【特別対談】BtoBマーケティング成功のポイントは「プロセス管理」と「部分最適」
Sansan×シナジーマーケティング
BtoB企業でマーケティングや販促を担当する方は、たとえば以下のような課題や疑問をお持ちではないでしょうか。
- 名刺管理とSFAとCRM、それぞれのシステムの違いがわからない
- 導入したシステムやツールがうまく活用できていない
- 名刺や顧客の個人情報が社内共有できていない
- BtoBの商材でテレビCMって効果あるの? など
今回は、そんな疑問を解決するべく、最近『それさぁ……早く言ってよぉ~!』のテレビCMで話題のSansanさんを直撃取材しました。教えてくださるのは、Sansan株式会社 戦略コミュニケーション担当 Eightエバンジェリスト 日比谷 尚武さん。そして、インタビュアーはわたくし佐々木です。では、早速スタート!
(※以下、敬称略)
あのCMの舞台裏とその成果
佐々木 日比谷さんは、どのような業務を担当されているんですか?
日比谷 弊社には、企業向けクラウド名刺管理サービスの「Sansan」と、個人向けの名刺管理アプリの「Eight」、この2つのサービスがありますが、それぞれにはマーケの担当や広報がいます。僕は、それらのサービスや会社のことを含めて「Sansan株式会社という会社全体のエバンジェリスト」みたいな動きをしてます。
佐々木 企業向けのSansanは、どんな会社からのお問い合わせが多いですか?
日比谷 Sansanのコンセプトは「営業を強くする名刺管理」なので、やはり営業に何らかの課題を抱えている会社が多いです。ただ、最近はテレビでCMをやっている効果もあって、裾野が広がっています。
社員A 「事前に田中常務にコンタクトできていれば……」
社員B 「あの……」
社員C 「なんだ?!」
社員B 「その田中さんなら、僕面識ありまして……」
社員C 「なんだと?!」
社員B 「地元のつり仲間で……」
社員C 「名刺交換は?!」
社員B 「しました。」
社員C 「それさぁ……。早く言ってよぉ~!」
日比谷 まさに、このCMの登場人物が言ってるようなニーズの引き合いが増えてます。「営業」という部分にフォーカスしているわけではなくて、その前の「まずは社内の名刺を共有しよう」みたいな感覚。昔は「営業のために使いたい」という会社からお声がけいただくことが多かったんですが、最近はこちらの方が多いです。結局、どちらも、突き詰めていくとその先では「営業で名刺情報を活用しよう」ってことになるんですけれども。
佐々木 このCMの反響、どうですか?
日比谷 具体的な数字は公開できないんですが、おかげさまで、お問い合わせは増えています。
あと、これは大企業に多いんですが、お客さまに一度持ち帰って検討いただく際に、先方の社内で「あ、その会社なら知ってる。」みたいな反応をいただくことが増えた。こういうことって、意外と営業プロセスのパイプラインを突破するために重要なんですが、そこはだいぶ解消されたという手応えはあります。要は、認知が上がったというか。その肌感覚はあります。
■一般的な営業プロセスのイメージ図
(参考記事:パイプラインマネジメントとファネルマネジメントの違いより)
佐々木 Sansanがお客さまから評価されているポイントは、どんなところにあると思いますか?
日比谷 段階があると思います。Sansanをそこそこ使ってくださっているお客さまの継続理由は、「営業の強化」というのが多い。システムのコンセプトとして「営業を強くする」と銘打っているとおり「いかに営業支援の下支えになるか」っていうところがSansanの価値なので、これはとてもうれしいです。
一方で、使い始めたばかりのお客さまからよくいただくのは、「データ化する」という点。名刺の山から解放されるのは、わかりやすいベネフィットですよね。
佐々木 課題が明確ですよね。
日比谷 昔からそうなんですが、はじめから「名刺を営業に使いたい」っていう人は一定数いるんです。たとえば営業企画や営業の責任者の人が、「いかにリードを確保・獲得するか」っていうときに、「新規でリードを取るよりは、みんなすでに名刺を持っているんだから、それをうまく使いましょう」と考えて、弊社にお問い合わせいただく。その場合は、目的が明確なので話は早い。
でも、「名刺のデータ化」が目的でお問い合わせいただいたあと、うちから提案させていただいた結果「名刺ってCRMの発想で使えるんだ、じゃあそれやろうよ。」となることもあります。これは少し啓蒙がいるパターンですかね。もちろん、少しでも早い段階から名刺をデータ化して共有を開始したほうがメリットがあるし、それからじっくり「営業活用」に進むというやり方でもよいんですが。
僕らも、テレビCMを打ったりして、意図的に後者の人たちにリーチを伸ばしているとも言えるんですけど、初期のころは前者のようなCRMとかSFAとしか売ってなかった。
佐々木 それって、Sansanの前身である「LinkKnowledge」と呼ばれていた(*)ころですか?
