Menu

ブレずに意思決定するための「顧客カルテ」の作り方

~Yahoo! JAPANが運営する「東北エールマーケット」の顧客カルテ作成の舞台裏~

Yahoo! JAPANが運営する東北復興支援を目的としたインターネット通販モール「復興デパートメント」が2016年7月11日に「東北エールマーケット」としてリニューアルオープンし、弊社の価値観モデルを軸とした「顧客カルテ」が、リブランディングの判断基準として活用されています。

今回はその事例から、「分析データのエッセンスをわかりやすく図解し、プロジェクトチームの共通言語となる」ことを目指した「顧客カルテ」のご紹介をしたいと思います。

東北エールマーケットについて

東北エールマーケット Webサイト

東日本大震災から5年が経過した今、「支援したいから買う」のではなく、「買ったら結果として支援になっていた」という形を目指したい。出店者だけでなくユーザーにもっと目を向けることで、インターネットモールとしてより発展し、東北に貢献し続けたい。という思いから、「復興デパートメント」を全面的にリブランディングし、「東北エールマーケット」としてオープンするにいたりました。

事例の詳細についてはこちらをご覧ください。

顧客・購買分析を通したファン(優良顧客)の見える化

まず最初に、「誰が・いつ・どんな目的で何を買っているのか」といった購買パターンを把握するために、「復興デパートメント」顧客へのアンケート調査・価値観分析を行いました。具体的に優良顧客を定義し、CRM施策の道筋を作るためのスタート地点とします。
230_urushino_02

言葉だけでは伝わりきらない?

優良顧客の姿が明確になり、これを戦略に生かそうとした時に、プロジェクトメンバー間で「顧客」の姿や目指すべき方向にブレが生じることはないでしょうか?

文字(テキスト情報)を映像に変換する際には、どうしても個人個人で偏りが出てきてしまい、顧客の「価値観」や「ライフスタイル」などを理解・共有しきれないことがあります。せっかくの分析がスムーズに認識されないとコミュニケーションロスにつながり、結果コストがかさむことにもなりかねません。

今回のプロジェクトは総勢18名ものメンバーが関わっていて、それぞれの立場やマーケティングリテラシーにも幅があります。立場の違う人々がさまざまなシーンで触れる「文章ベースの分析レポート」では、共通認識として擦り合わすことに時間がかかってしまい、情報が抜け落ちてしまう可能性もある。
それを危惧した弊社 シニアマーケティングディレクターの中屋から、ペルソナシートの視覚化の依頼を受けました。

ビジュアル化へのプロセス

情報をわかりやすく共感を促しながら共有したい場合には、ビジュアル化がとても有効です。

1. 成果物を利用する人を知る

まず、顧客カルテを「どんな人が、何を、いつ・どこで、利用するのか?」を理解し、デザインの方向性を決めていきます。

今回のプロジェクトでは以下の立場の人々です。

  • 「プロジェクトの総括者」
  • 「Webサイトの改修や運営を行うWeb制作チーム」
  • 「コンセプトを根底から考えるアートディレクター」
  • 「お客さまに響くメッセージを考えるコピーライター」

多様な立場の人が、異なる場面でこのシートを見るのだなとわかります。

であれば立場によって欲しい情報の粒度もさまざま。「要点を押さえる」ことができ、「細かく詳細を理解」することもできる。利用立場と利用シーンを両立させて情報を整理しようと方向性を決めました。

2. ビジュアルの方向性を決める

今回の目的は、顧客分析に馴染みがない人でも、優良顧客(ペルソナ)への理解を深めることができるもの、プロジェクト全体で共通認識を持つためのツールにすること。

なのでテーマは「一目で共感できるペルソナシート」に決定しました。(人物像に馴染みを持ってもらいたい思いを込めて、「共感」をテーマに入れました。)

2つの方向性をラフスケッチで提案

230_urushino_03

A案 明確で理性的。スマートに情報を得たい人に向けたデザイン

230_urushino_04

B案 親しみやすく情緒的。サインや写真を多用し直感的に情報を理解したい人に向けたデザイン

社内で協議した結果、お客様がより施作に考えを廻らせるようなB案に票が多く得られました。B案は「親しみやすく情緒的」という方向性なので、「親しみ」「人となりが想像できる」「共感」「活発さ」をキーワードにデザインを進めます。

3. 整理し要約する

重複していたり、グループを分けた方がわかりやすい情報などは整理し要約します。文言もシンプルに。レイアウトはペルソナに「一目で共感」出来る様に、キャッチフレーズ・セリフが印象的になるようにしています。

4. ビジュアル化する

ここにきてようやくビジュアル化です。

B案のキーワードから導いたデザインアプローチは以下を意図しました。

  • 丸いモチーフを生かして柔らかさや柔軟性を表現
  • リズムのあるレイアウトで活発さ・柔軟さを感じさせる
  • キーカラーをオレンジ色にすることで、積極的・親しみ・エネルギーを感じさせ、クリエイティブな思考が広がる様な配色

今回はデータの正しい理解を阻害するので、装飾的な要素は入れません。

230_urushino_05

以前のカルテよりもページ数は多くなりましたが、シンプルに「一目で」理解できる様になっています。
分析結果もイメージに置き換えることで、言葉では伝えきれないニュアンスも共有します。

情報をビジュアル化し、課題解決に生かす

完成した顧客カルテは、ビジュアル化することで優良顧客への共感を促すマーケティングツールになりました。「顧客カルテ」について、「東北エールマーケット」を運営するYahoo! JAPANよりコメントを頂いています。

今回のリブランディングプロジェクトは関係者が多く、また「復興デパートメント」立ち上げ当初から関わっていたメンバーと途中から関わり始めたメンバーがいるため、それぞれが持つ認識や思いが異なっていました。そんな中で、シナジーマーケティングが一緒になって私たちの顧客に向き合い、「顧客カルテ」としてまとめてくれたことで、今後大切にしたい顧客像はどのような人なのか、メンバー全員で共通認識を持つことができました。これにより、意見に主観が入りにくく、ぶれずに意思決定を行うことができました。今後は実際に「東北エールマーケット」をご利用いただくユーザーを見ながら「顧客カルテ」を更新し、よりユーザーに喜ばれるマーケットへと進化させていきたいと考えています。
(ヤフー株式会社 社会貢献推進室 小玉弘子氏)

あくまでペルソナや分析結果はCRM施作の道筋であって、直接お客様の満足度を引き上げるものではありません。しかし、根拠のある戦略(施作)を実施する為の有効なCRMの土台となり、より良い体験をお客様に提供することにつながります。

  • ユーザー調査を行ったが、データを生かしきれていない
  • ステークホルダーにユーザーが持つ価値観や課題を説明したい
  • 何を基準に施作を考えていいかわからない

このような場合に、顧客カルテは問題解決の有効手段になります。

分析データも可視化することで、言語化できない特徴を共有できることに可能性を感じました。コミュニケーションをスムーズにでき、問題解決に生かす糸口になればと思います。

※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。

PageTop
PageTop