カスタマージャーニーではペルソナ設定が重要!具体的な手順やポイント、ペルソナ設定で活用すべきシステムについて解説
カスタマージャーニーとは、顧客が自社サービスを認知してから継続購入するまでのプロセスを「旅(ジャーニー)」に例えたものです。各プロセスにおける顧客の行動や心理、タッチポイントなどを詳細に落とし込むことで、認知される機会の把握やフェーズに合わせた施策の実行などに役立ちます。
このカスタマージャーニーを考える際は、ペルソナの設定が不可欠です。ペルソナを設定し、詳細にイメージできるレベルまで自社の顧客を落とし込むことで、より実態に近いカスタマージャーニーを作成できます。
本記事では、カスタマージャーニーにおけるペルソナの重要性や設定手順、ポイントなどを解説します。
<目次>
カスタマージャーニーとは?
「カスタマージャーニー」とは、顧客が自社商品やサービスを認知して購入し、ファン化するまでのプロセスを表したものです。一連のプロセスにおける具体的な顧客行動や心理の変化を「旅(ジャーニー)」に例えています。
このカスタマージャーニーを時系列で可視化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。プロセスの可視化によって、具体的に「どこで認知される機会が多いのか?」「どんな心理変化があって継続購入するのか?」などの仮説を考えやすくなり、より効果的なマーケティング施策や顧客へのアプローチ方法を実行できます。
ペルソナとは?
上記のカスタマージャーニーマップを設定する際に重要なものがペルソナです。「ペルソナ」とは、自社サービスの顧客となりうる人物像を細かく落とし込んだものです。主に以下のような項目を設定します。
BtoC |
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BtoB |
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上記はあくまでも一例であり、自社サービスの種類や顧客の業種などによって異なります。
ターゲットとの違い
ターゲットとペルソナの違いは「ユーザー設定の深掘り度合い」です。
ターゲットは、例えば「40代・女性・都内住み・事務職」というように大枠で設定します。
一方ペルソナでは、上記のように「ひとり(1社)の特定顧客が思い浮かぶレベル」まで落とし込むことが基本です。特定顧客が思い浮かぶレベルまでさまざまな項目を深掘りすることで、より適切なマーケティング施策やアプローチ方法を考えられるようになります。
カスタマージャーニーを設定する際にペルソナが重要な理由
カスタマージャーニーを考える上で、上記のペルソナが重要な理由は以下の2つです。
- より顧客の実態に沿ったカスタマージャーニーを考えられる
- 関係者間で詳細なユーザー像を共有し正しくカスタマージャーニーマップを作成できる
より顧客の実態に沿ったカスタマージャーニーを考えられる
カスタマージャーニーは、「顧客がサービスを認知する〜ファン化して継続購入する」という一連の流れを明確にしたものです。そのためイメージが鮮明であるほど、以下のように顧客の行動や考え、タッチポイントなどを具体的に設定できます。
- この性格の顧客ならこのタイミングで購入するだろう
- この悩みを解消できれば継続購入する可能性が高まる
- この顧客はこのツールを使ってサービスを認知する機会が多そうだ
現実的な顧客に寄り添ったカスタマージャーニーを考え適切な施策を設計するためにも、最初のペルソナ設定が重要なのです。
関係者間で詳細なユーザー像を共有し正しくカスタマージャーニーマップを作成できる
顧客イメージが曖昧な場合、関係者間での認識に齟齬が生まれ、適切なカスタマージャーニーマップを設計できません。例えば「30代・男性・都内住み・独身」というざっくりした顧客像では、趣味や仕事への価値観、役職、休日の過ごし方など、曖昧な部分を関係者それぞれが自分なりに解釈してしまい、カスタマージャーニーマップの策定や施策の設計段階で食い違いが発生します。
また、企画部門と開発部門で顧客像への解釈に齟齬があれば、完成した製品やサービスのイメージも異なってしまうでしょう。
事前に詳細なペルソナを設定し共有することで、上記のような認識の齟齬を防ぎ関係者間で同じ方向性でカスタマージャーニーマップを作成し、最終的な目標達成に向けて動けます。
ペルソナの具体的な設定手順
ペルソナは具体的に以下の手順で設定しましょう。
- ペルソナ設定に必要な項目を洗い出す
- 事実ベースで情報収集を行う
- 集めた情報を整理して各項目を埋める
- ペルソナが体験するであろうストーリーを考える
1.ペルソナ設定に必要な項目を洗い出す
まずはペルソナ設定に必要な項目を洗い出します。
