成果を出す!アンケート作成業務に必須の7つのポイント【レポート編】
第1回の「事前準備編」では、「アンケート業務の根幹となる考え方と実施前の7つの注意点」について、第2回の「アンケート作成編」では、「調査票の設計時のポイントとアンケートフォーム作成時のポイント」についてご紹介しました。
そして、今回は最終回。アンケート結果の集計やレポートの作成、結果の振り返りのポイントについてご紹介します。
この記事は、
- アンケート回答がなかなか集まらない
- アンケート結果をどのように活用すれば良いかわからない
- アンケートの集計、レポーティングが大変なので効率化したい
- もっと良いアンケートシステムやサービスがないか探している
などの課題を抱えておられるマーケティング・制作担当者様にオススメです。
(1)アンケート業務 全体の流れ
成果を出す!アンケート作成業務に必須の7つのポイント
- 目的・目標・ゴールの決定 ・・・・・ 第1回
- 実施方法の決定 ・・・・・・・・・・ 第1回
- 調査票(設問)設計 ・・・・・・・・ 第2回
- アンケート用紙・フォームの作成 ・・ 第2回
- データ集計 ・・・・・・・・・・・・ 今回の記事で詳細ご紹介
- レポート作成 ・・・・・・・・・・・ 今回の記事で詳細ご紹介
- 目的・ゴールの振り返り ・・・・・・ 今回の記事で詳細ご紹介
成果を出すアンケートにするためには、この7つの工程のうち「1. 目的・目標・ゴールの決定」が最も重要です。
※まずは第1回の記事を読んでから、今回の集計・レポート作成のフェーズに入られることをおすすめします。
(2)データ集計に関する2つのポイント
①集計しやすいアンケート項目設計が必須
集計を効率的に行い、そこから読み取れた結果を見やすくレポーティングするためには、アンケートの設問や選択肢の設計が、集計しやすい状態である必要があります。
集計しやすい設計にするコツについては、前回記事の「(2)調査票(設問)設計のコツ」と、「(3)回答形式と選択肢について」で詳しくご紹介しましたが、そこで「単一選択型(以下、SA)で選択肢を設計する」ということをおすすめしました。選択肢をSAで設計しておけば、後でご紹介する初歩的な集計方法の「単純集計」と「クロス集計」が非常に行いやすい回答データが得られます。また、さらに集計しやすいアンケートを設計するためには、集計とは何かを知る必要があります。
②集計の種類(単純集計/クロス集計)を知る
大前提として、集計物(集計結果)というのは、『選択肢が何人に選ばれたかという実数を見る』こと以上に、『回答者(の頭数)のうち、何割がその選択肢を選んだか』を見るものです。また、アンケート集計での代表的な集計方法では、「単純集計(GT集計・Grand Total・全体集計など)」と「クロス集計」が挙げられます。
単純集計とは
「単純集計」とは、各質問項目別に、回答者(登録)全体の度数(n数)とパーセンテージ(%)を算出した集計です。主に全体の傾向をつかむことを使用目的とし、。母数や無回答などを見て、項目の対象者の条件をチェックする時にも使用します。レポート上では、図1のように表されます。
単純集計でも、さまざまなことが読み取れますが、さらにアンケート結果の深堀りをする場合は、属性別や質問項目別でかけ合わせて詳しく集計する「クロス集計」を行うケースがほとんどです。
【図1】単純集計のイメージ(データは全てダミーです)
クロス集計とは
「クロス集計」とは、複数の設問(項目)を縦横に掛け合わせて(クロスして)集計するもので、性別や年代などの属性や、特定の設問(項目)の回答別に傾向を見ることが出来ます。項目を1つの表の表頭と表側に分け、それぞれのカテゴリーが交わるセルに、該当する回答数(サンプル数)や回答比率を記載した集計表です。
【図2】クロス集計のイメージ(データは全てダミーです)
例えば、「男性」と「女性」では『コンビニで買い物をする頻度』はどの位違うのかを知りたいとき、上の図2のように、表側に「性別」、表頭に「コンビニで買い物をする頻度」となるように配置します。この時の「性別」を『説明変数』、「コンビニで買い物をする頻度」を『目的変数』といい、目的変数を説明変数で説明するような因果関係になるように配置します。説明変数を主語にしてデータを読み取ります。
(3)レポート作成に関する4つの注意点
①グラフの種類に要注意
グラフとは、データの可視化をするために作成するものです。集計結果をわかりやすく表現するためには、設問のタイプに適したグラフの種類を選ぶ必要があります。間違った種類を選ぶと、結果に意味がなくなるので要注意です。また、同じ結果でも見せ方によって分かりやすくすることもできます。
【図3】集計の種類と目的に応じたグラフの種類
②集計結果に適したグラフの選択が必要
単純集計のグラフでよく利用されるのは、単一選択型(以下SA)項目の集計結果が「円グラフ」もしくは「帯グラフ」、複数選択型(以下MA)項目の集計結果が「折れ線グラフ」もしくは「棒グラフ」です。
クロス集計では、SAが「帯グラフ」、MAが「折れ線グラフ」「棒グラフ」で、よく表現されます。
【図4】クロス集計結果のグラフ化イメージ
単純集計もしくはクロス集計の集計結果をグラフ化する際、図3の「目的」と「よく使うグラフ」を念頭にレポートを作成すると、わかりやすくなります。
③集計結果の読み取り方・表現に関する注意
