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メールマーケティングのスマートフォン対応が難しい5つの理由

前回では、「顧客管理(CRM)に今すぐスマートフォン対応が必要な4つの理由」をご紹介しました。今回は、まずは「スマートフォン対応とはなにか」を整理し、特に「メールマーケティングのスマートフォン対応」についてご紹介していきます。

今回の記事は、

  • まだスマートフォン対応に着手していない
  • これからスマートフォン対応を実施予定
  • 「Web」「メール」のどちらかしかスマートフォン対応を実施していない

というマーケティング・販促担当者にオススメです。

なぜ少ない?メールマーケティングのスマートフォン対応に関するノウハウ情報

インターネットの普及と足並みをそろえるように、メールというチャネルは顧客とのコミュニケーションツールとして不可欠なものになりました。切っても切れない「Web」と「メールマーケティング」。この両方のスマートフォン対応を行うことが、本当の意味でのスマートフォン対応と言えます。それにも関わらず、スマートフォン対応としてよく挙げられるのは「Webに関する対応」がほとんどで、「メールマーケティングに関する対応」は見落とされがちです。

そのため、Webサイトやフォームのスマートフォン対応については、あちこちに記事やノウハウが掲載されていますが、メールマーケティングに関するスマートフォン対応について記載されている記事はあまりありません。それは、Webよりメールマーケティングのスマートフォン対応の方が難しく、Webほどのノウハウも持つ事業者も少ないからです。

実は、メールの配信先がスマートフォンだからといって、簡単にHTMLメールが送れるわけではありません。意外と知られていない事実ですが、弊社の検証では、特にOSがAndroidのスマートフォンの場合、HTMLメールはきちんと表示されていない可能性が高いという結果が出ています(2014年4月末現在)。メールがきちんと表示されなければ、メールマーケティングで期待している成果にも影響を及ぼしてしまいます。また、お客様にご迷惑をおかけする危険性もあります。

必要なのに難しい「メールマーケティングのスマートフォン対応」。その理由は、上記以外にも5つあります。対策をするためには、まずはなぜ難しいのかを知らなくてはなりません。

理由(1)配信できるメールの形式が多い

「配信できるメールの形式」とは、一般的にはTEXTメールかHTMLメールかということです。
スマートフォンやフィーチャーフォン向けのメール配信の場合、この2種類に加えて「デコメール(※)」も選択ができます。
よって、スマートフォンもしくはフィーチャーフォン向けにメール配信を行う場合は、PC向けとは違って3種類の配信形式が可能になります。

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理由(2)スマートフォンで受信できるメール種別の種類が多い

「メール種別」とは、メールサービスそのものの種別です。SMS・MMS・Eメールの3種類があります。

  • SMS
    ショートメッセージサービスと呼ばれるもので、電話番号だけでメッセージが送れるメールサービスです(画像の添付は不可)。
  • MMS
    一各キャリアの携帯用メールサービスで、画像の添付ができます。例えば、SoftBankのiPhoneの場合、「@softbank.ne.jp」のドメインのメールアドレスです。
  • Eメール
    一般的なパソコン向けのメールサービスです。同じく、SoftBankのiPhoneの場合で例えるなら「@i.softbank.jp」ドメインのメールのことです。

MMSとEメールの設定についての注意事項
スマートフォンではメールに関するアプリは「メッセージ/メール」や「メッセージ/Eメール」などのアイコンで表示されており、それぞれ受信できるメール種別が異なる。また、それぞれユーザー側で何を受信するかを設定できるものがある。
例)iPhone:「メッセージ」アプリ=SMSとMMS、「メール」=Eメール
     Android:「メッセージ」アプリ=SMS、「Eメール」=MMSかEメール(ユーザーで設定)など
     auの「@ezweb.ne.jp」ドメインはMMS扱いにするかEメール扱いにするかを選択できる(ただし、MMS/Eメールの両方を設定することはできない)。

