Synergy!ACADEMY運営事務局です。12月8日(火)に「第1回 iNSIGHTBOXカンファレンス」を開催しました。
当カンファレンスは、iNSIGHTBOXのユーザー様を中心としたコミュニティです。実務で使える情報を事例やパネルディスカッションを通じて提供し、学びやひらめきの発生に貢献する場として立ち上げました。今回は顧客ポートフォリオ・マネジメント理論やおもてなしCRMで有名なやずやグループ西野様のご講演、また、第一線で活躍されているマーケターをお招きしてパネルディスカッションを実施しました。
第1部:やずやグループ 株式会社未来館 代表取締役 西野博道様 ご講演
「やずやのすべてを知る男」と言われる西野様。2004年に「やずやグループの未来づくり」をミッションとする(株)未来館の代表取締役に就任され、「通信販売」ではなく「通心販売」という言葉を用いるなど、おもてなしCRMの啓蒙活動に情熱を注いでいらっしゃいます。
『売上が下降トレンドになると、「製品ライフサイクルが衰退期に入った」と考えがちだが、それはマーケターにとって都合が良い言い訳である。お客様との関係性が何よりも大切であり、そこで手を抜いていないか?と考えるべきだ』
やずや様では、お客様との関係性をはかる指標として、下記4つをKPIとして設定。論点がぼやけることを防ぐため、細かい数字はできるだけ見ないようにされています。
『集客領域ではきめ細かい対応をしていても、購買後のフォローが行き届かず、お客様を離反させてしまっている企業が多いのが現実ではないか』
「初回顧客を100%よちよち顧客にできれば、それだけで売上は約3倍になる」とCRMの重要性を示される西野様。やずや様では購入後90日間を徹底的にフォローするのだそうです。この期間はさらなる販促活動ではなく、お客様に「買ってよかった」「私の行動は間違っていなかった」と思っていただくための情報提供をされるとのこと。「顧客中心」の考え方を徹底されていると感じました。
西野様、貴重なお話をありがとうございました!
第2部:パネルディスカッション
第2部では、以下5名のパネリストをお呼びし、CRMや価値観マーケティングに関するディスカッションを実施しました。
- やずやグループ 株式会社未来館 代表取締役社長 西野様
- リンナイ株式会社 管理本部 eビジネス推進室 室長 福本様
- 株式会社モリタ マーケティング本部 お客様相談センター 部長 石川様
- 株式会社阪急交通社 ウェブ戦略課 一係長 宇和川様
- ファイザー株式会社 GEPコア・ブランドマーケティング統括部 マーケティングエクセレンスグループ 担当課長 柿本様
【テーマ1】みなさんにとって「顧客」とは?
福本様:「私たちはガスコンロや給湯器のメーカーで、ディーラー様が商流上のお客様です。過去はディーラー様のみを『顧客』と捉えていましたが、ECビジネスを始めたことで、『ディーラー様も、エンドユーザーである一般消費者も、どちらも我々の顧客だ』という感覚に会社全体が変わってきました」
石川様:「当社は歯科医療の現場で使われる機器や材料を扱っている総合商社です。100年もの間BtoBビジネスを展開してきたため、エンドユーザーである医療技術者や歯科技工士の方々の声が届かないという課題に直面しました。そこで3年前にお客様相談センターを設置し、エンドユーザーからの声を集め、メールによる情報提供も開始しました」
柿本様:「私たちは製薬メーカーであり、患者様が顧客。しかしながら、患者様が自ら自由に薬を選ぶことはできません。20万人のターゲットドクター、30万人の薬剤師、看護師も私たちのユーザーであり、適切な情報提供をすることが必要だと考えています」
宇和川様:「我々は『顧客』という言葉はあまり使わず、『お客様』と呼んでいます。“数ある旅行会社から当社を選んでくれる方”が我々のお客様です」
西野様:「私たちは自社の顧客を『やずやの価値観を心地よいと思ってくれる人』と定義しています。こちらからプロポーズしたお客様ですから、『絶対に離さない』という気持ちでいます」
【テーマ2】お客様の価値観をどのように捉えているか?
福本様:「シナジーマーケティングさんと一緒に、エンドユーザーのソシエタスを収集しています。ソシエタスは毎年取り直すのですが、シリーズによっては毎回同じ結果が出るので驚いています」
柿本様:「『カスタマーインサイト』というのはよく使う言葉ですが、顧客像について話をする時に多く使われるのは『40代』『男性』といった属性。我々は、価値観をきちんと見ていきたい。シナジーマーケティングさんのiNSIGHTBOXを使い“人のわびさび”を見ていますが、結果は非常にinterestingです」
【テーマ3】顧客との関係性について、理想と現実は?
宇和川様:「理想は、『一人ひとりのお客様に欲しいと思われる情報をお届けすること』。一方当社では、数千円の日帰りバスツアーのお客様も、高額な海外旅行に申し込んでいただいたお客様も、フラットな対応をしています。一見CRMに反する行動かもしれませんが、それは当社の良いところかもしれないという想いもあります。新聞やDMのマスコミュニケーションがまだまだ根強いことや、商品軸での施策展開が多いことなど、ジレンマも多いのが現状です」
石川様:「当社は市場シェア50%、カバー率90%という高い実績をもっているため、『買っていただけるのが当たり前』という社内の空気が少なからずあります。しかしながらECの台頭もあり、市場競争は厳しくなっている。3年前にCRMをやろうと決め、エンドユーザーへのアンケート結果を、営業がディーラー様へお届けに行くなどの取り組みを始めました。ディーラー様からの反応は良く、アナログの活動も大切だと実感しています。本当は傍でお客様が欲しい情報を細かく把握できればいいのですが、現実それは難しい。iNSIGHTBOXを含めたデジタルツールに『顧客を知る』支援をしてもらっています」
【テーマ4】価値観の裏にはデータがある。データ活用についてはどうか?
西野様:「通販は全てがデータで残るため、逆に様々なことが見えすぎてしまうと感じています。いきなり細かい数字を見ると『色々な見方ができるね』という結論になってしまうので、当社では4つの指標しか見ないと決めました。まずは森を見て、必要があれば木を見るようにしています」
福本様:「購買履歴は真実です。アンケートでは見てこないものが、そこにはある。今はデータを販促だけでなく、商品企画へ繋げようとしています」
最後に
飾らず、活きた情報をお話くださったパネラーのみなさま、本当にありがとうございました!各社違った業界や商流の中でそれぞれの課題や悩みがあり、「自分たちのマーケティングの在り方を見出そう」と知恵を絞っていらっしゃるお姿を拝見することができました。
iNSIGHTBOXカンファレンスは、「価値観マーケティング分科会」として今後も定期開催していく予定。ご参加、お待ちしています!
レポート記:Synergy!ACADEMY運営事務局/小林