【特別対談】株式会社マクロミル
BtoBで顧客満足度(CS)アンケートを成功させるコツ
企業で顧客満足度調査(CS調査)を「今年から実施する」という方も、「毎年実施している」という方も、次のような課題をお持ちではないでしょうか。
- どのように項目を設計すればよいのかわからない
- 項目数や回答数がどれくらいあればよいのかわからない
- アンケートの結果をどのように活用すればよいのかわからない
- 毎年あまり結果が変わらないので結果をどう見ればよいかわからない
- どのくらいの満足度であればよいのかわからない など
今回は、そんな疑問を解決するべく調査のプロを直撃取材しました。教えてくださるのは、インターネットリサーチの事業で有名な株式会社マクロミルの経営戦略本部 Questant事業部 シニアディレクター 京島 徹さん。そして、インタビュアーはわたくし佐々木です。では、早速スタート!
(※以下、敬称略)
BtoB企業のアンケートは顧客満足度(CS)調査が多い
佐々木 BtoB企業が行う顧客アンケートには、どんな種類がありますか。
京島 1番多いのは「顧客満足度調査(CS調査)」です。だいたい6~7割は、CS調査です。あとの1~2割は、新製品を出すまえに『その製品を使ってみたいかどうか』みたいなことをヒアリングする「新製品の需要性評価調査」と呼ばれるもの、残りはキャンペーンで利用するWebフォームとしての活用や、従業員調査も最近増えてきています。
佐々木 やはりCS調査が多いんですね。どれくらいの企業規模の会社が実施しているのでしょうか。
京島 上場しているくらいの規模の企業が多いです。中小企業では、まだあまり実施されていないと感じます。直接営業担当が聞きに行ってお客様の状況がしっかり把握できる範囲なのかもしれないし、定量化して何かしようというマーケティング的なところまでなかなか手が回らないのかもしれませんね。
成功させるためのポイントは「計画」と「分析の視点」
佐々木 CS調査を進めるにあたって重要なポイントは?
京島 ポイントは2つです。まずひとつは「調査の全体の計画」。これが肝です。その上で、もうひとつは「分析の視点」。アンケートで回収したデータをどのように見るか、ということを明確にしておくことが大切です。
調査を行う担当者が他部署から異動してきたばかりだとか、今年初めて調査に関わる、というのもよくあることなので、この2つのポイントを考慮せず「とりあえずやってみよう」とやり始めてしまうと、あとで「あれ?この回答データ何に使うんだっけ?」みたいなことになり、アンケート結果が活用できないまま終わってしまう。意外かもしれませんが、こういうことはよくあります(笑)
佐々木 あとは、回収したアンケート結果を活用しようと思うと、他部署に何かお願いすることが多くなって、あちこち社内を調整する必要が出てきますよね。商品について聞いたことは商品開発部、営業について聞いた結果は営業部、サポートについて聞いた結果は……。みたいな(笑)
京島 そう。ステークホルダーがすごく多くなるんです。なので、きちんと「計画する」ことが大切なんです。
CS調査という社内プロジェクトを「計画する」
京島 CS調査に限らず、リサーチの進め方としておすすめしている手順をプロセス順にご紹介すると、
のようになります。ざっくり言ってしまうと、これらをあらかじめ具体化しておくのが「計画」です。
まずは、目的と課題の整理。これを明確にすると、これ以外の手順をスムーズに進められます。目的が明確だと対象者を誰にするのか、その人たちに聞くべき内容は何かが、おのずと出てくるはずです。
また、先ほどのように、CS調査は社内のいろんな利害関係者が出てくることになるので、ある程度発言権のある人をリーダーに据えたり、「CS向上プロジェクトをこの人を中心にして進めます」と宣言したりという「推進体制」についても計画が必要です。
設問数などもあらかじめ決めておくといいですね。そうすれば、各部署から言われるがまま調査票に設問を追加してしまい最終的に80~90問のアンケートになってしまう、みたいなことも避けられます。調査票を作り始めるまえに、どんな推進体制で進めるか、実施方法は具体的にどうするか、みたいなところも含めて「計画する」ことがとても重要です。
設問数は15が理想、20~30が平均値
佐々木 ちなみに、設問数はどれくらいがよいのでしょうか。
京島 一般的にマクロミルで推奨している調査ボリュームは、15問ぐらいです。アンケートに回答することにあまり抵抗のないマクロミルのモニタを対象とした調査でも、質問数は30問以内、回答時間は15分以内を推奨しています。ですので、対象がアンケート慣れしていない可能性が高いCS調査の場合では、やはり15~20問の設問数にとどめるのが理想的ですね。
