<コピーライターのおすすめ本>応用編「書くのがググッと楽しくなる2冊」
この記事では、弊社のコピーライター小川がおすすめする本をご紹介します。
こんなライティングの荒波にもまれている人におすすめです。
- 書いた文章に上司から細かく赤ペンで修正を入れられまくってつらい
- そういう時「じゃあもうあんたが書いてくれよ」と思う
※文章力の底上げを目指すライティング初心者向けの本をお探しの方は、基礎編をご参考ください。
小川は、コピーライターとして75社以上※1 のメルマガ制作・Webサイト制作などに携わりながら、全国のべ300名以上※2 が受講するライティングセミナー(有料)の講師もつとめる弊社の『優等生コピーライター』です。彼女が、ライティングに関連する本を読んだり、お客さまとの質疑応答や文章の添削をしたりする中で見えてきた【「書く」ということの愛しさとせつなさと心強さ】。それをばっちり1冊で押さえられる本はないの?と聞いてみました。
なお、本記事のインタビュアーは、小川と同じチームに所属しながら「あ、講師とかムリっす」と吐き捨てスーツケース片手に新幹線で全国へと逃げ去る『不良コピーライター』の松澤です。逃げすぎて当ブログも全然更新できていませんでしたが、よろしくお願いします。
(※1,2:2017年現在の数字)
松澤 基礎編、お疲れ様でした。しゃべり倒しましたね。いよいよ応用編ですが、どんな話になるやら。
小川 書いていると心が折れることがあると思うんですよ。文章の意図が伝わらず、修正依頼だらけで原稿が返ってきた時のあのせつなさ…。まぁ、私クラスになるとそういうことはほとんどないですけどね。
松澤 でた。今回も嫌われる方向ですね。
小川 でも、せつなさと同じ分だけ、いや、それ以上に文章のすごさを感じることもある。今回は、そんな話がしたいなと。
松澤 なるほど。私も心が折れることがあります。
小川 松澤さんみたいなずぶとい人でもそうなんですか!意外です!
松澤 松澤さんみたいなずぶとい人、って…。
<目次>
4. 「日本語なんか誰でも書ける」問題の原因がわかったけどつらい
おすすめ本③『なるほどデザイン〈目で見えて楽しむ新しいデザインの本。〉』筒井美希 著(エムディエヌコーポレーション)
松澤 基礎編では、文章力の底上げができる実用的なノウハウ系書籍をピックアップしていただきました。で、今回は、ちょっと変わったおすすめ本があるんですよね?
小川 はい、それがこの『なるほどデザイン〈目で見えて楽しむ新しいデザインの本。〉』です(以下、③なるほどデザインと記載)。意識高い人はみんな持っています。Amazonでも超・高評価。
私がこの本を手に取ったきっかけは、「デザイナーから上がってきたクリエイティブに対して、もっと具体的に意見を伝えられるようになりたい」というものでした。でも、実際に読んでみると、全く違うところで衝撃を受けたんです。
・デザインの方が意識高いしオシャレみたいに思われているけど、やってることはライティングと一緒
松澤 衝撃を受けたのはどこですか?
小川 本の冒頭『chapter1 編集とデザイン』です。この章では、『朝ご飯を紹介する雑誌のページ』をデザインするんですが、それがすごい!『この写真をどういう風にデザインする?悩みますよね。結局、何のために、誰に、何を、どういう風に、伝えるのかが決まっていなかったら、このサイズひとつ決められませんよね。なんのためにこれをデザインするんですか?』ということが書いてある。ここで、あれ?と思ったわけです。続いて、見開きで「どんな人に」「何を」「なぜ」「いつ・どこで」ということが分かりやすくプロットされています。
そしてこの後に、A・B・Cという3つのターゲットでデザインし分ける事例が続くのですが…。そのデザインを見ると、同じ『朝ご飯を紹介する』というテーマなのに、AもBもCも全然アウトプットが違うんですよ!うーわ、なるほどなあ!やっぱライティングと一緒やん!ここを読んでほしいんです!…あれ?めっちゃアツいですね、この本だけ私。
松澤 基礎編より圧倒的に暑苦しいです。その後は何が書かれているんですか?
