改革ワークショップ~
まとめ:ファンマーケティングにはCRM活動が重要なカギを握ります
ファンマーケティングは顧客のファン化を促し、強固な売上基盤を築いていくための重要な施策となります。今回紹介してきたポイントや注意点を参考に、ぜひ自社で取り組めそうなファンマーケティングの施策を実行していってください。
また、一般的な利用顧客をファンへと引き上げるには、一度接点を持ったお客様一人ひとりに対して継続的にコミュニケーションを図る活動(CRM活動)が不可欠です。企業の価値を発信し、共感してくれるファンを増やしていくためにも、CRM活動への注力は重要なカギを握るでしょう。
シナジーマーケティングでは、ゼロからCRM活動を始める企業様からファンコミュニティの構築を検討されている企業様まで、豊富な経験と多様な提案でファンマーケティング支援を行っています。ファンマーケティングに興味のある企業様は、お気軽にご相談ください。
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