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顧客を本質的に理解する②
-テクノロジーによる「個客」理解

前回は「顧客の本質理解」の重要性についてお話しました。
今回は「テクノロジーの進化により、顧客の行動データから意思決定の要因に近づくことができる」がテーマです。

顧客の意思決定の要因といっても複雑そうだし、無数にありそうです。
確かにそうなのですが、そこで留まっていては従来の「アートの領域」「職人技」の世界、つまり特定の人材に依存する状態から脱却できません。我々は「分析の民主化」を掲げている以上、誰でも顧客の意思決定の要因を理解し、ひいては顧客の本質を理解できるような仕組みを作ろうと考えました。

  • 10年選手でなく、たとえ新入社員であっても他の人の助けを借りずに自らの作業で解析が完結できる
  • 意思決定の要因を、あたかも社内の共通言語として使える「武器」として
  • 顧客の本質理解を広めることができるようになれば…
  • 縦割りの部署間であっても顧客については共通理解がなされ、ビシッと軸が通った協働的なマーケティングが実践されている

我々のテクノロジーで、そんな姿の実現に貢献したいと考えています。

それでは、我々のテクノロジーをご紹介していきます。

データ解析の2つの大きなメソッド

まず、顧客の行動データをどのように解析していくのか。

データ解析のメソッドとして大きく2つ、「定量分析」「定性分析」があります。定量分析は統計としてデータの「量」にフォーカスし、定性分析は「意味」にフォーカスします。
従来これら2つのメソッドは別のものと捉えられており、混ざりあって知見を得るようなイメージはありませんでしたが、我々はいわば「定量✕定性のハイブリッド分析」という手法を生み出しました。

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定量分析

顧客分析をする際には、両メソッドとも「誰が」が起点になります。

定量分析だと「誰は、何」で「誰が、何をした」というデータを集めての解析となりますが、ここでの「何」を「変数」といいます。定量分析ではこれら多岐にわたる変数間の関係性や量的なバラつきなどを統計的に処理して可視化し、そこから気づきを得るというのが一般的なステップです。

例えば、「世代別の購入金額」「地域別の購入商品」といったアウトプットは、ある変数に及ぼす影響が高い他の変数を知り、気づきを得る目的で行われる分析結果です。

このような分析においては「何(変数)」をどのように選び出すか、つまり気づきを得やすい変数の設定と選別が重要です。例えば「年代」という変数がいいのか「年齢」にすべきなのか。また年代なら、10歳刻みがいいのか5歳刻みがいいのか、「商品」についてはカテゴリなのかSKUレベルとするのか・・・。これが「設定」です。

この設定と選別には相応のスキル、経験が求められます。
「年代」と「商品」から何か気づきを得られるだろうか。
「カテゴリ」の方が良いのか。
気づきを得るためのこのような変数の組み合わせが「選別」です。

更に、変数間の関係性を見ていく場合、変数が多くなれば指数関数的に組み合わせが増えてしまい、もはや人間の力では選別は不可能で「多変量解析」などといった手法でないと分析できなくなりますが、これまた特定のスキルが必要です。

分析の民主化

先述のとおり、特定の人材に依存する要素は極力少なくする必要があると我々は考えていて、ここに切り込むポイントがあると考えています。変数設定を恣意的に行う必要はなく、あらかじめ決まった方式にすれば、誰でも実践できるのではないか。
もちろん企業が行う分析ですので、まず「売上」的な変数をスタートとし、売上に関係する他の変数を探し、その変数に関係するさらに他の変数を・・・という掘り下げ式のステップでよければシンプルかもしれません。実際にこのステップは王道です。

その場合ですが、「売り上げに大きく貢献するセグメントは40代女性、地域は◯◯が多く世帯年収は◯◯◯万円〜◯◯◯万円、家族構成は・・・」といったような、「性別」「年代」「収入」といったデモグラフィック属性という変数群にフォーカスしがちです。
従来の商品開発がこのようなデモグラフィック属性によるセグメンテーションにある程度立脚してきたのは事実ですので、商品特性によってはこの方式で問題ないかもしれません。消費者の多様性が強まっているといっても、究極に多様性に追随していっては細分化される一方で、製造ロットや在庫管理等の問題でビジネスが成り立ちづらいというのも理解できます。

