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世の中の人間は2種類だけではない
-顧客セグメンテーション手法の分類 Vol.2

セグメンテーションの観点

前回は、セグメンテーションを手法の違いに注目して見てきました。今回はセグメンテーションの目的、つまりどのような<観点>で分類するか、について述べたいと思います。

私もいろんな場面でセグメンテーション、セグメントという言葉を聞いたり、使ったりしていたのですが、使う人・場面によって違うことを言っているように感じていました。その違いがわからずにいたところ、参考文献[1]を読んで整理できた気がするのでご紹介したいと思います。

そこでは「誰にアプローチするか」、「何について話すか」という2つの観点が示されていました。また、これらの補足として「とりあえず現状はどうなっているか」という観点についても考えたいと思います。 

とりあえず現状はどうなっているか

新たにCRMの取り組みを始める場合、顧客のことが全くわからないというところからのスタートとなることは多いでしょう。

このとき、とりあえず現状確認の手段として、顧客をセグメンテーションしてみるという選択がなされることがありますが、実はここには観点がないことがおわかりいただけると思います。どんな分け方、切り口をもったらよいか全くわからない状態では、セグメンテーションは上手くいかないことは先に述べたとおりです。

このような状況では、売り場を観察する、同僚の話を聞いてみる、顧客情報や購買履歴を集計せずに眺めてみる、といったアナログな手段から何らかの仮説をつかんでみるのがよいかもしれません。もしくは、次に説明する観点から分析を始めてみましょう。

誰にアプローチするか

まず考えなければならないのは、顧客のうち、誰にアプローチしたらよいかということです。つまり、顧客との関係性の強さ・深さ・重要さの度合いといった尺度で顧客をセグメンテーションすることになります。同時に、顧客がどういった特性を持っているかということを考えないことがポイントです。これは後の「何について話すか」において検討します。

顧客との関係性の強さ・深さ・重要さの度合いといった尺度とは、もう少し具体的に挙げると、購買金額、購買頻度、取引期間、乗り換え/離脱リスク、財布シェア、顧客満足度、顧客生涯価値といったもので、定量的に測れるものです。

こうした定量的な尺度に対するセグメンテーションとは、パレート分析やデシル分析のように、その尺度の数値順に顧客を並べ、ある順位のところで切る、というやり方になります。また、これを複数の尺度で実施し、掛け合わせたセグメントを作ることもできます。代表的なのはRFM分析です。

はじめにこのような観点でセグメントを考える意味は何でしょうか。私は、何から着手したらよいかを考える材料になるからだと思います。例えば、購買金額の分析からいわゆるパレートの法則が確認できたとすると、「ひとまず上位の顧客を維持したい」「逆に下位の顧客を引き上げたい」といった問いが生まれ、さらに「顧客維持のためには彼らにどのようにアプローチすべきか」という課題が見えてきます。

そこで、「何について話すか」という観点のセグメンテーションを始めるのです。こうした思考の流れがないままに、いきなりどのように顧客へアプローチするかを考えるのは難しいのではないでしょうか?

例外としては、既存顧客へのアプローチにうまく差がつけられないというケースがあります。その場合、定量的なセグメンテーションをスキップして「何について話すか」という観点のセグメンテーションに進むこともできます。

何について話すか

「誰にアプローチすべきか」を決めたら、次に「何について話すか」を考える番です。ここでは、すでに対象とする顧客は特定でき、彼らにどのようなアクションをおこしてもらいたいか(主に何かを買ってもらいたいということですが)、という方向性も見えている状態にあります。

「何について話すか」を考えるには、顧客のニーズは何か、顧客を説得するには何が有効か、顧客が受け入れやすいメッセージはどのようなトーンか、ということを理解することが必要です。

これらのいずれも、顧客の心理的変数や購買行動変数が影響します。こうした変数によるセグメンテーションは定性的なものだといえます。

顧客の心理的変数や購買行動変数を知るには、実際に聞いてみるのがよさそうです。つまり、アンケートを取って回答結果をクラスタリングすることでセグメントを決める、という方法が考えられます。また、購買履歴を持っているなら購買パターンを分析するのも良いでしょう。

この目的には潜在クラス分析が使えます。見つけた潜在クラスは購買パターンを示し、顧客の購買行動変数を導くことができます。また、購買パターンの潜在クラスは同時に製品のクラスでもありますから、クラスごとに共通する製品特徴を読み解くことで、顧客のニーズといった心理的変数にも迫ることができるのです。

以上のように、「何について話すか」という観点のセグメンテーションには(ハードまたはソフト)クラスタリング手法が向いています。ということは、セグメント数=クラスタ数を事前に考えておく必要があります。

ここでのセグメント数は、そのまま顧客への施策やメッセージのバリエーションの数ですので、あまり多くのセグメントを作ると大変です。制作や運用のコストからも、最小限にクラスタ数を決めてしまうのが実践的かと思います。同じ事は「誰にアプローチするか」という観点のセグメンテーションにおいてもあてはまります。できるだけシンプルに、しかしシンプルすぎてはいけない、ですね。

まとめ

セグメンテーションのやり方にはいろいろなやり方があることを見てきました。しかし、やり方よりも重要なのは観点、何のためにセグメントが必要か、ということです。そのための顧客セグメンテーションの2つの観点「定量的:誰にアプローチするか」、「定性的:何について話すか」をご紹介しました。もし「このセグメントって何のためだっけ?」という疑問をお持ちでしたら、これら観点を思い出していただければと思います。

参考文献

[1]データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」:デミトリ・マークス,ポール・ブラウン

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※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。

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