来場していないファンを可視化する!スポーツ業界のデータ活用の必要性
新型コロナウイルスの感染流行により、参加型・観戦型それぞれのスポーツ業界では大きな転換期を迎えています。
特に観戦型スポーツ界では「リモートマッチの実施」「現地開催試合の入場制限」などにより、スポーツクラブの重要な4つ収益柱※の構成が変化します。一番大きな変化である入場料収入の落ち込みはスポーツクラブ業界に大きな打撃を与えています。
(※「広告料収入」「入場料収入」「物販収入」「放映権収入」)
しかし、この転換期において本質的に脅威なことは入場料収入の落ち込みだけではなく、ファンの離脱を招く可能性があることです。
本記事では、コロナショックがスポーツクラブビジネスに与えた影響と、withコロナ時代に取り組むべき顧客ロイヤルティー向上施策のポイントを解説します。
<目次>
スポーツクラブビジネスはファン離れの危機!
先に述べたように、コロナショック以降、スポーツ業界においては試合の中止や従来のスタイルからの変化が起きています。
現在、試合は再開しているところが増えているものの、入場者数の制限は引き続き発生していくことが見込まれます。入場制限が持続していく中で一番怖いのは、スポーツ観戦という余暇の使い方を別の余暇活動にスイッチされることです。余暇活動のスイッチによるファン離れは、スポーツ業界全体の大きな課題となります。ファンの方に引き続き余暇の時間でスポーツ観戦を選択してもらうには、ファンのロイヤルティーを維持する必要があります。
そのためには現地による試合観戦だけでなく、試合会場以外での打ち手を考えていく必要があります。
顧客ランクの再定義を行うためのデータを収集する
スポーツクラブビジネスにおいて、顧客ランクを定義し、ロイヤルティーの高い顧客を把握することは非常に重要です。
顧客ランクは、
- ファン自身がどれだけクラブに貢献しているかを認識できる
- どのファンにどのような情報発信・サービス提供をするかの判断材料とする
という面でスポーツクラブ運営において、非常に重要な施策の材料となります。
従来は「入場料収入(チケット購入)」を軸に、試合観戦ボリューム(頻度やタイミング、金額)を計り、その実績からファンをランク分けしていたクラブも多いでしょう。つまり、現地来場がファンのスポーツクラブへのロイヤルティーを測る一つの軸となっていたといえます。
withコロナ時代においては、必ずしも来場ではない形の試合観戦が一般化してきます。
そのような時代において、現地来場していないファンはロイヤルティーが低いといえるのでしょうか?
弊社社員の成木は、某サッカークラブのコアなファンです。彼はコロナショックが起きる前は、可能な限りスタジアムに来場して観戦を行っていました。入場規制がある現在は毎試合、自宅でユニフォームを着て応援しています。
このように、来場をしていなくてもロイヤルティーの高いファンは存在しており、今までと同様に応援を続けています。
現地来場ができないファンが増えていく中で、自チームのファンを離れさせないためには、自チームが持つ接点を活用してデータ収集を行い、来場以外でファンのロイヤルティーを把握することが必要不可欠です。ここからは具体的な打ち手について言及します。
タッチポイントの整理とデータ収集機会を強化する
来場以外でファンのロイヤルティーを把握していくためには、今まで取得していた観戦履歴(=チケット購入)データだけでなく、オンラインコミュニケーションの反応や、試合以外のタッチポイントでのデータ収集が必要です。
まとめると以下のようなイメージです。
今まで以上に、観戦履歴(=チケット購入)データ以外の多様なオンラインデータの取得が必須となってきます。
各種データを統合的に管理し、一人のファンを可視化する
多様なタッチポイントで行うデータ収集ですが、タッチポイントごとでデータが分断されていると活用しづらい面があります。例えば、グッズ購入をしている方の購買データだけが存在していても、それがどのファンクラブ会員なのか?がわからなければロイヤルティー把握には活用できません。
それぞれのデータを関連づけることで、ファンのロイヤルティー把握や、コミュニケーション施策への活用が可能となります。一人のユーザーに紐付くデータを収集するためには、データを一つのシステムで統合管理して運用することが理想的です。
データ統合に関しては以下事例でも詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
