満足度が向上!顧客満足度(CS)調査アンケート作成・分析7つのポイント
顧客満足度調査は、アンケートをとるだけでは効果がない?
顧客満足度は、「顧客からの期待と現実のバランス」によって決まります。満足度が高いということは、顧客が購入した商品やサービスに対して「期待していた通り、もしくはそれ以上の価値を感じている」ということです。一方、満足度が低い場合、その顧客は「期待を裏切られた」と感じています。自社の製品やサービスに対して顧客がどう思っているのかを知れるのは、顧客満足度調査を行うメリットのひとつです。
マクロミル様との対談でも顧客満足度調査を「健康診断」に例えられていましたが、これは言い得て妙。健康診断で病気が見つかれば、治療か手術をするように、顧客満足度調査でも、アンケートから正確に現状把握し、そこから見つかった問題対処しなければいけません。さらに、期待を持ってアンケートに回答してくれたお客様の満足度向上のために活動する貴重な機会も得られます。
「成果を出す!アンケート作成業務に必須の7つのポイント」の【事前準備編】/【アンケート作成編】/【レポート編】では、アンケートで成果を出すための基礎知識として業務の工程別にノウハウをご紹介しました。そして今回は、アンケート作成の実践編。テーマは「顧客満足度調査(CS調査)」です。成果につなげるためのおすすめの設問や選択肢のひな形・テンプレートをご紹介します。
(1)顧客満足度調査はただの「アンケート」ではなく「社内プロジェクト」
冒頭でお話したとおり、顧客満足度調査の場合、ただアンケートをとるだけでは意味がありません。アンケート結果をもとにきちんとお客様に対して必要なアクションがとれるように、関係各所をたばねて全社的にプロジェクト化し、目的を共有しながら調査を進めることが必要です。
図1 「【特別対談】株式会社マクロミル BtoBで顧客満足度(CS)アンケートを成功させるコツ」より抜粋
上の図のような行程で進めると、円滑に漏れなくプロジェクトを進行しやすくなります。ちなみに、この「社内プロジェクト化」というのは、図1-③の「調査の推進体制・スケジュール策定」にあたる部分です。
(2)全体の目的とアンケートの役割を考える
では、図1-①にあたる「今回の顧客満足度調査の目的」を整理しましょう。考え方は、【事前準備編】でご紹介した<アンケートの根幹>となる「目的」「ゴール」「目標」と同じです。
顧客満足度のアンケートの作成業務は、「顧客満足度調査という社内プロジェクト」の一部であり、これらふたつは切り離せない関係です。顧客満足度調査の最終目的を常に念頭におきながら、成功させるためにはどのようなアンケートが必要か、という視点でアンケートの目的を整理し、質問や選択肢を設計するよう心がけましょう。
(3)アンケートの目的と役割を整理する
さらに細かく、顧客満足度調査の目的・ゴール・目標と、それに必要なアクションを掘り下げます。これは、図1-②.④.⑤の工程に大きく関わる重要なポイントです。
顧客満足度調査そのものの最終の目的はリテンションです。リテンションとは、既存顧客の維持や囲いこみ、活用のことを指します。具体的には、再来店やリピート購入、自社や製品やサービスに対する満足度向上やエンゲージメントの強化などがこれにあたります。
図のように掘り下げていくと、顧客満足度調査のゴールは顧客満足度の向上、維持であり、そのためには満足度向上施策の実施・立案の必要があることが見えてきました。ということは、顧客満足度調査のアンケートも、この目標満足度向上施策の実施・立案に貢献できるものにしなければなりません。では、自社のどの部門の誰が、どのお客様に対して、いつまでに何をするべきか。このように具体的な満足度向上施策を立案し実施するためには、何が必要でしょうか。
それは正確な 顧客満足度の「現状の把握」と「分析の実施」です。アンケート作成の部分で顧客満足度調査に貢献できる部分は、まさにこの部分です。
現状はどうなっているのか。また、どのお客様に対して、自社の誰が、どんなアクションをとるべきか。これを考えるための情報を集めることができる項目設計のアンケートを作り、分析できるだけの回答数を回収することが、顧客満足度調査でのアンケートの果たすべき役割になります。
(4)顧客満足度向上につながるアンケート作成
