BtoBマーケティングにおける「ペルソナ」活用の課題(前編)
最近では「ペルソナ」はなくてはならないマーケティング手法のひとつとなってきていますが、その事例はコンシューマー向けの製品やサービス(BtoC)に偏っており、法人向けのペルソナはあまり姿を見せません。
そこで今回は、当社の事例を交えながらBtoBにおける「ペルソナ」の課題と制作・活用のポイントを前後編と2回に分けご紹介したいと思います。
<目次>
BtoB事業におけるペルソナ活用の課題
BtoBにペルソナがまだあまり浸透していない理由は、BtoCに比べて以下のような複雑さがあるからだと言われています。
1. 複雑な購買プロセス
BtoCの場合、家や車のように高額商品の場合は家族の承認が必要であることもありますが、商品の選定者と決裁者は同一人物であることがほとんどです。しかしBtoBの場合、指示をする人/選定する人/決裁する人/利用する人が異なったり、複数いることが稀ではありません。
例を挙げてみましょう。
【例】当社製品(顧客管理システム)の選定から契約までのプロセス
- 経営層から今期の組織ミッションが定義され、リーダー層がその実現のためにシステム改善を企画
- リーダーから部下に調査を指示し、部下が情報収集して資料をまとめる
- 自社に合っているのか機能が足りているのか、情報システムやシステム利用者、その他関係部門に確認し、複数の製品・サービスから候補を2〜3つに絞る
- それぞれの製品・サービスの提供企業へ問い合わせをして商談。提案を比較して1社に絞る
- リーダーが稟議書を作成し、関係部門および上司へ承認を仰ぎ、上司が決裁して購買(契約)に至る
このように、法人向け製品・サービスの場合、複数の人が関わり、かつルートも複雑です。
2. 利用中に利用者も変わる
上記例で示した通り、製品やサービスを購買する人と利用する人が異なるだけでなく、さらに担当者異動や退職などにより利用者が変化していきます。
3. 提供側のユーザー接点も変化する
リード、営業、製品開発、サポートなど、各部門の役割によって接する人が変わります。前述した通り、接点ごとにユーザー(お客様担当者)も異なるため、部署間同士のお客様に対する共通認識がBtoCと比べて難しいのです。
変化する提供側の接点部門
4. ユーザー調査が難しい
マーケティング調査のためのコンシューマーモニターを提供しているサービスは沢山ありますが、企業モニターは限られており、さらに特定の製品・サービスを利用している企業を募集することは困難です。そこで、関係が良好な既存顧客へ調査依頼する方法を取ることもありますが、調査を実現できる数は1〜3社と少ないのが現状です。
BtoBにペルソナは必要?(BtoBのマーケティングの遅れ)
BtoCの製品・サービスでは、コトラーのマーケティング2.0で示されているように、消費者志向の考えが主流となっていきています。しかし、BtoBではまだまだマーケティング1.0レベルが主流です。販路が固定されていたり、顧客数が少ないため営業マン自身がお客様を回る方法が有効であり、BtoC同等のマーケティングの必然性がまだないという考えが根強く残っているからかもしれません。
しかし、昨今、日本国内だけでなく海外から良質で低価格の類似サービスが参入してきており、危機感を感じているBtoB企業も少なくないのではないでしょうか。BtoBであっても「人」が選定して「人」が利用することには変わりはなく、商品・サービスを利用する「人」を中心としたデザインはBtoCと変わららず重要です。むしろ、複雑だからこそより効果的であると私は考えています。
しかしながら、ペルソナのような最近のマーケティング手法を活用したくとも、先に挙げたBtoBならではの複雑さがあるため、従来の方法そのままではうまく行かなかったり、参考にできる事例もほとんどありません。
後編では、当社の事例を交えながら、BtoBではどのようにペルソナを活用するのかについてご紹介します。
BtoBマーケティングにおける「ペルソナ」活用
- 前編 BtoBマーケティングにおける「ペルソナ」活用の課題(本記事です)
- 後編 BtoBにおける「ペルソナ」活用のポイント
※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。