BtoCの場合は「個人」の顧客にフォーカスした項目を洗い出します。
BtoBの場合は「企業」が顧客となるため、企業自体の情報は必要ですが、具体的に「自社と関わる担当者」をイメージすることも重要です。担当者をイメージすることで、例えば「この担当者にこのメルマガタイトルは刺さるだろうか?」などを判断できます。場合によっては、「企業のペルソナ」「担当者個人のペルソナ」を別々で作成することもオススメです。
上記を踏まえると、業種にもよりますが以下のような項目を設定することが一般的です。
BtoC |
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BtoB |
BtoCの項目(担当者を定める)
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2.事実ベースで情報収集を行う
項目を定めたら、それぞれの内容を埋めていきましょう。項目を埋めるには「事実ベースで情報を集める」ということが重要です。
事実ベースではなく、例えば「現場の従業員から聞いた “◯◯が好きなお客さんが多い印象です” 」という感覚的な内容をもとに情報を埋めると、現実的なペルソナは設定できません。
以下のような方法を活用して「実際の顧客の声や行動」を集め、より現実的な情報を埋めていきましょう。
- 既存顧客や見込み顧客へのアンケート
- 直接顧客と関わる部門へのヒアリング
- 購入した顧客への直接インタビュー
- 自社サイトに訪れた顧客の行動履歴分析
- SNSや口コミサイトにおける自社への書き込み
- 顧客からの問い合わせ履歴の内容
- エスノグラフィー調査(一定期間ユーザーの行動を観察する手法)の実施
上記を通じ事実ベースの情報を集めることで、実際の購入者に近いペルソナを設定できます。
3.集めた情報を整理して各項目を埋める
事実ベースで集めた情報を整理して、各項目を埋めましょう。情報の特徴や属性、行動パターン、共通点を洗い出し、項目と照らし合わせ埋めていきます。
4.ペルソナが体験するであろうストーリーを考える
項目を埋めたら、最後にペルソナのストーリーを考えましょう。大まかに「なぜこのペルソナはサービスに興味を持ったのか?」「何に魅力を感じてファンになってくれたのか?」などを考えておくことで、実際に存在しているかのように考えることができ、カスタマージャーニーを作成する際の参考になります。
適切なペルソナを設定するポイント
適切なペルソナを設定するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 自社の優良顧客をイメージする
- 自社にとって「都合のよい人物像」を設定しないよう意識する
- 複数人で意見を出し合いながら設定していく
- 自社ビジネスの種類(BtoB or BtoC)を意識して項目を設定する
- 複数のペルソナを設定する
自社の優良顧客をイメージする
ペルソナを設定する際は、自社にとっての優良顧客をイメージしましょう。
優良顧客は商品やサービスを継続購入しており、いわば「自社のファン」といえる存在です。継続購入してくれる自社のファンを増やせれば、企業はコストをかけずに安定した利益を生み出せます。「新規顧客の獲得コストは既存顧客のフォローコストの5倍」という1:5の法則からもわかるように、企業にとってリピーターの存在は重要です。
そのため、自社の優良顧客に該当するペルソナをイメージし、企業に長期的な利益をもたらしてくれるユーザーへアプローチできるようにしましょう。
自社にとって「都合のよい人物像」を設定しないよう意識する
ペルソナを設定する際は、以下のように企業側の主観が入りがちです。
- この商品は◯◯向けに作っているからきっと◯◯が買うだろう
- この年代なら××という行動を取るだろう
こうした主観は企業の理想や思い込みであるパターンも多く、実際の顧客像とかけ離れることもあります。とくに開発担当者のように、実際の制作に携わった人物は商品やサービスへの思い入れが強いため、「これは◯◯向けに作ったものだ」というバイアスがかかることも珍しくありません。
しかし、事実ではなく主観にもとづいたペルソナを設定すると、そもそも狙うべき顧客像から外れてしまい、最終的なカスタマージャーニーの方向性も間違えます。
あくまでも、顧客へのインタビューやアンケート、サイトの行動履歴分析などを通じて得た「事実ベースの情報」を基準にペルソナを設定しましょう。
複数人で意見を出し合いながら設定していく
ペルソナに必要な項目の洗い出しや情報分類などを特定の担当者のみで行う場合、どうしても意見や考え方に偏りが生まれます。例えば、「開発者」と「現場で実際に顧客と話して販売する従業員」では、商品に対する意見も異なるでしょう。
