マーケティングオートメーションはEメールマーケティングの自動化だけではない
BtoB企業にこそ適切なデジタルマーケティングが必要と叫ばれ始め、デジタルマーケティングに取り組む企業が数年ほど前から本格的に増加してきました。ガートナーの調査によれば、2013年専任の最高マーケティング責任者(CMO)が存在する企業の割合は9.7%でしたが、2015年には17.5%まで拡大し、より多くの企業が本格的にマーケティング活動に力を入れ始めたことをうかがえます。
実際にここ数年は毎年新しいマーケティング用語が生まれ、その1つであるマーケティングオートメーションの流行もありました。マーケティングオートメーションに関する特集を組む専門誌やオンラインメディアなども増え、マーケティングオートメーションも広く普及してきたように見ることもできます。
一方で、よく聞かれる誤解も存在しています。なんだかよくわからないけども、マーケティングオートメーションはEメールの送信を自動化してくれるのでは….?という声。また、導入したけどもいまいち使いこなしている気がしない….という声。前回の記事では、そういった誤解が多くあるためマーケティングオートメーションの定義とメリットを解説させていただきました。
今回のブログでは、多くの方達が聞き慣れた(と思われる)「見込客の創出や獲得」と「見込客の育成」という視点から、マーケティングオートメーションがカバーする範囲はEメールだけではないということ、そして導入する前に考えるべきことをお伝えします。
<目次>
マーケティングオートメーションの機能が可能にする、見込獲得から見込育成の流れ
多様な機能を持つマーケティングオートメーションゆえ使うべき機能の優先順位がつけづらく、導入検討の際に、自身が頻度高く行う活動の自動化に気を取られがちになることが多いです。例えば、Eメールマーケティングの自動化、セミナー集客後の見込客を確度によって自動的に選別したい、などです。
マーケティング活動は本来、”点”ではなくコンテキストを考慮し”線”や”面”で行わないと効果は見込ません。当然ですが、マーケティングオートメーションの導入と活用にも同じことが言えます。
上の図は、シナジーマーケティングさんが作成されたマーケティング活動と営業活動の区分をわかりやすく解説した図です。こちらの図をお借りして説明をさせていただくと、”線”や”面”で捉えることの重要性を理解しやすいかもしれません。
多くのマーケティングオートメーションは、上記図の中間層にあたる「見込育成」と「選別」の段階に対して強みを持っています。つまり、見込創出などの前段階が安定していることが前提のツールで、「有り余るほど有望な見込客を毎月獲得できている」場合に向いているともいうことができます。
上記の様な中間層に強みを持つ一方で、見込客創出に強みを持っているツールなども存在します。前述した通り、多くの企業は十分な見込客の獲得を行うことが残念ながらできていませんので、そういった企業のマーケティング担当者こそ、見込創出に注力することも忘れないようにしなくてはいけません。
では、見込創出と育成という観点でマーケティングオートメーションを用いるとどういったことが可能になるのでしょうか。
1. 見込創出(リードジェネレーション)
この見込創出は、企業の成長を支える土壌を耕すためのマーケティング活動と例えることができます。
植物を育てることを企業の成長と同じ様に想像してみてください。植物を育てるには、まずは土地を確保する必要があります。そして、種に最適な栄養たっぷりの腐葉土が必要になり、ようやく初めて種を土壌へと持ち込むことができます。
※お客様を「作物や種」にたとえることに対する是非はあるかと思います。ここでは横に置かせていただきお話を進めさせていただければと思います。
デジタルマーケティングを活用し企業の成長を行う場合、私たちマーケティング担当者は最初に土地となる適切なWebサイトを持ち合わせる必要があります。そして、種を育てる栄養を含んだWebコンテンツをブログやダウンロードコンテンツとして準備する必要があります。
これらのことを達成するには、製品カタログのようなWebサイトではなく、潜在見込み客に対して最適なWebサイトを持ち合わせているのか、自社の成長を促す種となる潜在顧客向けのコンテンツが存在するのかなど、理想の見込客を惹きつけるため最適化がされた土壌を持たないといけません。
例えばこの段階では、あなたの企業名や製品サービスを知らない人へメッセージを届けるための機能が力を発揮します。ソーシャルメディア配信機能、Webサイトへ訪問した人に最適化されたコンテンツを出し分けするWebサイト構築機能、多くのお役立ちコンテンツを制作配信するブログ機能、専門知識がなくても行うことができるSEO最適化機能などです。
この段階の土壌ができあがってから、Eメールマーケティングの自動化やリードスコアリングなどのマーケティングオートメーションの一部機能を活用できることが可能になります。
2. 見込育成(リードナーチャリング)
この段階は、企業の成長を促す種を大切に育て、選定に入るマーケティング活動ということができます。種を育てるためには、その状態に最適な量の水や肥料を適切なタイミングで与える必要があります。
