顧客セグメンテーションとは?マーケティングの基本手法を解説
マーケティングの基本とされる手法のひとつに、「顧客セグメンテーション」があります。目新しいものというわけではないのですが、Webマーケティングやデジタルマーケティングが注目されている現在においても重要な意味を持ち、むしろその役割は大きくなってきています。
ここでは、顧客セグメンテーションとは何か、概要や目的、分類方法、分析手法などについて解説します。
<目次>
顧客を特性や傾向でグループ分けする顧客セグメンテーション
顧客セグメンテーションとは、顧客を類似した特性や傾向によって複数のグループに分類することを指します。
セグメンテーションは、日本語では「区分」や「区分け」を意味し、マーケティング分野では、市場に存在する不特定多数の顧客を分析して分類することを表すために使われる言葉です。分類してできた小さな顧客グループを「セグメント」、顧客を分類・類型化することを「セグメントする」「セグメント化する」と表現することもあります。
市場セグメンテーションとの違い
同じセグメンテーションという表現を使った言葉でも、「市場(マーケット)セグメンテーション」と「顧客セグメンテーション」では、微妙にニュアンスが異なります。両者とも近い意味ではあるのですが、近年、顧客セグメンテーションは、収集・蓄積した顧客データを分析して有効活用するという意味合いでよく使われるようになりました。このことは、Webマーケティングやデジタルマーケティングが一般化して、以前よりも効率的に顧客データが収集できるようになったことと関係があります。
これに対し、市場セグメンテーションという言葉は、市場を分析して細分化し、ターゲットを定めて、そこに向けて商品を開発し経営資源を集中投下するといった文脈でよく出てきます。
顧客セグメンテーションの始まり
顧客セグメンテーション自体は、新しい概念というわけではありません。顧客セグメンテーションは、アメリカの自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)社の社長を、1923~1937年に務めたアルフレッド・スローンが提唱した経営手法がもとになったとされています。
スローンは、所得階級によって車に対するニーズが異なると考え、セグメントごとのニーズに合致した車種を複数作って市場に供給する生産スタイルを確立しました。そのことによりGMは、単一の車種を大量生産するスタイルのフォードとの競争に打ち勝ち、当時、業界トップの座に躍り出たとされています。
STP分析との関係
1970年代になって、マーケティング論の権威であるアメリカの経営学者フィリップ・コトラーが、「STP分析」というマーケティング手法を提唱しました。STPとは、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3つの頭文字を取った略称です。
STPの基本的な考え方は、セグメンテーションで顧客または市場を細分化し、ターゲティングで対象とする顧客を決定、ポジショニングでは競合他社との関係性を含めた自社の立ち位置を明確にするというものです。必ずしもこの順番どおりに行われなければならないというわけではありませんが、いずれにしろセグメンテーションはSTP分析の基本要素のひとつを担っています。
顧客の購買行動がWebサイト上で展開されるようになっても、STP分析は有効なフレームワークとされています。むしろ、顧客に関するデータを取得しやすい現代マーケティングにおいてこそ、自社商品に合致した顧客を見つけ出し、自社の独自性や差別化のポイントを明らかにして顧客にアプローチするというSTP分析の方法論が役に立つと考えられるでしょう。
顧客セグメンテーションの目的
顧客セグメンテーションは何を目的にして行うものなのでしょうか。ここではあらためて、顧客セグメンテーションの3つの主な目的をご紹介します。
顧客ニーズ、購買行動の多様化に対応するため
かつて大量生産・大量販売が成り立っていた時代には、商品の買い手は特に対象を絞る必要のない一般大衆=不特定多数の消費者として認識されていました。開発した商品を、CMや街頭広告などのマスメディアを使い、同じ方法で宣伝して売る手法は「マスマーケティング」と呼ばれます。マスマーケティングが主流だった時代は、1970年代のオイルショックによって世界的なインフレが起きた頃に終わりを告げたといわれます。