さまざまな視点から顧客の情報を出し合うためにも、異なる部署・部門・チームの人物を巻き込みながら、ペルソナ設定を行うことが大切です。
自社ビジネスの種類(BtoB or BtoC)を意識して項目を設定する
ペルソナの設定項目は、大まかに「BtoB or BtoC」で分けて考えましょう。
BtoBの場合は、商談担当者や決裁担当者というように購入に至るまで企業内で複数の人物が関わるため、企業全体としてペルソナを考えることが必要です。
一方でBtoCの場合は、購買者や決裁者が同じ人物であるケースが多いため、比較的シンプルにペルソナを設定できます。
複数のペルソナを設定する
ペルソナは、あくまでも「大勢いる顧客の中のひとり」を想定したものです。さまざまな属性の顧客が購入することもあり得ます。そのため、可能であれば複数のペルソナを設定し、それぞれでカスタマージャーニーマップを作成しましょう。
複数のペルソナごとに施策を策定することで、さまざまな施策を運用・比較し「どのペルソナが最も成果に近いのか?」を判断できます。
とはいえ、あまりペルソナの数が多すぎても、カスタマージャーニーマップの作成や施策運用に時間がかかりすぎてしまいます。2〜3人程度のペルソナを設定して運用するとよいでしょう。
ペルソナを設定したらカスタマージャーニーマップを作成しよう
ペルソナを設定したら、カスタマージャーニーマップを作成しましょう。カスタマージャーニーマップを作成し「認知〜ファン化」までを可視化することで、顧客のフェーズに合わせたマーケティング施策やアプローチを考えやすくなります。
カスタマージャーニーマップは、以下のテンプレートを意識して作成することが一般的です。
それぞれの軸は以下の意味を持ちます。
- 横軸(顧客の検討フェーズ):顧客が自社商品やサービスと出会ってから購買までつながり、最終的に優良顧客となるまでのプロセスを表す。
- 縦軸(顧客の行動や心理):「顧客行動・タッチポイント・顧客心理・マーケティング施策・理想的な顧客体験」の5つを設定して顧客を理解し、適切な施策の構築へつなげる。
具体的な作成手順は以下の通りです。
- ペルソナを設定する
- 検討フェーズを定義する
- 行動・接点・心理を想定する
- マーケティング施策を設定する
- 運用しながら更新を繰り返す
より詳細なカスタマージャーニーマップの作成方法や注意点などについては、以下の記事をご確認ください。
ペルソナおよびカスタマージャーニーマップの作成には顧客情報の活用が必須!
このように、ペルソナをもとにカスタマージャーニーマップを設定することで、顧客の認知からファン化までの流れを正しく理解し、フェーズに合わせ適切な施策を実行できます。とくに、ニーズが多様化し競合商品も多い中で自社サービスを選んでもらうには、顧客の要望にダイレクトに刺さるアプローチの実施が欠かせません。
そして、カスタマージャーニーマップで適切なペルソナを設定するには、顧客情報の活用が必要です。先ほども解説したようにペルソナ設定では、自社サービスの購入可能性がある顧客像を考え、その顧客に響く施策を実行する必要があります。
今まで自社に蓄積した顧客情報を活用することで、具体的に「サービスを購入する顧客の属性・傾向・ニーズ」を把握し、よりリアルなペルソナを設定できるでしょう。
自社のみで顧客情報をもとにペルソナを設定するハードルは高い
とはいえ、実際に顧客情報を活用してペルソナを設定するのは簡単ではありません。
先ほども解説したように、ペルソナ設定では以下のような幅広い情報が必要です。
BtoC |
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---|---|
BtoB |
BtoCの項目(担当者を定める)
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こうした情報の全顧客分を管理するのは簡単ではありません。もし情報を管理できても、「どの情報を活かしてペルソナを設定するの?」「具体的にどんな施策へ活用するの?」などを判断できる知見がなければ、情報の有効活用は難しいでしょう。
ペルソナ設定のためには情報活用が大切!まずは顧客管理のノウハウを学ぼう
ペルソナ設定に活用するための情報をどう集めて、どう分析をするのか。顧客情報管理のノウハウを導入編からご紹介します。
顧客情報を有効活用するならCRMシステムの導入も検討しよう
上記のように、顧客情報を活用してペルソナを設定するハードルは高いです。そのため、可能であれば「CRMシステム」の導入も検討しましょう。
CRMとは「顧客関係管理」を表す言葉です。顧客に価値を提供して満足度を高め、長期的に良好な関係性を継続するための考え方を指します。この考え方の実現に必要なものがCRMシステムです。