佐々木 15って少ないですね!弊社のCS調査の設問数はもっと多いです。
京島 しかし、15問を超えると複数選択の設問に関して明らかにチェック数が少なくなるなど、回答のクオリティー低下に関する実証データがあるんです。さらに、設問数が多ければ多いほど回答率も下がってしまいますし、クレームが発生してしまう可能性も高くなります。
企業がCS調査をやる場合そのボリュームに収まらないケースがよくあるので、実質はそこから設問数が少し増えて20~30問くらいのボリュームが平均的な数字になると思います。
設問は「定点的に聞く」「スポット的に聞く」の2種類で構成する
佐々木 どういう設問を入れるのがよいのでしょうか。
京島 種類は、大きく2つにわけられます。まずは「定点的に聞く設問」。毎回質問の内容や選択肢を変えず、経年で推移を追えるような設問のことです。もうひとつは「スポットで聞く設問」。その年に出した新サービスや、その時々に行っている施策について、などがこれにあたります。
「定点的に聞く設問」というのは、どの業種でもほぼ共通です。利用しているサービスは何か、あとは、総合満足度や、営業/サービス/価格についてなどKPIになるような項目ごとの満足度をいくつか。これの評価を「満足/やや満足/普通/やや不満/不満」の5段階で聞くというのが、一般的に「定点的に聞く項目」になるかと思います。マトリクス型にまとめると、より答えやすくなると思います。
あとは、その理由を深掘りしていく。たとえば、1問目で総合満足度を5段階で聞いて、その次に「総合満足度についてなぜそう思いましたか?」みたいにブレークダウンしていきます。
佐々木 深掘りは必須ですか?
京島 すべての設問に対して必須ということではありませんが、基本的に調査を行う際には仮説を持って始めるケースがほとんどだと思うので、それにあわせた検証のための深堀り設問は必要になりますね。
アンケートの集計・分析結果をもとに実施する対策やタスクが特になければ、まずは最初のうちは各項目の満足度だけでもしっかりとっておいて、それぞれどの程度のスコアがあるのかを見るレベルでいいと思います。CS調査は企業の健康診断みたいなものですから、それだけでも十分意味がありますよ。
佐々木 最初に目的と課題を整理し、きちんと仮説を立てておけば、それに応じてとらなければいけない設問が自然に出てくる。各設問の必須・任意も、それに応じて判断するということですね。
「分析の視点」をあらかじめ調査票に盛り込んでおく
佐々木 先ほど、CS調査を進めるにあたってのポイントとして「計画」と「分析の視点」という2つを挙げておられましたが、「分析の視点」というのは具体的にどういうことでしょうか。
京島 「分析の視点」というのは、相対的に、何と比較してそのアンケートの結果を評価するか、ということですね。どうやって比べるのか、比べる視点を考えるのが大事です。
佐々木 それは具体的には、「経年比較」や「他社・競合比較」みたいな観点でしょうか。
京島 そうですね。「分析の視点」を考えるときに念頭に置いておきたいポイントが3つあります。それは、<対象(市場環境)><顧客情報><要因分析>です。
- 対象(市場環境)
いま挙げられた「経年比較」や「競合比較」は、<対象(市場環境)>が分析の軸になっています。経年比較の対象は「自社の顧客」のみですが、自社の顧客のなかにも「利用年数の長いヘビーユーザー」や「利用開始したばかりのライトなユーザー」もいる。単純な昨対比だけでなく、その人たち同士のアンケート回答を比較した場合、どんなことが見えるか。
- 競合比較
また、市場環境を考慮すると、自社の顧客だけでなく「競合他社の顧客」、「そのサービスを利用していない人」もいる。競合比較は、他社との比較なのでより客観的な比較分析ができます - 顧客情報
<顧客情報>もこれに似ていますが、もう少し細かい。一般的な属性情報や、利用している製品、利用頻度や会社規模などのデータを軸にして、回答データを分析できます。たとえば、利用頻度が低い顧客の満足度より利用頻度の高い顧客の満足度が低い場合、問題ですよね。これは<要因分析>=理由を深掘りする必要があります。
佐々木 その3つのポイントを念頭において、できる限り競合調査のような「相対的な比較」が可能になる対象や設問を設定する。そこで何らかの差が出てきたら、それに応じて必要なアクションをとる、というところまでを「計画」しておく必要がありますね。
京島 そうですね。しかし、ニッチな商売をしていたり事業ドメインやサービスが複雑であったりする場合、競合の定義そのものが難しいことがあります。そうなると、仮にアンケートをしてもあまり回収できない可能性もあるので、このような場合は、自社顧客の回答のみの経年比較だけでもかまいません。あくまで、企業の健康診断としてCS調査を行い、病気が見つかれば治すためのアクションをすればいい。