小川 技術の話です。「デザイン的に、これは◯、これは×」みたいな話。例えば、傘を紹介する時に機能を見せたいならこう、カラフルさを見せたいならこう、みたいなパターンがたくさん載っています。ほんで何が良いかって、オールカラー!
松澤 あー、飽きないヤツ。
小川 ただ、一番注目してほしいのは先ほどの冒頭の部分なんです!
松澤 「こんなオシャレなところに友達を見つけた」みたいな感覚がうれしかったわけですね。
小川 そう!デザイナーもコピーライターも根本的には同じなんや、っていうこと!
松澤 デザインとかの方が意識高いしオシャレみたいに思われているけど、やっていることはライティングと一緒やん、ということですね。
小川 この本は、図解しながら理屈でデザインについて説明している。それを見て「デザインにも理屈・理由があるんや。だからフォントひとつとっても違うのか!」と分かったんです。一目瞭然で、それが一番ショッキングでした。私は、これの文章版が作ってみたい。ここまでノウハウをちゃんと明文化できたらすばらしいなと。
松澤 あれ?基礎編の『文章力の基本(以下、①文章力の基本と記載)』や『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング(以下、②ナタリー式と記載)』には、ノウハウが載っていなかったんですか?
小川 えーっと。ちょっと違う。あーいや、どうやろ…
松澤 『③なるほどデザイン』の方が、もっと細かくノウハウが載っていたんですかね?
小川 いや…、そう言われてみたら…。
松澤 あれ…?小川さん…、ひょっとして…、このビジュアルにだまされていませんか…?
小川 ちょっ!ちょっと怖くなってきた!こ、これが…、デザインの…ちから…か…?!
松澤 『③なるほどデザイン』の目次を見ている限り、作業に入る前の準備から始まり、その上に技術・ノウハウを見せていくっていう構成は『②ナタリー式』と大きく違わない感じがしますよ。
小川 一通り読んだら、このデザインがなぜダメなのかとか、改善ポイントが分かるようになるはず。という意味では、『②ナタリー式』と一緒やな!あれ?ほんまやわ。
松澤 気持ちはわかりますけどね。
小川 デザインの話ってイラストとか画像とかフォントとか、カラフルで派手でしょ。でも、文字は文字しかないから、結局「に」を「を」にしましょう、みたいな…。
松澤 文字だけに関することを、文字だけで説明するっていう…。地味ですね…。
小川 地味ですね…。
・悪文は分かりやすいけど、良い文章かどうかの判断は難しい
松澤 お話を聞いていて、先日の社内研修を思い出しました。『言語(文字)と非言語(ビジュアル)の伝わり方の違い』がテーマで、それぞれの特徴について、言語は「正確」、非言語は「国が違う人でも分かる」「瞬間で分かる」「文字で表現できないことが表現できる(シズル感など)」が挙げられていました。まさに、さっきまでの小川さんやな、と思って。非言語=デザインの方が、“パッ”と“なんとなく“分かりやすい。だからこそ“なんとなく“良さも伝わりやすい=“なんとなく“かっこいい、のでしょう。だから、小川加奈子は…。
小川 この本のビジュアルにだまされた(笑)。
松澤 でも、みんなそうだと思います。『③なるほどデザイン』の方が「読もうかな」って気になりますもん。
小川 …。
松澤 …。つらいですね。ちなみにデザインできる人ってめっちゃ「すごい感」ありません?(笑)
小川 あるあるあるある!だってすごいもん!
松澤 それに比べるとコピーライターって「日本語なんか誰でも書ける」ということで評価されにくい。まあ、最終的にはそうは思わせませんけど!
小川 誰でも書けるからこそ、良い文章を判別しにくいんですよね。
松澤 基礎編の本で書かれていた「『考えなくても、読むそばからスラスラ分かる文章』が、良い文章」ですね。これが、評価されにくい一因なんだと気づきました。
小川 良い文章は考えなくても読めるから、存在感がない。だから、悪文は分かりやすくても、良い文章であるかどうかまでは判別しにくいんです。
松澤 だから私たちは地味なんですね…つらい…。
小川 いや、ちょっと待って松澤さん!そういう時は、これ読んで!