デモグラフィック依存

ここにもう一つの切り込めるポイントがあります。
我々は、「デモグラフィック属性主体のセグメント:その擬人化(ペルソナ化)」よりもいい方法があるかもしれないということを申し上げたいのです。

デモグラフィック属性のかなりの部分が同じだからといって、趣味嗜好は同じになるでしょうか。性別、年齢、職業、年収、家族構成、居住地域がほぼ同じなら、趣味嗜好は同じでしょうか。そうはならないはずです。デモグラフィック属性と趣味嗜好、ひいては価値観の相関は強いとは言えないからです。

我々は、消費行動には「価値観」が影響すると確信しています。マーケティングの真打ちは「価値観マーケティング」だと考えています。「価値観」を変数として扱うことができれば、定量的に定性要素を扱えるようになるでしょう。

価値観の変数化のお話はまた別の機会でも述べたいと思いますが、いったん定量分析と定性分析の話に戻ります。

定性分析

定性分析はといえば、代表的なのはテキストマイニングです。「誰が、何を言った(書いた、等)」の「何」が分析対象となります。

ここでの「何」は、人が語ったり記載したりした文章です。文章を個別に読み込んで意味を理解していくことは可能ですし、日々なされていますが、統計的に処理するためには何らかの形で「変数化」する必要があります。

そこで「形態素解析」というプロセスが入ります。文章を品詞に分解し、変数化します。そのまま品詞に分解すると膨大な数になり、解析が大変なので、何が重要な変数なのかを選別するといったスキルが必要になってきます。

その上で、重要性の高い「キーワード」を見出し、気づきを得るというステップになります。

例えば、「優良顧客と関係が強いキーワードは◯◯◯◯と◯◯」といったアウトプットから気づきを得るというシーンです。

ただ日本語では「言い回し」といった、表現のあり方が重要だったり、「表記ゆれ」といって、意味は同じでも表記が異なるケースが多かったり、同音異義語などは前後の文脈で理解しないと意味がずれてしまう(「はし」とひらがなで記載されているだけと「橋」「箸」「端」のどれか分からない)という特有の難しさがあったりで、とかく大変です。つまり、単語に分解して統計処理を行っただけでは精度に不安が生じるケースもままあるということです。

定量×定性のハイブリッド

定量分析、定性分析それぞれ突き詰めようとすると特有のスキル、経験が求められるということはお分かりいただけたかと思います。ただもし、これら別々とみなされていた分析方法の「いいとこどり」ができ、それによって「スキル、経験」の必要性を低減できれば・・・。

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顧客の意思決定の中でも重要なのは商品やサービスの「購入」です。
購入に至る前の行動としてはAIDMA、AISASといったモデルで心理プロセスが知られていますが「Attention(注意):広告を見た」「Interest(興味):関連するWebページを見た」といったデータが取得できれば、これらは購入という意思決定の要因の手がかりとなる行動データとして活用できます。

ケース1

例えばiPadを取り上げてみましょう。
「iPadはどういう商品」なのかを語ろうとすると「薄い、軽い、ビデオ、カメラ、メール、インターネット、音楽、動画・・・」といった単語が頭に浮かんできます。これらは全て、アップル社がiPadを説明する文章中に出てくるものです。

iPadが「欲しい」と思う要因は人それぞれだと思いますが、上記の文章中のどこかにあると考えることができます。つまり、ある商品について「欲しい」という心理要因や「購入しよう」という意思決定要因の手がかりは、その商品の説明文章中の単語にある、という捉え方ができると我々は考えました。

定量分析では「iPad」という商品名はそれ自体が変数になり得ますが、我々はいったん、iPadを説明文章に置き換えています。その次に形態素解析を行って、文章中の単語を抽出し、iPadを単語の集合体に置き換えています。