それでは、 顧客満足度の「現状の把握」と「分析の実施」 が可能なアンケートは、どのように作成し分析すれば良いでしょうか。
分析を念頭においた設問の洗い出し
設問は、アンケートを作成している間にどんどん増やしてしまいがちですが、そういう時はプロジェクトの責任者や関係者と相談し、あらためて「仮説」を明確にし、検証するような設問項目を選定しましょう。
例えば、営業やサポート部門など直接お客様と接する部門の担当者に「リピート購入が少ない理由はなにか」などヒアリングしてみると参考になります。現場の担当者が直接お客様から聞いたことや、なんとなく感じていることが、本当にリピート購入を妨げる原因なのか。現場から上がってきた意見で多かったものについて、アンケートの設問で深掘りし、その回答を集計・分析すれば、仮説が検証できます。
仮説を立てることができれば、さらに設問を取捨選択します。アンケートのゴールである「現状の把握」とは、いまどれくらい満足しているか。何よりもこれをきちんと質問する必要があります。
①どのお客様 が
②どの商品・サービス の
③どの部分 に
④どれくらい満足しているか
もうひとつのアンケートのゴールである「分析の実施」については、 満足度向上施策の実施・立案 のための分析のことなので、どうやって案を立てるか、どうやって実行するか、その時にどんな情報があると良いかを考えます。施策の実行に必要なことは、
⑤自社のだれ が
①どのお客様 に
⑥何をするべきか
という情報です。単純にアンケートの回答のみを集計しただけでは、<①どのお客様>がなんと答えたのかを知ることはできません。、「誰がどんなアンケート回答をしているのか」という情報がなければ実際に行動できないので、既存顧客の名刺情報をアンケートの回答を紐付ける必要があります。あらかじめ、顧客IDなどをキーにしてデータをマージする想定でアンケートを作成しておきましょう。
さらに、<⑤自社のだれ>が担当しているお客様なのを知るためには、自社の担当者情報もマージする必要があるでしょう。
<②どの商品・サービス>なのか、については、顧客満足度調査全体の問題です。会社そのものについての顧客満足度調査なのか、商品・サービスについてのものなのか、あらためてプロジェクト責任者に確認すると良いでしょう。
もっとも重要なのは、<③どの部分>と<④どれくらい満足しているか>です。これが明確になれば、<⑥何をするべきか>をイメージしやすくなります。
まずは、<④満足しているかどうか>。さらに、それは<③どの部分>か。と深掘りしていくと、より具体的な満足・不満なポイントが見えてくる設問設計にできます。
■顧客満足度調査におすすめの設問(★=推奨項目 ●=必要に応じて取捨選択) |
<④満足しているかどうか> |
★総合満足度/総合満足度の理由 |
★正味推奨率(=他の人への“お勧めする”割合) |
●不満点 |
●再購入(リピート)意向 |
●他社サービスの利用状況/利用頻度 |
●利用頻度 |
<③どの部分>に<④満足しているかどうか> |
★項目別満足度(製品/営業/価格/サポートなど) |
項目別に満足度を見ていくことで、製品の満足度が低ければ製品を改善する、営業が低いなら営業担当者を変える、サポートの満足度が低い場合は……など、より具体的な対策を企画しやすくなります。
顧客満足度調査に特有のアンケートテクニック
顧客満足度調査に特有のテクニック・参考値など以下にまとめます。ご参考ください。
■設問数はできる限り少なく
設問数は15が理想、20~30が平均値
■満足度の深掘りは必須
どこまで深掘りするかは、何を知りたいのか(仮説)により取捨選択する必要があります。質問のテクニックとして、「大きいもの」から順に聞いていくと答えやすいアンケートにできます。
例)「弊社に対する総合満足度は?」→「項目それぞれの満足度は?」→「その理由」
また、回答している時のお客様の思考回路を意識する、というのも答えやすい設問設計のポイントです。
■設問の型
満足度を深掘りする必要があり、かつ集計し、分析を行う想定のアンケートなので、各設問の型は、答えやすく集計しやすい「単一選択型」か、「マトリクス型」がおすすめです。
■分析に必要な回答数を確保する
最低でも分析するセグメントごとに100サンプル以上の回答数を確保