その後、ほとんどの世代が必要なものをそろえている成熟市場の時代になると、顧客ニーズも購買行動も急速に多様化していきました。今では、市場全体が同じニーズを持っていることはほぼなく、顧客層による違いがあるのは当然とされています。
現在では、商品を売るには顧客を分類して分析し、それぞれのニーズに合った別々の商品を用意し、購買行動に合ったプロモーションをすることが不可欠です。顧客セグメンテーションは、そうした流れの中から必然的に重要視されるようになりました。
顔の見えない顧客の特徴を把握するため
不特定多数の消費者というのは、いわば顔が見えない存在です。誰に向かって商品を売るのかが曖昧なままでは、効果的なマーケティング戦略は立てられません。顧客セグメンテーションはその状態を脱し、顧客について知るための手法のひとつでもあります。
顧客セグメンテーションを用いれば、市場にいる顧客を分類してそれぞれの特徴を整理することが可能です。その上で、ニーズについて分析して把握し、どのような商品が求められているのか、どんなプロモーションをすれば相手の心に響くのかを考えられます。
STP分析のフレームワークにのっとれば、顧客セグメンテーションに加えてターゲティングとポジショニングも併用することで、顧客に対し正しく向き合えるようになるわけです。
個々の顧客に対してアプローチするため
インターネットやスマートフォンの登場により、今や顧客は以前よりも主体的に大量の情報に接しています。顧客ニーズの多様化もさらに進み、同じ個人のニーズですらその時々によって常に変化しています。
そこで企業側に求められるのが、個々の顧客が欲する情報の提供です。顧客セグメンテーションでは顧客を類型化しますが、その先にはさらに顧客一人ひとりにカスタマイズしたサービスを提供するOne to Oneマーケティングがあります。
Webマーケティングやデジタルマーケティングでは、顧客の好きなものや興味のあるものの傾向、購買に関連する行動を把握し、「今、何が求められているのか」を判断して、個々に最適なアプローチをすることが重要視されています。顧客セグメンテーションやSTP分析、One to Oneマーケティングなどを用いれば、顧客の心をつかんでロイヤルティーを高め、継続的な関係を築くことが可能になるでしょう。
顧客セグメンテーションでよく用いられる4つの分類方法
顧客セグメンテーションでは、どのような方法で顧客を分類するのでしょうか。顧客を分類する切り口(軸)は自由に設定可能ですが、一般的には次の4つの分類方法(変数)が知られています。
デモグラフィック(人口動態変数)
デモグラフィック(人口動態変数)は、顧客が帰属する人口統計学的属性を切り口とした分類方法です。「基本属性」といわれるものとほぼ同じです。例えば、下記のような項目が挙げられます。
<デモグラフィックの項目>
・年齢
・性別
・家族構成(既婚や未婚、子どもの有無など)
・職業
・最終学歴
・年収
ジオグラフィック(地理的変数)
ジオグラフィック(地理的変数)は、顧客が居住(または勤務)している地理的な要素を切り口とした分類方法です。地理的条件が異なれば経済状況や文化も変わり、売れ筋商品などにも影響します。
<ジオグラフィックの項目>
・世界または日本国内の地域・地方
・人口密度
・気候(気温、湿度、降雨量など)
・発展度
・文化、生活習慣
・宗教
サイコグラフィック(心理的変数)
サイコグラフィック(心理的変数)は、顧客の性格や価値観、ライフスタイルなど、心理的要素を切り口とした分類方法です。以前は定量化するのが難しいとされていましたが、インターネットを利用したアンケートなどにより精度が高まっています。
<サイコグラフィックの項目>
・パーソナリティー
・ライフスタイル
・社会階層
ビヘイビアル(行動変数)
ビヘイビアル(行動変数)は、顧客の行動パターンを切り口とした分類方法です。現在ではWebサイトのアクセス解析や購入履歴などにより、顧客の行動を詳細に確認することができます。
ビヘイビアルは顧客それぞれの実際の行動を示すものなので、個々の顧客の次の行動を予測し、One to Oneマーケティングに結びつけるのにも役立ちます。
<ビヘイビアルの項目>
・購入場所(購買チャネル)
・購入日時
・購入商品
・購入回数
・購入頻度
・最終購入日
・閲覧Webページ
・サイト滞在時間
顧客セグメンテーションの評価方法「4R」