このプロセスにより、iPadという一つの変数が数百の単語、つまり数百の変数に増幅されることになります。iPadが欲しいと思う人は、これら数百の単語のどれかに反応しているという考え方です。その考えを下敷きにして「購入した」顧客へ、数百に変数化された単語をすべて付与します。あたかも「タグ」を付けるかのように人へ単語を付与していきます。

ケース2

また購入前のプロセスにおいても、たとえばWebページを閲覧した、メール内のURLをクリックした、レビューや意見を書き込んだといった行動データを活用して、同様に単語を人に付与できます。

メールへの反応を例に取ります。
メールマガジンを企業が発行する際には、出来るだけコンパクトに記載して「詳しくはこちら」と自社WebページURLのリンクを設定し、クリックの有無によって反応度合いをはかるということが一般的になされています。

「今回のメールのCTRは◯%だった」というのは指標としては定点観測的に重要ですが、今後は「誰がどのURLをクリックしたか」の重要性が高まってきます。
といいますのも、読者がURLをクリックしてさらに詳細な情報を取得しようと意思決定したのは、そのきっかけとなる文章に反応したからだと理解すれば、ここでも意思決定の要因が単語の形で取得できるということになるからです。

うまい書き手はできるだけクリックしてもらえるように、URLの直前の文章(リード文)を工夫して書きます。URLのクリックはその直前のリード文への反応であるといえます。
iNSIGHTBOXでは、メール文中のURLをクリックした顧客へ、直前のリード文中の単語を付与していくという処理を行います。このプロセスは、「URL」という一つの変数を複数の単語という変数へ「増幅」していることになります。他にもWebページ閲覧といった「文章への反応」データが蓄積されてくれば、顧客の意思決定の手がかりを顧客に付与された「タグ(単語)」のあり方で理解できてきます。

上記2つのケースを図に表わしたものがこちらです。

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iNSIGHTBOX(インサイトボックス)

このように、定量分析では単にひとつの変数だった「商品名」や「URL」を、テキストマイニングの要素を加味して複数の単語へと変数の増幅を行い、定量✕定性のハイブリッド分析を実現しているのがiNSIGHTBOXです。

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利用する際には変数を指定することなく、商品の説明文章やメール本文といった「テキスト」をアップロードするだけで、これまで述べたような変数の増幅やタグの付与は自動で行われ、解析はアプリを使って誰でも簡単に実践できます。

タグクラウド

iNSIGHTBOXでは、顧客それぞれに数千の「タグ」が数値をともなって付与されているデータ(タグスコア)が構成されます。このタグスコアを使えば、「モノ(商品)」「ヒト(顧客)」を「タグ」を介してマッチングできます。

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iNSIGHTBOXの「タグクラウド」によるマッチングでは、様々な業種の企業で実績が出てきております。詳しくは弊社事例ページをご覧いただければと思いますが、CTRが23倍になっている例もあります。

単に「商品を買った」という事実だけではなく、「どういう単語に反応した」というデータから意思決定の要因に近づくことができるという点が、従来の分析サービスと決定的に異なります。
仮に購買データが存在しない、例えば全くの新商品であったとしても、「タグ」によるマッチングならば反応しそうな顧客が見いだせます。これは従来の協調フィルタリングなどのレコメンデーション技術とは根本的に異なる点です。これが定量✕定性のハイブリッド分析のパワーです。

 

以上、行動データを通じた顧客の意思決定の要因に対する理解が「タグ」を通じて実践できるということをご説明いたしました。
途中で少し触れましたが、消費行動には「価値観」が影響すると我々は考えております。

  • 意思決定の要因というよりは、もっと前の段階の「あれいいな、欲しいな」と思うときの「クセ」みたいなもの
  • 体質は遺伝子により定められているように、人の心の「クセ」も遺伝子のようなものに左右されているのではないか

次回以降で、その辺りのお話をさせていだだきます。

※iNSIGHTBOXはサービスを終了いたしました。価値観での顧客セグメンテーション「Societas」は引き続きサービスを提供しております。

iNSIGHTBOXの事例

※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。

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