Webサイトやブログなどを適切に制作して土壌を整え種を植えつけた後は、見込客にとって大切な栄養(水や肥料)となるブログ、eBook、動画、セミナー案内などのコンテンツをEメールなどで自動配信を行うことができるようになります。そして、その状態を見決めるためにリードスコアリングなどで見込客の状態を把握し、場合によって選定をして優先順位をつけていきます。
多くの方達がマーケティングオートメーションの導入で失敗してしまうのは、最適な土壌を作らずに種を植えてしまい、水や肥料をあげ過ぎ、無理に選定に入り、収穫にかかろうとしてしまうところにあります。
見込客獲得の土壌ができていない状態でEメールの自動配信を行い、リードスコアリングやリストの自動管理をマーケティングオートメーションを用いて進めるということは、芽を出してきた作物に化学肥料や成長促進剤を無理やり与えて成長を強引に早めようとしている状態に近しいものということができるかもしれません。それでは中長期的な成果は得られず、大切な芽を引き抜いてしまっている状態です。
もちろん、社内事情などでEメールマーケティングやリードスコアリングなど、部分的な機能を自動化するためにマーケティングオートメーションを進めることも可能です。ですが、見込創出をしている広告担当やコンテンツ制作担当、ソーシャル担当などと緊密に連携をし、見込創出の流れをさらに強化する必要がマーケティングオートメーション導入には必須です。
マーケティングオートメーション導入のためのプロセスと、気をつけるべきこと
マーケティングオートメーションの導入は見込創出、育成、選出など”線”や”面”でマーケティング活動を行なっていることが必要で、自社の課題や戦略に沿って最適なツールを選ぶことが重要です。
では、ツール選定に当たって事前に検討しなくてはいけないことは何か。セキュリティなどの要素も存在しますが、今回の運用を行うに当たって必要な要素に絞ってお伝えいたします。
目的設定と社内人材の確保
ほとんどの企業が売り上げ目標を持っているのと同様に、マーケティング部門も明確なゴール設定を持たないといけません。マーケティング活動を成功へ導くためには、SMARTゴールの設定が不可欠です。
SMARTゴール
- S(Specifit:定量的に明確に)
- M(Measuable:数値化可能)
- A(Attainable:実現可能)
- R(Relebant:ビジネスのゴールに関連性がある)
- T(Timely:期間の設定)
例えば、
営業チームの2017年6月までの売り上げ目標を達成するには顧客数が162必要
→ Webサイトのコンバージョン率から逆算すると、Webサイト訪問者が月間20,0000件必要
などの計算を、見込獲得、見込育成、選出の段階で設定する必要があります。
仮に、見込創出の段階の指標の1つとなりうる”ブログ購読者”などの数字が足りない場合は、その能力に特化した人材や、外注先企業を確保する必要がでてくるということです。
コンバージョンがデジタルマーケティング活動のどこで発生しているか
多くのBtoB企業はセミナーや展示会に大きな力を割いています。有効な人間関係を築けるなどビジネスに大きな影響を与える一方、コンバージョンポイントがわかりづらいという課題もあります。
その様な場合でも、一旦CRMなどに名刺情報などのデータを入れることによって、メルアドのデータなどがCookie情報と紐付けされ、オンラインでの活動が可視化されます。シナジーマーケティングさんの製品やHubSpotなどが提供してるツールを用いることで分析することが可能になります。
この様なツールを用いて、アクセスログやセミナーなどのオフラインのマーケティング活動がどれくらいの”問合わせ”や”資料ダウンロード”を生み出しているか把握しましょう。
もし、十分な数のコンバージョンが発生していない場合は、ペルソナやカスタマージャーニーを作成し、適切なコンテンツの数を増やす必要があるかもしれません。そのような場合、Webサイトに”問合わせはこちら”というページは存在するが、まだ購買を検討してい見込客に対するコンテンツが存在していないというケースが多いです。
ペルソナやカスタマージャーニーを資料に落とし込み、どのようなコンテンツが必要になるかを調べ、適切なコンバージョンポイントがどこにあるべきなのかを調べましょう。ペルソナ、カスタマージャーニーについてはシナジーマーケティングさんのこちらの記事もわかりやすいですね!
ツールの選定
ここまでくれば、自社が行うべき課題が明確になります。兼用しているマーケティングオートメーションの機能が弱点を強化してくれるのか、またその前段階である見込創出が安定的に行えている状態にすることも必要です。
マーケティングオートメーションは、大規模パッケージであるERPなどと比較して安価なツールです。各企業も幅広い価格プランを持ち合わせているので、最小プランを選択すれば費用面では導入は行いやすいツールです。だからこそ、明確なゴールや課題が明確化していないと導入はうまくいきません。(本当は関係ない)機能満載のツールで割安だから、という理由でツールを選ぶことは本当にオススメしません。
そのテクノロジーを全面的に活用するためには、マーケティング担当者や、ウェブ担当者、さらには営業担当者の方達の多大な協力と自社努力が絶対に必要です。筆者の所属するHubSpot Japanの日本語公式ブログでも、さまざまなマーケティングノウハウを提供しているので、ぜひお時間ある際にご覧いただければと思います。
関連情報
※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。