全く同じスコアのデータを「度数のみ」と「率(%)」で、それぞれ数表/グラフを作成しておくと、集計データの読み違いや誤解を呼ぶ表現を避けられます。
【図5】数表・グラフに「度数のみ」使用
【図5】の「度数のみ」のグラフを見る限り、一見20代の男女は同数であり「20代は男女に差がない」ように感じます。
【図6】数表・グラフに「率(%)」を使用
一方、【図6】の「率(%)」のグラフを見ると、20代をみると男女に差があることがわかります。
「あるブランドのチョコレートを買ったことがある」人の内訳を見たと仮定した場合、「度数のみ」からは、「20代は男女ともに人気に差がない」と受取ってしまう可能性がありますが、実際は、男女の母数(300人と700人)に違いがあるため、 「率(%)」でみると20代については男性の方に圧倒的に人気が高いことがわかるようになります。
このように、集計結果を読み取りグラフや表にまとめる際は、誤解を招かないように、「度数のみ」と「率(%)」でそれぞれ数表/グラフを作成することが重要です。
④複数選択型(MA)項目を単純集計(GT)する場合の注意
複数選択型(MA)項目を単純集計(GT)する場合、集計時の母数を間違えると下の二つの例の通り、全く異なるものになってしまいます。
■MA項目の単純集計に関する3つの注意
1. 設問の目的・最終的に導き出したいことは何なのか
2. 集計の対象となるMA設問項目は、「必須項目」なのか「任意項目」なのか
3. 集計の対象となる項目は複数選択型(MA)なので、「回答対象者」の数と「回答数」には
ズレが出る
MA項目の単純集計を行う際には、かならずこの3点に注意しましょう。
以下は、20代女性をターゲットにしたブランドAについて、そのターゲットとなる20代女性1000人に対してとったアンケート結果であると仮定します。ブランドAを制作・販売するa社が、ターゲットからどれくらいの好意度を得ているのかを調査する目的で設定されたものです(※MA項目の単純集計に関する3つの注意の1に当たります)。
この時、設問自体は必須項目のため、「有効回答数」は「回答対象者」と同じ数の度数(=1000)になります。「有効回答数」とは「その設問に回答があった数」のことなので、この必須項目に対して「回答対象者」の全員が回答してくれた、という意味です。仮に、任意項目の集計の場合は、この「有効回答数」と「回答対象者数」にはズレがでるので注意してください。
■正しい例(有効回答者数を集計母数にした場合)
下記の場合、ブランドAのターゲットの9割が好きと答えている(= 20代女性のほとんどが好き)という強力なブランドであると読み取れる。
■間違った例(回答数の足しあげを集計母数にした場合)
同じ結果でも集計母数を間違えると・・・
見たいのは『回答者のうち何割がその選択肢を選んだか』なので、ブランドAを好きな人が3割弱(=好意度としてはふつう)であるように見えますが、これは今回の目的(注意1)にマッチしていない誤った読み取り方になります。
この場合のように、単なる回答数の足し上げを集計してしまうと『この設問についたチェック数のうち、3割弱がブランドAだった』ということでしかなく、本来見たい『回答者のうち何割がその選択肢を選んだか』ということではありません。「全チェック数」のうちブランドAが何割だったかは、この場合では、本来見たいデータではありません。
このように、MA項目の単純集計の際には、目的と集計する対象について熟考する必要があるので、要注意です。3つの注意点を念頭において集計をすすめるようにしましょう。
※平均回答数(1人当たり平均して何個チェックをつけたか)を見る場合など、回答数の足しあげを使う場合もあります。しかし、通常の場合は、まず必要なのは、上記のように「回答者のうち何割がその選択肢を選んだか」であると考えると良いでしょう。
※以下のような課題をお持ちの場合であれば、ぜひリンク先をご参照ください。
・イベント来場者にアンケートを実施したい
(4)アンケート結果の振り返りのポイント
アンケートの集計をし、各項目のグラフ化や注釈入れが完了したら、レポートの最後の「振り返り」を行います。以下の2点は必ず確認し、レポートにも結果を記載しておきましょう。
- アンケート開始前に設定した「目的」「ゴール」「目標」を達成できたかどうか
- 1の結果から、具体的に何をいつまでに実施するべきかの提言
アンケート結果から導き出された結果をもとに、具体的なアクションにつなげ成果につなげるためには、この振り返りが最も重要です。冒頭で、成果を出すアンケートにするためには、この7つの工程のうち「1. 目的・目標・ゴールの決定」が最も重要であると書いた理由はここにあります。アンケートで得た定量・定性データとその知見を、実際に自社の業務改善にいかしてこそ、アンケートをやる意味があるのです。ここでご紹介したさまざまなポイントやコツを、ぜひご活用ください!
成果を出す!アンケート作成業務に必須の7つのポイントシリーズ
- 第1回【事前準備編】
- 第2回【アンケート作成編】
- 第3回【レポート編】(本記事です)
※この「成果を出す!アンケート作成業務に必須の7つのポイントシリーズ」は、弊社のデータソリューショングループマネージャー・吉田敏弘の監修記事です。
吉田の記事は、こちらよりご覧になれます。
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※記載されている内容は掲載当時のものであり、一部現状とは内容が異なる場合があります。ご了承ください。