CRMシステムでは、顧客に関する情報や行動履歴を一元管理できます。管理できる情報としては、例えば以下が挙げられます。
- 顧客の基本情報(氏名や居住地域、年齢、性別など)
- 購買履歴
- 商談履歴
- 問い合わせ履歴
- 趣味嗜好
- 接客履歴
- サイト上の行動履歴
こうした情報を管理することで、ペルソナ設定に必要な項目を効果的に分析できます。さらに、ペルソナを設定することで、例えば「自社のペルソナに響くステップメールを考えて配信する」といった施策も実行できます。CRMシステムによっては、上記のステップメールを配信できるメールマーケティング機能なども搭載されているため、具体的な施策部分までスムーズに実行できるでしょう。
例えば、弊社が提供している「Synergy!」には、設定したペルソナに対してステップメールやLINEを簡単に配信できる機能が搭載されています。また、「そもそもペルソナやカスタマージャーニーマップの作成方法がわからない」という企業に向けたワークショップも開催しているため、ぜひご活用ください。
設定したペルソナとCRMシステム「Synergy!」を掛け合わせた事例
実際に「Synergy!」を導入しペルソナとCRMシステムを掛け合わた事例として、株式会社竹中工務店様の事例を紹介します。
同社は「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を経営理念に掲げる大手総合建設会社です。東京タワーやあべのハルカスなどを建築しており、業界でもトップクラスの知名度を誇る会社でしょう。
当時の竹中工務店では「技術力をもっと広めるべき」という意見が社内で占めていました。なぜなら、外部への情報発信が不足していた影響で、同社が設計・施工を手掛けたことを認知されていない建築作品が多くあったためです。そのため、積極的・継続的に竹中工務店の技術力を伝えるために、「仕掛け」を作る必要性があると感じていました。
そこで、過去に名刺交換をしていた得意先や学識者などに向けたメールマガジンを発刊することになります。しかし、当時の同社にはメールマーケティングの知見が蓄積されておらず、「何に気を付けて・どんな内容のメールを書くべきか?」などの部分を判断できませんでした。その課題を解消するために、「Synergy!」を導入いただくことになります。
導入時にまず行ったことが「ペルソナの策定」です。漠然としたターゲットを設定してメールを送信しても、顧客には響きません。特定の人を思い「ラブレターを書くイメージ」でメールを送信することで、初めてターゲットに響く施策を実行できます。
より効果的な施策を実行できるよう、同社では以下のように細かいペルソナを設定しました。
普段一番近くで顧客に接している営業担当者も交えつつ決めたこのペルソナをもとに、同社は2015年4月からメールマガジンを発刊。結果として、4通を配信し「開封率30%・クリック率15%前後」という高い成果を残しました。このペルソナ設定は部署を跨いで共有されており、同社で施策を行う際の共通認識として共有されています。
このように、設定したペルソナを全社で共有し実際の施策までつなげられるのは、施策の実行に必要な機能まで搭載されているCRMシステムならではといえるでしょう。
事例の詳細については以下の記事をご確認ください。
適切なペルソナ設定を行いカスタマージャーニーマップの策定に活かそう!
カスタマージャーニーは、顧客が自社サービスを認知し継続購入してくれるまでのプロセスを表したものです。カスタマージャーニーを可視化することで、顧客の行動や心理を深く理解し、より適切なマーケティング施策やアプローチを考えることができます。
このカスタマージャーニーの設定に必要なものが「ペルソナ」です。ペルソナを設定しユーザーを詳細にイメージすることで、より現実的なカスタマージャーニーマップを作成できます。自社の施策の方向性やサービス改善などを考える上で、ペルソナは欠かせない要素といえるでしょう。
ペルソナの設定およびペルソナに合わせた施策を適切に行うためには、CRMシステムの活用も検討することがオススメです。例えば「Synergy!」のように、メールマーケティング機能を活用して設定したペルソナへ適切にアプローチするというのもよいでしょう。
また弊社では、企業の課題を解消するマーケティング戦略構築に向けた「ペルソナやカスタマージャーニーマップの共同作成ワークショップ」にも対応しています。設定したペルソナなどをもとに、CRMシステムを活用した具体的な施策までご提案することも可能です。
少しでもCRMシステムについて気になった方は、まず以下の資料をご覧ください。
Synergyの製品資料はこちら
関連情報
※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。