5. しょんぼりした時にピッタリ!書くことや文章のすごさを感じられる「読み物」
おすすめ本④『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』鈴木康之 著(日本経済新聞出版社)
・言葉ってこんなにすごいんだ。文章ってこんなにすごいんだ。
小川 そんなにしょんぼりせずに、『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方(以下、④名作コピーと記載)』を読んでください。
松澤 ん?これは、他の本と比べて存在感が違いますね。
小川 これまでご紹介したような、文章の書き方・テクニックが学べる本ではないです。でもすごい!広告コピーの世界の話なのですが、読むと共感しかありません!精神論とはちょっと違うな…。『言葉の持つ力が分かる本』です、これは。
松澤 おお。かっこいい。
小川 基礎編の本は良い教科書なんですが、「言葉って、文章ってこんなにすごいんだ!」という発見はあまりない。でも、この本を読むと心からそう思える。「この一言に、ここまで考え抜かれているのか!」という驚きもあります。
・「ありがとう」≦「もったいない」?このすごさや良さが分かるのもちょっとうれしい
松澤 最も心に残った箇所は?
小川 サントリーローヤルのコピーです。
もったいない酒。
友がいい酒をくれた。
心遣いが、もったいない。
飾っておくのは、もったいない。
封を切るのは、もったいない。
ひとりで飲むのは、もったいない。
こんなにいい夜が、もったいない。
こんな気分が、もったいない。
もったいない、もったいないと言いつつ、
瓶(ボトル)はいつしか空になる。(p.66)
松澤 瓶に「ボトル」とルビをふる厨二感、嫌いじゃない。
小川 (無視)「ありがとう」という気持ちをちゃんと伝えるには「ありがとう」と100回書けば良いわけではないということが、これを見ればすごくよく分かります。このコピーは、『サントリーローヤルをもらった人』が、お酒をもらってその心遣いがもったいないもったいないと言うのがひたすら書かれている。「ありがとう」とは書かずに「もったいない」という表現のくりかえしで、「この人、すごく喜んでいるんだなあ」としみじみ伝わってくる。だから…。
松澤 この広告を見た人は「あの人にこんな気持ちになってもらえるなら、サントリーローヤルを贈りたいなあ」という気持ちになると。
小川 そうそう。この本の中ではこういういろんなコピーが紹介されているんです。
松澤 いいなあ…すごく叙情的で。温度すら感じますね。ちょっと元気出てきました(笑)。 このすごさや良さが分かるのもちょっとうれしい。
小川 でしょ。さらに、この本はそれぞれのコピーの解説もうまい!誰をターゲットにしてどういう意図で書かれているか、なぜこの表現になったのか。そういうエッセンスをうまく解説してあるから、こういうタイプのコピーを書かない人でも楽しく読めると思います。
・書いていてスランプに陥った時に読むと、なんか元気が出る本
松澤 さて、基礎編・応用編と4冊ご紹介いただきました。基礎編は文章力の底上げをしたい時に読む本。Webとか雑誌の文章に慣れている人なら『②ナタリー式』の方がサッと読めそうですね。
小川 確かに、Web系の文章を書く人は『②ナタリー式』の方が良さそう。報告書とか普段のビジネスメールが変とか、そういう人は『①文章力の基本』かな。
松澤 『③なるほどデザイン』は番外編。『④名作コピー』はしょんぼりしたときにぜひ読んでほしい本。
小川 『④名作コピー』は、書く言葉や表現ひとつで、人の心を動かしたり行動を変えたりすることができるんじゃないか、そう感じて勇気が持てます。言葉なんて50音の組み合わせでしかないですけど、それでもやっぱりすごい。
松澤 書くのがいやになった時とかにも読むと良いかもしれませんね。いつもノウハウ系ばかり読んでいるなら、たまにはこういうちょっと違う視点のものを…。
6. トーク:それでも私たちがイタコピーライティングをやめない理由
・マジ言葉って偉大。「とにかく役に立つ」