おそらく驚きのある結果は出ないです。去年とそんなに大きく変わらないことも多い、むしろ大きく変わったら異常事態で、急に大きく下がってたり上がったりしていた場合は、仮説設定をした自社のお客様や市場に対する肌感覚そのものがずれている、ということではないでしょうか。
佐々木 御社でCS調査を行う場合、どのように仮説立てされているのでしょうか。
京島 弊社には、CS向上委員会があります。彼らは、CS調査を企画・制作・レポーティングを行う委員会です。ですので、彼らが営業のマネージャーや現場の人間にヒアリングをし、仮説を立て、それを調査票に落とし込みます。
佐々木 先ほど、<顧客情報>という切り口を分析の視点として挙げられていましたが、アンケート結果は、どのような形で分析されるのでしょうか。
京島 業界や売り上げなどをもとにした顧客セグメントとアンケートの回答内容をかけあわせて分析しております。たとえば、売り上げが高い企業さまの結果が、全体やほかのセグメントと比べてどうだったか、といった視点での分析のイメージですね。
最低でも分析するセグメントごとに100サンプル以上の回答数を確保
佐々木 回答数についてはいかがでしょう。一般的に全体に対して何割くらいの回答が、もしくは最低どのくらいの回答数がCS調査には必要なのでしょうか。
京島 BtoBの向けの調査の場合、きちんとお客様ごとに営業担当が割り振られているようなサービスであれば、だいたい半分以上回収できるのではないでしょうか。高くても8割、低くても3割くらい。営業とお客様とのコミュニケーションの密度によって数字は大きく変わってくると思います。
回答数で言うと、最低でも100サンプルないと分析そのものが難しくなるので、それ以上は欲しい。正確に言うと、分析するセグメントごとに最低50~100サンプルはあった方がいいですね。
たとえば、自社顧客の総合満足度に関する経年比較をヘビーユーザー/ミドル/新規の3セグメントで見るとすると、各セグメント50~100ずつ、全部で300~400くらいは欲しいです。データを見る上で、これくらいはないと分析結果に大きな偏りが出てしまいます。
定期的に実施することに意味がある
佐々木 一通りお伺いしていると、やはり最初の目的・ゴール設定・仮説設定が肝ですね。その点で、何かアドバイスいただけませんでしょうか。
京島 CS調査の一番の目的は「実態把握」です。先ほどCS調査は企業の健康診断だと言いましたが、それでたとえるなら、まず病気があるかないかを検査するようなものですね。
たまに「売り上げを上がること」をゴールと考える人もいますが、それは病気かどうかもわからないまま手術して完治するところまでを考えるようなものです。そうではなく、まずは自社の強み弱みをしっかり把握するというのがひとつのゴールだと認識した方がいい。それ以上はあまり求め過ぎない方がいいです。
佐々木 確かに、初めてCS調査をやる場合とかだと「それでいくら売り上げが上がるんだ」とか言われそうですね。
京島 けれど、実態把握がきちんとできれば、改善点を見つけやすくなります。また、回答データや分析結果をもとにして、その対策の優先順位もつけられる。実際に売り上げにつながるための具体的な施策も立案できるようになります。それは、一度やってみてもらえれば実感してもらえると思います。
佐々木 そういう意味でも、安くてかんたんにアンケートができるシステムは担当者にとってはありがたいですね。
京島 ちなみに、CS調査の結果を従業員の評価に取り入れることで、従業員のCSに対するマインドを高めている企業も結構ありますよ。そういう目的というか、使い方もある。AppleやAmazon、Zapposなどの外資系企業の事例は有名です。
NPS(Net Promoter Score)という指標がよく使われますが、おそらく外資系だと世界標準で比較できる指標が必要になるからでしょうね。また、代表的な企業のNPSスコアは流通しているので、わざわざ自社で競合調査をしなくても2次データで比較できる。それも採用するメリットのひとつなんだろうなと思います。
マクロミルのQuestantは低価格でかんたんにアンケートが作れるシステムですので、NPSを採用して定期的にCS調査を実施されている大企業さまから、初めて実施する会社さままで、さまざまなケースでおすすめですよ!
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なる場合があります。ご了承ください。
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