■個人情報の入力欄がなくても個人を特定できるシステムの導入を
入力欄や設問数が増えれば増えるほど、アンケートの回答率は下がります。<①どのお客様>が、という部分に関わるポイントですが、顧客満足度調査は既存のお客様に向けて実施するアンケートなので、すでにお客様の情報は持っているはず。何度も個人情報を入力してもらわなくても良い方法でアンケートを実施しましょう。
一般的なアンケートの小技集
■個人情報の利用目的を記載する
アンケートフォーム・用紙には、個人情報保護法に従い、取得した個人情報の利用目的を記述記ておきましょう。これは、安心してアンケートに答えてもらうためにも、個人情報保護の観点からも、必須です。
(5)顧客満足度調査の分析・レポートのポイント
最後に、アンケートの分析についてのポイントです。
アンケートを集計する前に必ず行うこと
「(4)分析を念頭においた設問の洗い出し」で記載したとおり、顧客IDなどをキーにして、アンケートの回答のローデータに、既存顧客の名刺情報(個人情報)を紐付けましょう。さらに、そのお客様の担当者などの自社データもマージします。これで、
①どのお客様 が
②どの商品・サービス の
③どの部分 に
④どれくらい満足しているか
⑤このお客様の担当者は自社のだれか
という情報がそろいました。単純なアンケート回答の集計では、アクション先になる「お客様の個人情報」も、アクション元となる「自社の担当者」もわからず、回答のみの単純集計しかできず、回答データを活用しにくくなります。必ずアンケートの回答データをこの状態にしてから、集計や分析をするようにしましょう。
※Excelでのデータのマージ方法はこちらの記事をご参考ください
単純集計とクロス集計を行う
まずは、回答データの単純集計とクロス集計を行いましょう。事前に仮説立てを行った上で項目を精査しているので、集計だけでも発見があると思います。特に、総合満足度と項目別満足度の集計を見るだけでも、ざっと現状把握が可能になります。お客様が具体的にどの部分で満足度・不満度が高いか、アクションを行うべきなのはどの部門か、などがなんとなく見えてくるはずです。
視点を変えて分析を行う
ここからは、事前に立てていた仮説の内容次第で、どこまで何を分析するのかは変わってきますが、データを見るコツはあります。それは、「どの視点から見るか」ということです。上記の分析を念頭においた設問の洗い出しで作ったデータには、「顧客情報」と「アンケート回答」という2つの視点があります。
例えば、「それぞれの顧客を担当する営業拠点」別に総合満足度を見れば、どの支店の満足度が一番低いか、などが見れます。他にも、「男女別」の満足度で比べてみるなどの視点も、「顧客情報」を軸にした分析の視点です。
一方で、アンケートの項目(製品/営業/価格/サポートなど)別に満足度を見る、というのは「アンケート回答」を軸にした分析の視点です。製品/営業/価格/サポートのうち、一番満足度の低い顧客接点はどれか。その具体的な理由はなにか。
満足度が高いお客様と、満足度が低いお客様それぞれの「業種」の分布を見てみるのも、何か発見があるかもしれません。お客様の顧客情報と、アンケートの回答をかけあわせて集計するだけで、さまざまな角度から分析ができると思います。
このように、事前に立てた仮説を検証し、顧客情報がひもづいた単純集計やクロス集計から、誰がどのお客様に対して何を行うべきか、という提案をレポートに盛り込みましょう。
いかがでしたでしょうか。一言で「アンケート」と言っても、「顧客満足度調査」のように、その目的や役割によってアンケートの内容や行う業務が大きく変わることを想像していただけたと思います。会社の業種や業態、製品・サービス、アンケートを行う対象により、項目は大きく変わりそうではありますが、ご参考いただければ幸いです。
※アンケートそのものの基本ノウハウについては別記事の「成果を出す!アンケート作成業務に必須の7つのポイント【事前準備編】/【アンケート作成編】/【レポート編】」もご参考ください。
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※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。