▼福岡ソフトバンクホークス様の事例について詳しくはこちら
ファンとのコミュニケーションも「めざせ世界一」福岡ソフトバンクホークスのファンエンゲージメント
各種データをキー情報で紐付けての分析
上述したデータの統合管理はシステムの導入やデータベースの構成の見直しなどが大きなハードルとなるケースが存在します。データ統合管理が難しい場合は、キーとなる情報(どのデータでも共通して保有するユニークなデータ)を元にデータの紐付けを行うことを推奨します。システムが統合管理されていなくても、定期的にデータを抽出し、分析を行うことで施策展開へ結び付けていくことが可能となります。
キーとなる情報は、一般的には会員のIDやメールアドレスを利用するケースが多いです。タッチポイントで取得しているデータを見直し、紐付けに活用できるキー情報を調査する。キー情報がなければ、不足しているデータを新たに取得できるように仕組みを整えていくことが必要です。
ファンからのフィードバックを受ける仕組みを作る
試合会場での接点が作れない分、ファンの声を聞く機会を能動的に作っていくことが重要です。企業がロイヤルティーを測ることに役立つだけではなく、ファンに寄り添って運営を進めていくというクラブの姿勢を伝えるチャンスでもあります。
フィードバックを受け取るための仕組みについて2つの例を紹介します。
①Webアンケートによる収集
1つ目は試合終了時などのユーザーの関心度が高いタイミングで、Webアンケートによるフィードバックの仕組みを作ることです。例えば、あらかじめWebフォームでアンケートを用意し、試合終了と同時にアンケートを観戦者(視聴者)に送付するなどです。Webアンケートのメリットは、回答者の会員データと、回答内容をデータ上で紐付けることが可能となる点です。
Webアンケートを有効活用することで、SNSのような不特定多数の言及だけでなく、どのファンがどんなことを感じたかをより正確に集めることができ、よりよいファンクラブ運営に活かすことができます。また試合が行われないタイミング(シーズンオフ)での実施も有効です。Webアンケートは、定期的に接点を作ることで、ファンの興味関心を失わないようにする取り組みとしても活用が可能です。
スポーツクラブのアンケート活用については、名古屋グランパス様の取り組み事例もご参照ください。
▼名古屋グランパス様の事例について詳しくはこちら
集めたファンの声と行動にこそ答えがある名古屋グランパス流マーケティングの3年間の軌跡
②Webファンミーティングの活用
2つ目はWebファンミーティングを活用することです。リアルイベントが行いにくくなる中で、Web会議ツールを活用したファンミーティングなどを実施し、直接顧客の声を拾う取り組みを行っているスポーツクラブも出てきました。
試合観戦のスタイルが変化しつつある状況で、
- ファンがどう感じているのか
- 何を求めているか
の生の声を聞くには絶好の手段です。Webファンミーティングは、対面での顧客接点が減少し、ニーズが見えづらくなる状況を解消します。
まだまだ運営面でクリアにすべき課題もありますが、少しずつ成功事例が増えてきている状況です。Webファンミーティングをファンの声を集める接点として有効活用されるスポーツクラブは、今後増えていくことが見込まれます。
まとめ
withコロナ時代のスポーツ業界の変化にはポジティブな面も期待できます。
- スポーツの楽しみ方・応援の仕方の新しいスタイルの確立
- スポーツ観戦への期待・価値の変化
変化に適応することは既存ファンの態度変容に繋がり、新規ファンの獲得にも繋がると考えられます。獲得したファンのロイヤルティーを下げないために今チームができることは
- ファンがチームに対して発信する「応援の気持ち」を、試合会場以外でも受け取れる仕組みを作ること
- 受け取ったファンの声を、ファン向けのサービス提供に活用すること
これらの活動を通じて、双方向のコミュニケーション実現に向けて尽力することです。そのために、今まで以上にファンのデータを重要視し、活用していくことが必要だと考えます。
シナジーマーケティングでは、デジタルを介した双方向のコミュニケーション実現に向けて、CRM施策に取り組むスポーツクラブを支援します。
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※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。