小川 私達コピーライターの仕事って、霊を降ろすイタコさんみたいなもんじゃないですか(笑)。 クライアントが言いたいことを、伝えたい人に最も伝わりやすく翻訳してるだけ。
松澤 恐山とかにいてはるイタコさんですよね。それ、かっこええな。でも、シャーマンはデザイナーより崇められていますよ。やっぱりもっとコピーライターも崇めてほしいです。なんか私らの仕事って黒子やなあ。別に目立ちたいわけじゃないんですけどね。
小川 でも、私はやっぱり書くのが好きですし、伝わる文章を書けなくて困っている人をひとりでも減らしたいって思うんです。なんでかな?ずっと文章で得して生きてきたから、そのすごさを実感しているからでしょうか。
松澤 伝わる文章かどうか以前に、日本語が巧みになるだけでもいろんな変化を実感しますよね。私も、言葉には何度も助けられてきました。情緒的にも、実用的にも。基本的に厨二ですから、若い頃はうわー!と文章で感情をはき出して発散することもありましたし、大人になってからは、フレームワークを知らなくても、そこそこロジカルに考えられていることに気づきました。人間は考える時、脳内で言語に置き換えて考えるので、言語が巧みになるとその分考える効率が上がる。結果的に、仕事だけでなくプライベートの問題解決にも役立ちます。
小川 めずらしくマジメな話をしていますね。
松澤 それと、さっき小川さんの話を適当に聞きながら『①文章力の基本』をペラペラめくっていた時に、これわかるなーって部分を見つけました。
小川 適当に聞いとったんかい。どれですか?
松澤 p.99『国際ビジネスマンもまずは日本語の文章力を』というコラムの一部です。
幼児から身につけた第一言語、いわゆる母語の力は偉大です。膨大な語彙が、その微妙なニュアンスを含めてほとんど肉体化されています。その最も得意な母語で簡潔・明瞭に表現するセンスを磨いていない人がいくら外国語を学んでも、その外国語によって簡潔・明瞭な表現を行なうことはできません。
正確に言うと、技術なので「センス」ではないですが、これめっちゃわかるなーって。さらには、言語は考えるツールなので、それをどれだけうまく使えるかは、考えの深さにも比例しますよね。マジ言葉って偉大。
小川 要は、「とにかく役に立つ」ということが言いたいわけですね。
・日本語が巧みになると世界がすごく変わる
松澤 もっと言うと、単語ひとつ覚えるだけでも世界が変わりますよね。広がるというか。新しい言葉を知れば、新しい事柄を認知できるようになり、新しい体験ができる。例えば、「風鈴」という言葉を知らずにあの音を聞いたら、ただの雑音と感じるかもしれません。けれど、「風鈴」という単語や、それにまつわるエピソードを知ることで、その『風情』を肌で感じられるようになる。ボキャブラリーの分だけ世界は広がり、文章が巧みになればなるほど考えが深まり、見える世界も豊かになる。
小川 確かに、言葉がうまく使えるようになると世界がすごく変わりますね。報告書やレポートひとつとっても、文章が良くなるだけでググッと仕事のやりやすさや楽しさが変わる。人とのコミュニケーションにも大きく影響を及ぼしますし。まずは基礎編の本さえ押さえれば、絶対その変化は感じられるはず!たとえ仕事がきっかけでも、こういう書くことのすごさや醍醐味を実感してもらえるとうれしいなあ。あれ?松澤さん、さっきからめずらしく良いことを言っていますよ!
松澤 コピーライターも、デザイナーと同じくらい評価されたくてがんばっているんですよ。それと、「もったいない」のコピーの話を聞いて、ちょっと文章のすごさを思い出したので、それを伝えたくなりました。
小川 松澤さんの「書く」ということのせつなさは、愛しさと心強さに変わったわけですね!良かった!
松澤 はい。だから、小川さんもビジュアルにだまされないでください。『②ナタリー式』と『③なるほどデザイン』は、根本的には同じです!
小川 すんまへんでした!イタコピーライティング、引き続きがんばりましょう!
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