展示会はマーケティングに必要か?
「来期も展示会って必要ですか?」
年度末を迎え、次年度のマーケティング計画を立案する企業も多いこの時期、よく議題になるテーマのひとつです。かくいう私も、前職から展示会の運営に携わることが多いのですが、この手の質問を毎年1度は聞いているような気がします。
というわけで、今回は「展示会は、マーケティングに必要か?」について考えてみたいと思います。イベントについての具体的なノウハウや気づきも発信していきたいのですが、まずは私のスタンスを知っていただくことが必要か、と考えました。
では、私はその問いにどう答えるのか。答えは「わかりません」です。もちろん、その場ではもっと話しますが、回答としてはだいたい「わからない」「判断できない」と答える場合が多いです。
展示会は販促手法のひとつにすぎない
と言うのも、展示会は「販促手法のひとつ」にすぎないからです。文章にすると当たり前のことですが、意識的に実行されているケースは少ないと感じています。
自社のマーケティングにおいて、「展示会が必要かどうか」という判断は、製品や市場、ターゲットを考慮した全社的なマーケティング戦略の中でなされるべきものです(もちろん予算など個々の企業に事情があることは重々承知していますが、今回は純粋に「マーケティング手法としての展示会」の是非について論じます)。私は、展示会をマーケティング手法の観点のみから判断することは、非常に危険なことだと考えます。
例えば、あなたの会社が新サービスの提供を開始したとします。新サービスは、まったく新しい市場を狙って企画・開発されており、お客様になりそうな見込顧客リストは社内にほとんど存在していません。初年度の販売目標はすでに決定されていて、目標達成には早期に販売体制を立ち上げねばなりません。マーケティング部門は、見込顧客を大量に獲得しなければなりません。
このような場合、展示会を活用すれば2,3日で数千件単位の見込顧客リストを獲得することができます。新サービスを提供開始するタイミングに合わせ、ターゲットとなる展示会に出展し、見込顧客リストを準備することで、ロスなくサービス販売を開始することができます。
マーケティング戦略が展示会を決める
あなたの会社の顧客情報と提供する商品やサービスの市場を照らし合わせてみて、保有する顧客情報が少ない場合には展示会は有効なマーケティング手法になりえます。展示会は、業界や業種などのカテゴリによって企画、開催されるイベントです。ターゲットが明確であればあるほど、出展すべき展示会は限定されます。さらに、商品やサービスの販売フローが想定されていれば、展示会場のブースにおける目標と、達成するための方法も自ずと決まってくるでしょう。
例えば、過酷な製造現場における装置はリピート購買が多いことが想定されます。その場合には、ブースで確度の高い見込顧客を発見するよりも、大量にリストを収集した方が費用対効果は高いと思われます。逆に、大型装置のように1度導入してしまうとなかなか次の導入機会が訪れない場合には、確度の高い顧客を発見しブースで商談までを行うことが望ましいでしょう。
全体最適から展示会を考える
マーケティング戦略なしに展示会の是非を判断することは、結局のところ部分最適に過ぎません。部分最適として、手法そのものをブラッシュアップすることはもちろん必要です。しかし、「必要かどうか?」という問いに答えるには、会社のマーケティング戦略を前提とした、全体最適の観点から考えなければなりません。それなしでは、「コストが大きい」「成果が出ていない」というような、誰にもわかりやすい問題点に議論は終始するだけになってしまうでしょう。
「来期も展示会って必要ですか?」という問いは、まず来期のマーケティング戦略が質問者と回答者の間に共通した認識がなければ、議論が発展しないのではないでしょうか。とは言うものの、私もそこまで手をつけることができているわけではありません。部分最適の手法だけが蓄積されている状態ですが、次回はそのあたりをご紹介していきたいと思います。
成果につながる展示会の鍵は、“展示会後のマーケティング”にある!
展示会後のマーケティング10のポイント
展示会の企画から終了後のフォローまでの一連のプロセスと、その実現に必要なポイントを10個にまとめました。
初めて展示会運営に携わる方には一連の流れを学べる入門書として、展示会運営に課題を感じている方々には解決の糸口をつかむための手引き書として活用いただけます。
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