顧客セグメンテーションによって顧客を分類した後、どのセグメントをターゲットに設定するかを判断するには、セグメントの有効性を評価する物差しが必要です。「4R」とは、そのための4つの指標です。それぞれの指標がどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
Rank(優先度)
Rankとは、各セグメントに対し、重要度に応じた優先度をつけられるかどうかをチェックすることです。どのセグメントも同等程度に重要といった状態では、ターゲットを定められないからです。
Realistic(有効な規模)
Realisticでは、対象となるセグメントに十分な売上や利益を得られる規模があるかどうかをチェックします。規模が小さく、さほど利益を生み出さないようなセグメントを相手にビジネスをするのは、現実的な選択ではありません。
Reach(到達可能性)
Reachでは、セグメントに属する顧客に自社の商品と商品に関する情報を確実に届けられるのか、何らかの手段を用いてコンタクトがとれるのかチェックします。到達しやすい手段が乏しいなら、ターゲットとして設定するのは難しいでしょう。
Response(測定可能性)
Responseは、顧客の反応を計測したり分析したりすることができるのかをチェックすることです。測定が困難なセグメントだと施策に効果があったのかがわからず、次の手や改善策を考えることもできません。
顧客セグメントの分析手法
顧客セグメンテーションによって分類したセグメントを分析する手法についてもふれておきましょう。ここでは、代表的な分析手法を3つ紹介します。
RFM分析
RFM分析は、「Recency(直近購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」という3つの指標で顧客の購買行動を分析し、顧客をランク分けする手法です。
例えば、RecencyとFrequencyのランクが高い顧客は、直近に商品を購入していて購入頻度が高い顧客で、優良なリピーターだと判断できます。RFM分析を用いると購入確率の高い顧客を選別して、特性に応じた施策を打てるようになります。
CPM分析
CPM分析は、細かい指標を用いて、顧客を10のグループに分類する手法です。グループは大きく「購買が継続している現役」組と「購買しなくなった離脱」組に分けられます。
CPM分析はさまざまな特性を持つ顧客を優良顧客へと育成し、長期的な視点で売上をアップさせることを目的としてよく用いられます。
デシル分析
デシル分析は、全顧客を購入金額の高い順に10等分してグループ分けし、各グループの購入金額、購入金額比率、累積購入金額比率、1人あたりの購入金額などを算出して分析する手法です。
デシル分析によって、分類した各グループが全体の売上にどのくらい貢献しているかがわかります。貢献度が高い優良顧客グループを把握できれば、そこに施策を集中させ、効率的にセールスを伸ばすことが可能になります。
顧客セグメンテーションとCRMの関係
顧客セグメンテーションを行うときに問題となるのが、顧客データをどのようにして収集し管理するかです。そして、顧客データを管理するための代表的なツールとして挙げられるのがCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)です。
CRMの最も主要な機能は、顧客に関するさまざまな情報を一元管理することが挙げられます。顧客の年齢や性別、連絡先、会員種別などの「顧客属性データ」、購入日や購入金額、購買履歴などの「顧客行動データ」を顧客データベースに格納して、管理することが可能です。
CRMで顧客データを管理・整理し、分析ツールでデータを分析して顧客セグメンテーションにもとづいた施策を考えるといった流れを作れば、手持ちの、あるいは新規に収集した顧客データを有効に活用できます。One to Oneのアプローチをするための仕組みづくりにおいては、CRMのメールマーケティングのための機能などが役立つでしょう。
顧客セグメンテーション成功のカギは、適切な顧客データの管理にあり
市場の成熟によって、顧客ニーズ、顧客行動が多様化し、顧客一人ひとりに応じたコミュニケーションが必須とされるようになりました。そのため、さまざまな顧客に適したマーケティングを行うために、顧客を分類する顧客セグメンテーションの重要度が増しています。顧客ニーズを捉え、顧客の特徴を明らかにして最適なアプローチを実現するため、まずは顧客データをしっかりと管理することが不可欠です。
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