理由(3)ユーザーの選択肢が多い

「携帯電話キャリア」「機種」「OS(オペレーションシステム)」「メールアプリ」など、ユーザー側で選べる選択肢が非常に多いことも、メールのスマートフォン対応が難しくなる原因のひとつです。

  • 携帯電話キャリア
    日本でいうdocomoやau、SoftBankなどの通信サービスを提供している会社のことです。
  • 機種
    各キャリアで利用できる電話機(スマートフォン)の種類のことです。
  • OS
    コンピューター全体を管理するソフトウエアのことで、パソコンではWindowsOSやMacOSなどがよく知られています。スマートフォンにも、たくさんのOSが用意されており、iPhoneに搭載されている「iOS」や「Android OS」などが有名です。
  • メールアプリ
    スマートフォンでメールを見るためのアプリケーションのことです。スマートフォンを購入した時にすでにインストールされているものもあれば、購入後にユーザーが新たに追加インストールできるものもあります。

理由(4)「理由(1)×(2)×(3)の全てのパターン」での検証が難しい

「携帯電話キャリア」が増えることはなかなかありませんが、「新しい機種」については各キャリアから四半期に1回くらいのペースで発売されます。また、「OS」は常にバージョンアップされています。

「メールアプリ」も、常に新しいものがリリースされ、既存のものでも適時バージョンアップされています。 機種やバージョンやメールアプリが違えば、どのようにメールが届き、表示されるかが変わってきます。

このように、ユーザーの選択肢が増えれば増えるほど、どのメール種別に対してどんなメール形式で送ったメールが、「どのキャリア」の「どんな機種」の「何のOS」を搭載しているスマートフォンに入っている「どのメールアプリ」で見られているのか、という「全てのパターン」を試し、きちんとメールが配信されているか・表示されているかを確認する(検証する)ことが難しい状況になっているのです。
また、検証するパターンや範囲が広がれば広がるほど、メール配信作業のコストもかさみます。

理由(5)受信時の電波状況が把握できない

スマートフォンはモバイル端末なので、どのような電波状況で配信したメールが受け取られるのかの想像がつきません。Wi-Fiの環境下であれば簡単に受け取れる容量のメールも、LTEや3G回線の電波が悪い状況であれば容量が重すぎて届かないこともありえます。

いつどんな環境でユーザーがメールを受け取るのかがわからない以上、配信するメールコンテンツの容量についても考慮が必要になります。

なにから始める?

上記で挙げた「デコメール(※)」や「フィーチャーフォン(ガラケー)」という日本固有のものが存在しているために、海外の先進的なスマートフォン対応の手法(たとえば、レスポンシブWebデザインでのHTMLメール配信など)をそのまま採用しても、正確に配信されないケースもあります。

このように、スマートフォン対応が進んでいる海外の事例を単純に輸入するだけでは対応として不十分になる可能性が、さらにメールマーケティングのスマートフォン対応を難しいものにしている側面もあります。

スマートフォン向けのメール配信の場合、(1)~(5)の状況を把握した上で、配信対象や配信するコンテンツを企画し実行する必要があります。また、その実践方法と、まず何から着手するべきかが、次回からのテーマです。

なお、本ブログと同じようなスマートフォン対応に関するノウハウ本やサイトを参考にされる際、「いつ」「どういう環境(OSなど)」で検証された結果の手法なのかをご確認のうえ、ご利用されることをおすすめします。
また、本ブログの情報については、「2014年5月時点」の「OS:Android4/iOS7」で検証されている内容ですが、主な機種・アプリに限られており、全ての機種やアプリの検証が網羅されているわけではありません。弊社では、メール配信の機能を持つクラウドサービス(導入実績8,000件以上)を提供しており、メール配信の代行サービスもご提供しております。そのなかでの検証結果の範囲となります点、ご了承ください。

※「デコメール」は株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの登録商標です。

※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。