(*)2013年8月にサービス名を「Sansan」に変更。
日比谷 そうです。先ほどの例でいうと前者の目的が明確なひとたちがターゲットだから、ちょっとややこしい名前でも支障はなかったし、キャッチーさよりもサービスの価値をダイレクトに表現することを優先していました。「リンクなんとか」とか言われても(笑)、ニッチながらニーズの濃い人に刺されば本質は理解してもらえるので。
佐々木 商品名を「LinkKnowledge」から「Sansan」に変更したきっかけって、その辺にあるんですか?
日比谷 そうです。「わかりやすくして裾野を広げようとしたから」ということですね。ちょうどその頃テレビCMの計画も進んでおり、名刺をデジタル化するっていうのも一般化してきたタイミングだった。だから、このタイミングにもっとわかりやすく覚えやすくした方がいいということになりました。
「名刺管理」≠「SFA」≠「CRM」違いは何?
佐々木 実際にお客さんがSansanを検討されるときに、SFAやCRM系のサービスとも比較されると思うんですが、それぞれ具体的にどういうところが違うのでしょうか。
日比谷 結論からいうと、それぞれ結果は一緒で「アプローチの違い」だと思っています。「データベースマーケティングするのか、日報管理するのか、人脈管理するのか、どういうアプローチがうちに合うの?」みたいな、そういう話。
「営業強化のためになんかシステム入れようぜ」という文脈ではSFAやCRMのシステムと比較されますし、機能的な有り無しで分類したらかぶるところはあるんでしょうけど、「営業を強くする」っていうゴールにたどり着くためには、SFAでもCRMでも名刺を使った人脈共有でもいい。
それぞれコラボできるところもいっぱいあると思います。併用してるお客さまもいるし、弊社でも全社ではSansan使いながら、セールスフォースも活用しています。Sansanに取り込んだ名刺データを、セールスフォースと連携させて分析に使ったりするんです。マーケでは御社のSynergy!LEADを使ってます。
ただ、Sansanのように「人脈をデータ化してうまく活用する」っていうアプローチは、いままでになかったのではないかなと思っています。
佐々木 先ほどおっしゃっていた「漠然と名刺を共有した方が良いんじゃないかな」と感じているお客さまだと、CRMやSFAというキーワードにたどり着く前に、御社のアプローチに反応しそうですね。
日比谷 そうですね。そういうことだと思います。文脈が違う。最近、大企業さんの引き合いや導入が増えているんですが、社員が多ければ多いほど、名刺の共有とか人脈の共有とかできてないと感じる機会が多いんでしょうね。部門間共有とかね、子会社とグループ会社とかの共有とか。海外拠点と日本との人脈共有に使われるケースも増えてます。
佐々木 お伺いしていると、SFAやCRMよりも、Sansanの方が使う部門の幅が広い気がします。SFAはやっぱり営業部が主体のもので、CRMは既存顧客向けのマーケ部門やサポート部門がメインになるけど、名刺管理って全社員というか、もっと広い感じがする。
日比谷 そうそう。情報共有みたいな。昔ナレッジマネジメントというキーワードが流行った時代もありましたが、まあそっちに近いかな。
佐々木 ああ、なんか違いがわかってきました。やっぱりゴールは同じなんですね。
日比谷 ここはちょっと僕らも模索するところで、本来は「名刺情報の共有・デジタル化は、実はCRM・SFA的発想につながるんですよ、だから営業で使っていきましょう」っていう考え方だったんです。でも、「Sansanを使ってこれだけ売り上げなきゃいけない!」とかじゃなくて、もっと定性的に「生産性があがるよね」みたいな評価をしてもらうのでも良いんじゃないか、とも感じるようになってきた。これは、大企業での導入が増えてきたこともあって分かってきた、ちょっと新しい傾向ですね。
佐々木 無理やり名刺管理のシステムを他のSFAにつなぎこむとかじゃなくて、名刺は名刺、営業活動の情報は情報で管理しようということですか。それってある意味、シンプルですよね。
日比谷 自然ですよね。
佐々木 無理やりなんでもSFAにデータを持ってきて、名刺情報のインプットもSFAに行なわなきゃいけないのは、ぶっちゃけ現場ではやりづらいですよね。
日比谷 毎晩帰社してから手入力しなきゃいけない、みたいに現場の方に負担があったりだとか、いまの運用のオペレーションがおかしくなっちゃうとか、ありますからね。
佐々木 全社員がSFAやCRMシステムを使うとかっていうのも、コスト的にもセキュリティー的にもいろいろ限界がありますしね。
SansanのBtoBマーケティングを支える仕組みとは
佐々木 リードの創出~アポ獲得~成約までのプロセスについて、どんな体制で運営されていますか?
日比谷 詳細の人数とかKPIの数字を出すのは難しいんですが、ざっくり言うと、「リードチーム」と、「インサイドセールス」、あとは「セールス」という、三段階の体制になってます。
佐々木 ジェネレーションするチームがあって、インサイドセールスがいて、セールス。弊社の体制と近しいです。
日比谷 弊社独自の特徴があるとしたら、セールスのところで基本は訪問しないでオンラインで商談するんです。
佐々木 首都圏のお客さまもですか?
