スコアリングでできることできないこと
マーケティングにおけるスコアリングについて考えてみます。まずスコアとは何なのか、次になぜスコアを付けるのかを確認します。
マーケティングにおけるスコア
「マーケティング スコア」で検索をかけると、リード(見込み客)に対するスコアリング、が多くヒットします。BANTなど、購買してくれる可能性の高いリードに高いスコアを付けるというものです。
他にもRFMスコアという表現も見かけます。これは過去の購買実績を元に、企業にとって優良な顧客を区別するためのものです。
購買と直接関係しないところでは、ソーシャルメディアにおける消費者の影響力を算出するクラウトスコアも有名です。また、企業のマーケティング活動の良し悪しを採点するスコアというものもあるようです。
今回は最後のスコアについては除外します。つまり、企業が消費者を採点する方法という意味のスコアリングを扱います。また、スコアではなく、メトリクス(metric: 測定基準)という言い方をすることもあります。「マーケティング・メトリクス」(※)によると、企業が消費者を採点するメトリクスには、財布シェア、ロイヤルティー、顧客満足、顧客生涯価値などがあります。
私の解釈では、スコアはメトリクスの一種ですが、複数のメトリクスをまとめた総合評価指標、というニュアンスがあるように思います。以下では、消費者を採点するメトリクスを全てスコアと呼ぶことにします。
※参考文献
マーケティング・メトリクス マーケティング成果の測定方法; ポール・W・ファリス
スコアは何を表わすか
消費者にスコアを付けることにはどんな意味があるでしょうか。一般的に、ものごとを数で表わすことによって、数の大小を比較して順序を付けることができるのと、数どうしを計算することができるようになります。
マーケティングに置き換えると、順序を付けるということは消費者に対する何らかの施策の優先順位を決めるということに相当します。または、ある閾値を設定してそれより大きいスコアを持つ顧客を対象に施策を打つということもあります。
スコアどうしを計算したいという場合、これは顧客のグループどうしを比較するのにスコアの合計を使うとか、ある施策にかける予算を決定する式にスコアを入れるという状況が考えられます。注意しなければならないのは、順序を付けることはいつでもできるのに対し、計算する、つまり足したり引いたり比を取ったりするのはいつでもできるわけではないという点です。
計算できないスコアの例を挙げてみると、これは意外に多く、BANT、RFM(例えば一番最近の購入者に5を当てはめるなどして数値化したもの)など、大抵のものが当てはまります。
具体的にBANTスコアで考えてみましょう。
スコアが10点のグループと5点のグループがいるとします。5点のグループが10点のグループの2倍の人数だったとして、これらグループから成約する見込み件数は同じと言えるでしょうか?
つまり、10点が5点の2倍価値があるかというと、必ずしもそうではないと思います。
逆に、計算できるスコアは解約リスク、顧客生涯価値といったものです。
この2種類の違いを厳密に表現するのは難しいですが、人工的な指標は数字の大きさが持つ意味を解釈できないのでお互いを計算した結果も解釈できない。確率や金額のように数字の大きさが持つ意味を解釈できるものどうしなら計算した結果も解釈することができる。ということが言えると思います。
なお、計算できないスコアについては、統計的なモデルに当てはめることで計算可能な確率に置き換えることが可能です。BANTでいうと、スコアが10点となるようなリードの成約見込み確率を計算するモデルがあれば良いということです。
スコアを使ってできること
上2つは大小の比較によってできますが、下2つはスコアどうしを計算できる必要があります。
- 顧客をスコアの順に並べて優先度を付ける[優先度付け]
- 基準となるスコアを設定し、それ以上またはそれ以下の顧客を選別する[セグメント化]
- 顧客全体のスコアを集計し、マーケティング施策のパフォーマンスを評価する[測定]
- 別のメトリクスと組み合わせて計画を立てるのに使う[計画と最適化]
スコアに対する誤った期待
消費者を採点する多くのスコアは、大小を比較するスコアなので、先に述べた優先度付けとセグメント化のために使います。優先度付けもその後で上位何割かを選別するための手順だと考えると、ほとんどセグメント化のためと言ってよいでしょう。
ここで問題なのは、スコアだけではセグメントは決まらないということです。
必ずセグメントを分ける意図を持ってから、スコアとそれに基づくセグメント基準を設計するという順番になります。そして、大抵の場合、スコアとセグメント基準は最初から機能することはなく、運用しながら改善していくという過程が必要となります。
ところが意外とこの二つは明確に理解されておらず、以下のように誤った期待を持たれることがあるように思います。
- セグメントの必要はないが、スコアを見れば消費者のことが理解できるようになる
- どんなマーケティング組織、消費者においても当てはまるスコアとセグメント基準がある
- データがなくても最適なスコアとセグメント基準が決まる
スコアを設計する手順
以上の考察から、スコアを適切に設計することもできるはずです。以下がその流れです。
# | 手順 | 例 |
---|---|---|
1 | セグメントが必要な状況を発見する | リードが多くなってきて全部をフォロー出来なくなったので、確度の高いもののみセールスに渡したい。 |
2 | セグメントの要件、つまり何をスコアとし、どのような基準でセグメント化するかを決める | 毎月[半年以内に成約見込みの高い]リード[上位100件程度]を抽出したい |
3 | スコアを計算するための情報(変数)を探す | 企業規模、業種、担当者の職階とWEBアクセス履歴を知ることが出来る。 |
4 | a)過去の実績がある場合:データマイニングを行い、スコアと変数の関係を表わす統計的なモデルを作成する | 適当なツールを使って、半年以内の成約見込み確率を、{企業規模、業種、担当者の職階、サイト訪問回数}から予測するモデルを構築する。 |
b)過去の実績が無い場合:ある仮説に基づいて、変数からスコアを導く計算ルールを決定する | 企業規模が従業員1000人以上なら10点といったようにリードが持つ条件とその重みを適当に設定し足し合わせたものをスコアとする。 | |
5 | できあがったセグメントを検証する | スコアの上位リードとそうでないリードの両方に対し、その後の成約状況を追跡する。 |
6 | a)セグメントの効果が確認出来たら、実際の運用を回しつつデータを取る | セグメントに含まれるリードからの成約率から、成約数の期待値が目標を下回らないことを確認出来たので、セグメントに含まれるリードのみをセールスに渡すことにした。 |
b)セグメントの効果が期待する程ではなかった場合、2に戻ってやり直す | 成約率が期待の50%程度だったので、セールスに渡すリードを上位200件にした。 |
まとめ
マーケティングにおける消費者のスコアリングは、ほとんどがセグメント化のためだと考えられます。そのため、スコアを設計するにはセグメント化の目的を明確にすることが必要です。
良いスコアはデータに基づいて検証されるべきですが、データがない段階では担当者の経験に基づくルールが最善策かも知れません。
※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。