日比谷 はい。首都圏も、規模も関係なく。もちろんそのTPOにあわせて最適化しているので、訪問することもありますが、ほぼオンラインでやっています。
それぞれのKPIや人数は、そのシーズンによってかわってきて、たとえば中小企業を狙っていこうという方針になったらちょっと人数を増やそうとか、大企業を狙うんだったらちょっとソリューション営業系のひとたちをフロントに立たせるようにするとか、社内でバランスをとります。
佐々木 そうなんですね。方針や時期に応じて……
日比谷 ただ、さきほど挙げた3つのチームに分かれて、あとの行程にパスしていくっていうのは変わりません。
ちなみに、弊社ならではの話としては、全社員でSansanを使っているんですけど、最近、社員の知り合いから引き合いが来ることが多いんです。昔、社内の誰かが展示会でアプローチしていた人とか、アプローチしてた人が転職して……とか。だから、インサイドセールスのチームには、必ずお客さまに連絡する前に名刺をSansanで調べるという対応ルールがある。そうすると「あ!前職でSansanをご利用いただいてたんですね」とか、「◯◯という社員と、3年前にお会いしてるんですね」みたいなトークができるので、そこが効いた、みたいなのは結構あります。
佐々木 ああ、すでに知ってくれてる、みたいな感覚ですね。僕がお客さんだったら、そういうのはすごくうれしいなあ。
日比谷 そうそう。「おー、知ってるんだ。さすがSansanさん」みたいになると、僕らもうれしい。
佐々木 ちなみに、どの獲得チャネルに重きを置くのかの判断基準は?
日比谷 会社の全体の売り上げ目標があって、そこから逆算していくと、どれくらい何を売り上げなくてはならなくて、そのためには何件アポを取って、何件リードを取らなきゃいけないか、は逆算で出てくる。で、それを実現する確かなものからやっていく、ということの繰り返しです。
だから、既存の手法でそのまま数字が生み出せるのであればそれでいいし、来期もうちょっとスピード上げていかなきゃならないとなると、いまのうちから、今の数字は達成していても来期のボリュームには足りないから新しい手法も始めておこう、展示会出展の幅を積極的に拡げたりとか、調整していく。Facebook広告?Twitter広告?記事広やってみる?動画?って、先読みして、リードを獲得していくっていう。皆さんがやっているのと同じですよ。
佐々木 でも、こういう考え方っていまだに浸透しきっているようには感じられません。
日比谷 「BtoBマーケティングプロセスの定義をきちんとしましょう」っていうのは、ベンチャーとかIT系とか、ITに対する反応良いところでは常識になりつつあるけど、たしかにまだ日本の企業全体に浸透したとは感じられないですね。
BtoBマーケティングの成功には「プロセスの定義」と「部分最適」が大切
日比谷 「BtoBマーケティングプロセスの定義をきちんとする」ということが、日本の企業全体にあまり浸透していない一方、マーケティングオートメーション(以下MA)とかコンテンツマーケティングとか、BtoBマーケティングのプロセスの一部分がフォーカスされていますよね。
でも、ツール使ってマーケティングドリブンに一部分を整理するだけじゃなくて、そもそもの全体のプロセス自体を見直したりしてちゃんと設計しないと、きちんとマーケティングできませんよ、っていうような根本的な話を本当はもっとちゃんとしないといけない気がします。
佐々木 まずはプロセスの流れを定義することが大切で、そのプロセスに合わせたツールを選定することが重要ってことですかね。
日比谷 そうそう。ちゃんとBtoBマーケティングのプロセスをつくって、そこでそれぞれ部分最適なツールを使ってやっていけば、きちんと活動が見えるようになる。活動が見えれば、それに対する手も打ちやすくなるし、成果も出てくるはず。
佐々木 いまは、MAでも名刺管理でもリードナーチャリングでもSFAでもCRMでも、どのプロセスにもマッチするシステムが、安価なクラウドで提供されていて、導入もしやすい状況になっている。数年前とはずいぶん状況も変わりましたよね。
日比谷 そういう意味でも、部分最適しやすくなってますよね。どれでも良いからクラウドでシステム導入してみて、やりやすいアプローチから手を付けて、広げていけば良いんじゃないかなと思います。ただしそれも、もちろん全体のマーケティングプロセスを定義した上でのことですけどね。
佐々木 ですね。今日は、ありがとうございました!
※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なる場合があります。ご了承ください。
「顧客管理」をはじめたいあなたに。必要なのはどちら?
SFAとCRMシステムの違い
「顧客管理をしたい」
あなたがやりたいことは、具体的になんでしょうか。その情報をもとに、どういう運用をしたいですか?
顧客管理とひとくちに言っても、求める方向性によって、適するツールが変わります。それぞれの言葉の定義、得意なこと、代表的なシステムなど基本情報を網羅。やりたいことの優先度で、最適なシステムを選択しましょう。